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猫になった私は嫌いですか  作者: 垢音
心のカケラ篇
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第209話:思わぬ再会


ーウィルス視点ー



「それじゃあ、もう1度確認するね」



 まだ城に突入する前の事。

 ナーク君が皆を呼んで、レント達とで決めた事の確認を進めていく。


 東の国、ハーベルト国の王城に侵入して聖獣さんと私の魔法で、魔獣を生み出している種を破壊する。

 その為に、城内を知っているシグール様を先頭に私とレント、ナーク君、リベリーさん、魔女のティルさんとで侵入する。そして、カーラスとラーグレス、ラークさんは冒険者のイーベルさん達とで囮をするのだという。


 全員での行動は出来ないのと、まだ暗部の人間が居るだろうから引き受けると聞かない。

 不満げに口を尖らせる私を、カーラスは気にしない様子だし。ラーグレスに関してはずっと「すみません」と謝りつつも引かない態度。




「リベリーが言うには、城が静かすぎるようなので敵という敵はあまり居ないと思います。居ても暗部を担当する者と、暗殺者ギルドに所属する人達でしょうし」




 囮をする理由を聞かされて、私はますます我慢するしかない。

 イーベルさんは囮は必要だというし、人気がないのも理由があるんだろうと言うのだ。




「俺等が早めに避難させといて正解だったな。そうでなければ、今頃は魔獣に変えられてたか暗殺者達に始末されてただろう」




 魔獣に……。

 でも、今の今までその魔獣にすら遭遇していない。どうしてだろうと思っていると、イーベルさんは平然と言った。


 ギルダーツ達の方を始末しに行ったんだろう、と。




「そもそもアイツ等もそれを分かって、仕掛けるんだしな。……分かるか? お前さんが失敗したその瞬間、俺達の負けは確定だ」

「……」




 真剣に私を見て、イーベルさんは決定的な事を言い放つ。

 それは分かってる……。

 覚悟を決めて来た。魔獣を完全に倒す為に、ギルダーツお兄様にも協力して貰ってるし、エリンスにも迷惑を掛けてるって分かってる。


 今まで感じなかったのに、急に震えて来た。

 それは失敗したら負けだと言われたからなのか。全てが台無しになれば、私達だけじゃない。協力して貰っている人達にも迷惑が掛かる。


 このまま行けば、魔獣が溢れ出して死人が増えていく。

 少しでも止めたい。私の魔法がそれを可能にするのなら――。


 

 その時、私の手を握る人が居た。誰かなんて分かる。黙って見れば、レントが大丈夫だと言うように力強く頷いた。

 もう片方にはナーク君がギュっと握ってくれている。




「大丈夫、主にはボクが居るよ」

「……」

「ナーク。抜け駆けしないでよ、私が言いたかった事なのに」




 よっぽど悔しいのだろう。レントが軽く睨んでいるけど、ナーク君は気にしていない。

 そんな2人の様子に、いつの間にか体の震えは止まっていた。




(うん。そうだ……。レントとナーク君のお陰で私は、ここに居る。怖い事でも立ち向かえるんだ)




