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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
他国交流篇
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第42話:大事なもの

ーナーク視点ー



 リグート国の中心であり象徴とも言える王城、通称エメイル城。その城の王族専用区域で主のウィルスとレント王子がいつものように、2人仲良く昼食を食べていた。

 女官達が控えているいつもの日常。いつものように、真っ赤になりながらも王子から差し出される料理をパクリと食べる。


 モグモグと咀嚼して、美味しいからかずっと笑顔の主。癒やされる笑顔を傍で見れなくてポツリと言っていた。




「うぅー、ボクもしたい」




 つい本音が出る。でも、夕食は一緒と聞いたからそれまでは我慢だ我慢。ボクが来ると予想外だと言わんばかりの表情をする主に、イタズラ心が働くのは仕方ない。

 チラリと王子を見れば無言で頷かれた。許可を貰ったからと昨日、交代しながら食べさせてたら「2人が意地悪な気がする……」とじっと見てくる。




「王子から許可貰った。はい、主が好きなスープ」

「む、レントなんで許可を……ふむむっ」




 最近知ったけど、スープの味で好きな物が出されると笑顔になる。不機嫌でも、そのスープを口に運べた満足していて、不機嫌なんか忘れる。だから、最近では機嫌が悪くなる前にスープを飲ませて忘れさせる方法をとっている。主は全然気付かないから、嬉しそうに食べてる。

 ……うん、チョロい。でも、可愛いから絶対に教えないけどね。王子はとっくに気付いているけど、勿論それを言うような事はしない。




「……まただ」




 ビリッと感じた魔力の塊。即座に飛んでその物体を切り刻む。そこから直径3センチ程の水晶がポロリと出てくるもすぐに四散する。証拠が掴めなくて舌打ちすれば「おっ、もう終わったのか?」とリベリーが姿を現す。




「んで、またか?」

「そう。壊したと同時に証拠が無くなる。……これだと何処の誰が何の目的で、リグート国を監視しているのか分からない」




 ボク達が居た東の国。その大国のハーベルト国がイーゼスト国を墜とした。大国同士の争いに終止符を打ったのは、やはりと言うべきかハーベルト国だ。

 その知らせは瞬く間に世界中に広がり、当然このリグート国にも届いている。隣国のディルランド国は、南の国のディーデット国へと使者を送り友好関係を築けるかと言う話をしていると言う。




「でも、ナーク。この遠見の魔法は東から感じたものじゃないんだろ。少なくともハーベルト国じゃないなら安心だろ」

「そうだけど……。最初は主に向けられていた。危険と判断して問題ある?」

「おいおい。たまたまだって言う可能性は」

「無理。たまたまだとしても、主に向けなくて良いでしょ。自分の目で確かめるまでは警戒は怠らない」

「………そうかよ」




 呆れた様子のリベリーには構わない。すぐに四散した付近へと降り立つ。毎回、潰した付近は決まって第1王都。貴族達が通うような高級店のある第2王じゃなくて、第1なのは何か意味があるのかと思いながらなんとなしに歩く。




「にしても、俺等は本当に幸運だよな」

「そうだね」

「通常、契約してこんだけの付与はないもんな。出来て身体強化と魔法の一種を扱える位だ。……まさか、魔力感知まで出来るなんて王族は凄いよなホント」




 ボクの隣に歩くリベリーからそんな事を言って来る。確かに、そうなのかも。トルド族の契約は主に魔力に依存されるから、戦闘能力もそれに比例する。

 しかし、魔力が弱くとも自身の力だけで事を起こせるトルド族もいるし、その逆もある。ようは自分の努力次第でどうにかなるが、それでも行動の幅が広がるのはやっぱり魔力量が多い人に契約した時だ。


 魔力感知。

 ボクとリベリーは王族との契約を行った事で、主達の扱う魔法の力と同時に付与された力。主を探すのにも役立つし、自分で一度覚えた魔力を覚えておけば敵か味方かの判別が出来るもの。