 今でも戦いが嫌なのは変わらない。

 だから私は、スッキリした気持ちでイーベルさんに目を合わせる。私自身の覚悟を聞いて貰う為に。




「全部、分かっています。ここまで協力して貰ってて、失敗しましたなんて言えません。危険を冒すのなら成功させますよ」

「へっ。言ったな、この野郎」




 ニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべたイーベルさんは、私の頭を乱暴に撫でまわす。

 あんまりにもグルグルとやられるものだから、気付いたらレントの膝の上でお休みになる。その間、ナーク君が猛抗議をしていたらしい。


 なんせその間、私は気絶してたんだ。

 起きた後で、イーベルさんと行動しているパーティーの人達に土下座をされてしまったけど。


 どうも、ナーク君だけでなくカーラスにも怒りに火が点いて大変だった。そう話したラーグレスは、ちょっと遠い目をしていた。




「……大丈夫、だよね。イーベルさん達」

「平気だぜ、姫さん。頼りになる護衛の2人に、薬学に精通しているラーク。実力者揃いのSランク冒険者パーティー。普段なら見られないメンバーばかりだ」




 つい不安げに言った私に、リベリーさんが自信満々に言う。

 Sランクの冒険者は滅多な事では集まらない。その依頼内容が、危険度が高いのもあるし魔物の巣窟での戦いは日常。


 それに、自分達の評判を落とそうと暗殺者を雇ってたり傭兵を使って、邪魔をしてこようとしている人達も居るから対人戦も慣れたもの。だから安心しろと言っているのだ。




「ウィルス。不安な気持ちは分かるけど、これは何度も決めた事だし何度も確認した。ここまで付いて来た覚悟を無駄にしないようにね」

「……うん」




 レントにそう言われ、カーラス達の無事を祈る。

 大丈夫。だって、私の魔力が付与された物を渡したし2人の実力は知っている。


 ラークさんもスティングさんと組んでいた時期があると言うし、元は騎士だと言う話だ。……うん。信じよう。信じなきゃダメだ。




「ごめん。もう大丈夫だよ」

「そう。良かった」



 

 それでもそっと私の手を握るレントに、つい安心してしまう。

 好きな人の手に握られると、不安になる気持ちも綺麗に消える。安心感があるからかな。




「――よし、ここから行ける。……いい? 行くよ」




 侵入するルートをナーク君とリベリーさんとで確認。

 再度、私達に確認を取ってから先に2人が先行。中の安全が確認されたら、リベリーさんが1人ずつ引っ張り上げてくれる。


 埃っぽいのかと思ってけど、そんな事はなかった。

 出て来た所は書斎……かな。暗がりだけど、本がたくさんある事からそう予想する。




「……ここは、6つある内の1つか。厨房からも近いし、その人達もここに来るんだ。変わってなければ、なんだけど」




 と、言う事はそれなりに使われている部屋って事かな。

 さっとナーク君が周囲を確認していく。薄暗い上に、夜中だから月明りを頼りに動くんだけど……ナーク君とリベリーさんは慣れた様子で安全確認をしていく。


 私達が息を殺していく中、リベリーさんが手で制した。

 



「ヤバい、こっちに来る。ナーク、取り押さえる準備をしろ」

「了解」



 

 入って来るであろう扉の両サイドに、リベリーさんとナーク君がさっと移動。

 ガチャリと音が聞こえた瞬間、素早く取り押さえに掛かるが――思わぬ反撃を喰う。




「なっ……」

「くっ!?」




 金属音同士がぶつかる音が聞こえ、レントとシグール様はそれぞれ武器を手に取る。

 



「うっ」

「ナーク君!?」

「え」




 相手に蹴られたからか、ナーク君が吹き飛ぶのが見えた。思わず名前を呼んじゃったけど、戸惑うような声が聞こえて私も驚いた。

 しかも、レントが「まさか」って驚いてるし……知ってる人なの?




「今の声、まさか……ウィルス様?」




 私が戸惑っている中、聖獣さんが部屋中に光を満たす。

 魔法の光で満たし、入って来た人を確認して私達は驚いた。


 金髪に灰色の瞳の女性。その姿は見間違う筈がない人……クレールさんが何でここに。

 



「嘘、レント様まで……」




 クレールさんは信じられない表情をしているけど、それは私達もだ。

 リグート国に居る筈の彼女が何でここに?




「今の声……。お姉様なんですか?」

「え、ルーチェ……ちゃん?」




 クレールさんだけでも驚くのに、彼女の後ろから出て来たルーチェちゃん。

 南の国、ディーデット国に居る筈の彼女も何でここに……?


 お互いに戸惑いながらも、すぐにシグール様が声を掛ける。


 ハッとしたクレールさんとルーチェちゃんはすぐに周囲を確認し、素早く部屋の中へと入りこの城に居る事になった経緯を聞く事になった。

 私達はそこで驚く事となる。

 クレールさんのように、金髪という理由で連れて来られた女性達が居る事もだけど、それを命じたのが第3王子のアーク君だったなんて――。



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