「師団の人達の中でも出来る人はいるよ。まぁ、本当に一握りだからね……契約して得られるなんて、本当に姫猫ちゃん達は面白い」




 ラーファルさんから聞いた話だとかなり珍しい力らしい。

 でも、今はこの魔力感知のお陰で遠見の魔法が発動されたと同時に破壊出来るんだからボクにとっては役に立っている。……ウィルスには感謝しかない。




「んで? 最初は南から感じて次はこの第1王都に感知できるんだろ。……ちょっと待ってろ、探ってみるわ」

「はーい」



 

 最近、ここで不思議な事が起きていないかリベリーが聞いて回る。出店が多いから一時的に店を出して本店に戻ってを繰り返したりする店も多い。最近できた店も多いけど、変わったのはそれ位だと言われ収穫なしだと言ってきた。


 でも、この王都で魔法を使用しているのは明らかだ。ボクやリベリーの感知でこの範囲に居るのは間違いない。向こうも、姿を消しながらだからはっきりとは分からない。ぼんやりと場所を濁されているから、少しだけイライラしてくる。


 最初に遠見の魔法を感知出来たのは決まった場所と時間にカラスが居たからだ。その視線が気になって近付けば、そのカラスから魔力を感知した。即座に斬ればさっきみたいに水晶が出てきて四散する。

 でも、最後に向けていた視線は確かに主の方を見ていた。


 ——敵か。


 すぅ、と自分の機嫌が下降していくのが分かる。そこから、主の護衛をしながら感知した魔力を即座に消す掃除を始めた。リベリーが不思議そうに聞いてくるから事情を言えば「バカッ、すぐに知らせろ」と思い切り叩かれた。

 酷い、主の為にしか動いていないのに何で殴られないといけないんだ。




「そう。相談する位なら自分で消した方が早い、と。でも、ナーク……こういう事はもう少しは早めに言って欲しいな」




 君ばかりに負担になると、ウィルスが心配するよ。と諭す言い方をしてくるバーナン王子。リベリーに無理矢理に連れて行かれて、執務室に放り出されてさっきの状況を話した。

 むぅ、そんなこと言われても………。




「こら、ふくれっ面しない」

「ふんっ」




 別にむくれてないさ。自分に出来る事をやって何が悪いんだ。出来なかったら相談する位の頭はあるのに、だ。




「お前なぁ」




 なんか、ため息つかれながらリベリーが見て来る。何だよ、と睨めばバーナン王子は「あのね」とボクに話しかけて来る。




「即座に行動を起こすのは主の為だと言うのならそれはそれで構わない。でも、1人じゃないんだから……大人を頼る事を覚えてくれないと」

「………里の皆が死んでからはずっと1人だったんだ。今更」

「なら、何でウィルスを主にと契約を結んだの?」

「………」

「自分の持っていない物を彼女が持っていた。もしくは惹かれる要素が彼女にはあるんだろうね。あの子、魅力的だもの」

「弟君に殺されるぞー」

「平気だよ。近付いたらすぐにレントが睨んでくるんだもの」




 お陰でなかなか2人きりにさせて貰えないー、と軽い調子で言い「兄でもダメなのか……流石」と褒めていないリベリー。少し考える。魔獣にされてそれを主に戻して貰えた。

 感謝している。こうして普通に接して貰えて、ボクを恐れない人達が居る。一癖も二癖もある人達だけど、妙に居心地がいいのは……ボクは彼等に気を許している証拠なのだろうか、とふと思った。




「……ごめん、なさい。信用して貰えないと思って、1人で片付けようと思った」




 つい、自分の気持ちを暴露する。すると、さっきまで言い合いをしていた2人は会話を止めボクの言葉に反応したのはリベリーだ。




「ったく、素直じゃねぇな!!!」

「子供は素直な方が可愛いものだよ」




 リベリーの言葉は受け取らない。受け取るのはバーナン王子だけだ。コクリ、と頷いてボクが感じた事をそのまま彼に伝えた。遠見の魔法は遠くを見渡すのに優れた魔法だ。

 ただ、遠くを見るのには魔力が多くないと不便な力。離れた距離から見る場合、そのまま離れた距離に応じで魔力が削られる。少なくても使えるけど、自然と見える距離は短い。上級者向けの魔法だと、ラーファルさんが言っていたのを思い出す。




「……そう、遠見の魔法ね。しかも鳥に付与させているとなるとかなりの使い手だ。それが、南と第1王都から感じられるって事?」

「うん。南は1回だけで、王都の方はここ最近かな。……とりあえず感知した傍から破壊してる。前と比べれば大分数は減ったと思うよ」

「なら、向こうにも感知できる人間が居ると言う警戒を持ったわけか。……必要上にやれば、いずれ自分達の居場所も感づかれるから数を少なくした訳か」




 凄い。ちょっと話しただけで、ボクよりも先を見ている。隣を見るとリベリーが自慢げな目で「オレの主、凄いだろ?」って見て来るからふいっと逸らす。




「ウィルスを見ていた、と言うのが少し引っかかるな。中を覗くだけなら彼女でなくて、私やレントみたいに王族を狙えば良い。あとは……」

「魔獣を扱う連中が姫さんを狙っている、か」




 思わず殺気が漏れ出たのは仕方ない。魔獣と言うワードは、ボクにとってはイラつかせる。主を狙い、ボクを実験道具にしたあの仮面の奴。バーナン王子がリベリーを睨んで「もう少し言葉を考えて」と頭を叩かれる。

 いい気味だ、もっと叩いて欲しいな。




「なら、リベリーと協力していつものように破壊活動をお願いするよ。レントや父には私から話しておくから、そのまま続けて」

「おう」

「了解です」




 こうして遠見魔法を扱う者の捜索と破壊活動が行われた。続けていく内に、付与された魔力に身に覚えがあると思い足を止める。覚えのある魔力だと思い、しっかりと頭に残して置く。


 そこから数日が経った時。

 ラーファルさんが南の国の要請を受けて、向かっている時に護衛役にと部下であるスティングを置いて来た。……甘い物で主を釣ろうとした奴に心を許しはしない。




「お近づきの印に、クッキーいる?」

「!!!」




 すぐに貰うと言って主と食べる。まぁ、ちょっとは許す。ちょっとだけだ。……なんか、勝手に地面に伏してるけど放っておく。

 その後、厨房と図書室に案内される中で覚えのある魔力を感知した。微力だけど遠見の魔法を使った魔力と似た感じ。知っていると思われる緋色の髪の女性に武器を突きつけ、話しが出来る場所へと案内してもらう。




「魔女と呼ばないで。ミリアよ」




 話してみるとはっきりとした口調で明らかな不機嫌な態度で接してきた。ボクも忌み嫌われている自覚があるから、思わず謝れば女性は少しだけ驚いた様子で見て来る。

 でも、と。ボクは警戒を為に武器を構えたまま質問した。

 ——最近起きている遠見の魔法、それに貴方は関係しているのか、と。




「信じてくれないだろうけど、私は誰がやっているかは知っているが教えられない。私に魔法の類は扱えない」

「………嘘だ。微量だけど、貴方からはボクが感じた魔力が感じられる。殆どないようなものだけど、ボクは覚えているから通じない」

「………そう」



 

 予想外の答えだったのだろう。明らかに言葉に詰まった様子だったけど、諦めたようにボクに言って来た。




「………魔女の存在を何処で知った」

「ボクはトルド族の生き残り。その里の近くでおばあさんを介抱した事があるんだ。怪我をしていた様子だったからね」

「大ババ様が怪我を!?」




 名前は知らないと言おうとして、いきなり血相を変えて飛び掛かられた。驚いている間にも「どの程度の怪我なんだ!?」とか「他には居なかったのか!!!」と言われるもあの時は1人だった事を話せば、今度はガクリとその場に崩れ落ちた。




「いつ頃、会ったんだ」

「……6年程前、かな。やっぱり知り合い?」

「あぁ。私達を育ててくれた人だ……育ての親の様な方だ」




 ならあの時のおばあさんが遠見の魔法を使っていたのか。でも、何でだろう。主と接点がある訳でもないのに……。




「分かった。大ババ様を助けていたのなら、仕方がない。……全部、話すよ」




 そう言ってミリアさんはボクに全てを話した。

 魔女であるけど、5年前にバルム国に魔獣を退治していた事。主と騎士らしい青年以外は、周りは魔獣に変えられた後だったと。このままでは抑えつけられないからと、自分がバルム国を火の海に変えたのだと……全てを語り出した。


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