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第204話:説教


ールベルト視点ー



「簡単に言うと、彼の宝剣の眷族としてお前さんの武器が選ばれた。お前さんの武器、魔石が埋め込まれている上に中身が空っぽだ。器として丁度良いんだろうよ」




 大ババ様がにこやかに告げる中、状況を把握できないとばかりに頭を抱えているのはバーナン王子の従者のリベリー。

 今はレント王子達に同行しているのだがこちらの様子を見に来たのだという。


 ……内緒で来ている時点で、レント王子にバレた場合はどうなるのか。彼は分かっている筈だけど、冷や汗を流しながら「多分、大丈夫」と言ったがダメだろうなと予想がつく。


 会えるような事があれば聞いてみたいものだ。




「何処でその武器を? 普段、使っているものはどうしたんだよ」



 

 武器を返しながら、大ババ様が疑問を口にする。

 受け取った彼は「あー」と説明しずらそうに、視線を合わせないでいた。でも、そんな事で大ババ様が諦める筈もなく……さらっと説明をしてくれた。




「状況を探りに行った町の武器屋。……そこで、タダで貰ったんだ」




 彼の話では、試作品で作った武器にたまたま魔法石を入れたんだと言う。

 でも、魔石と違って加工している筈だから知らないと言うのはちょっと変かな。


 魔石が純粋な魔力の塊で作り出された石なら、魔法石は魔力の暴走をしないように加工したもの。この違いを知っている人は魔法に熟知している人や、大ババ様みたいに鑑定が出来る人間でないと見抜けない。

 



「君から見て、その店の亭主はその違いに気付ている感じだったの?」




 私がそう質問すれば、リベリーはその時の事を思い出すように目を瞑る。

 すぐに「あっ!!」と大声を上げた。




「そうそう、魔法石だって教えてくれた人が鑑定が出来る人とか言ってたな。もしかして、シグールの奴なのか!?」




 それはないだろ。

 バーナン王子からも、否定されてハッとした様子。教えてくれた人の特徴はシグール王子と似た感じ……もしかして、第3王子かな。




「そう言えば、姫さんとナークが会った王子も似た感じってことか?」

「鑑定が出来る者は多いが表立って言わないから。殆どの者は鑑定が魔法だとは思わないさ。日用品だけでなく、色んなものの良い悪いが分かるからね」




 魔力も殆ど減らないらしいから、魔法という認識は薄い。

 自分に宿った特殊能力だという認識の方が強いからこそ、鑑定が出来る人間は良くも悪くも利用される。


 魔法を悪用しようと考える人達は、一定数いるから困ったものだ。




「そうなると第3王子は魔法を複数持っている可能性があるね……」

「それは精霊士だから、でしょうか」




 兄のギルがそう言えば、大ババ様は可能性はあるのだという。

 

 そもそも、私達の国は魔法について他国よりも理解が深いだけで全ての魔法が分かっている訳じゃない。

 ウィルスの扱う白銀の魔法。

 アーク王子が持つ精霊士としても魔法。


 この世界、全ての魔法が私達にとって未知数だ。

 魔法で魔獣を倒せる可能性はウィルスの魔法以外にもあるかも知れない。私達がその現場に遭遇していないだけで、研究が進めば出来る可能性だってある。




「昔から精霊は様々な加護を与えてくれる存在だという認識だよ。現に私達が扱う魔法の源である魔力は、その精霊達の加護で成り立っている。……最後の精霊士が、第3王子なら彼をこちら側に来てくれると嬉しんだがね。魔獣との戦いも楽になるのは間違いないし」

「って事だから、リベリー。しっかり頼むよ」

「え……」




 全員で彼を見れば、ギョッとしたように固まる。

 まぁ……そうなるよね。

 彼の本能が何かしら察したのだろう。逃げに徹しようとして、すぐにバーナン王子の護衛が抑えつける。見事な連携だ。




「え、ちょっ!! いや、なんとなく分かるけど」

「なら素直に従おうか」

「どうせ分かっていたのなら別に言わなくてもいいと思うんだが……一応な」




 そう言いつつも、抑えている2人の力が強い。

 少しだけ可哀想だなとは思いつつ、助けはしないんだけども……。




「うげっ。お、弟君!!! ちょっ、何でここで念話なんて」




 そんな時、慌てた様子で念話に応答した。

 ま、彼はレント王子の事を「弟君」と呼んでいるのは分かっている。心の中でご愁傷様って思う。


 その後、顔を真っ青にしたまま戻ると言った彼はすぐに姿を消した。

 あの慌てぶりから、抜け出してきたのがバレたのだろう。




「彼からの連絡を待つの可哀想だから、こっちも動くぞ。バーナン王子、そちらの師団長と話をしたい。お互いの連携を考えて、部隊編成をしたいからな」

「え、レーナスと話すの? 今、縛っている状態だけど」

「……は?」




 ギルが訳が分からないといった表情で固まる。私の場合、ウィルスと水晶で話してたことがあるから知っているんだけど。


 レーナス師団長は、魔法に詳しい上に研究熱心。

 アーサー師団長と似ている部分はあるから、予想はついていた。現にウィルスは、彼の質問攻めに対して恐怖心を芽生えている。


 何度かナーク君から本気で締め出されているし、レント王子からも注意をされていると聞いている。




(今頃は怒られてるんだろうなぁ)




 焦って戻るリベリーを心配しつつ、私は従兄弟のリラル王子と話をしようか。

 彼の宝剣はどうも眷族にしたものを、感知できるだろうと言う大ババ様の読みだ。


 そこに期待を含んで良さそうだし、ウィルスに渡した物はきっと役に立つだろうと信じている。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーリベリー視点ー



 オレは卑怯な手だと分かりつつ、自分を守る為には仕方なしと判断を下した。




「リベリー? ウィルスを盾に使うだなんて、間抜けな事をしたね」




 絶対零度の睨みをしてくるのは、さっき念話で戻って来いと言った弟君。

 バーナンの弟の第2王子。

 地雷を踏んでいる自覚はあるし、姫さんを巻き込んでごめんなって思う。オレと弟君の顔を何度も見ては、自分が怒られるんだと勘違いして顔を真っ青になる。


 悪い……マジでごめん、姫さん。




「それで私の怒りが収まるだなんて思ったの? 余計に怒るに決まってるでしょ」

「あの、レント王子」

「カーラスがこれを見て何も言わないのは、察したからでしょ。ラーグレス、君も察して」

「すみません……」




 止めようとしているラーグレスさんがあっさりと退いた。

 カーラスさんはどうしたんだろうと、チラッと見ると思い切り視線が合う。ただ、笑顔だけど「あとで覚えておけ」と言わんばかりの睨み。


 ……ヤバい、俺は弟君の説教を喰らうだけでなくカーラスさんの地雷も見事に踏み抜いている訳だ。


 魔女のティルはこの状況を楽しんでいるのか助ける気なし、なんなら笑いを堪えている。

 姫さんがもう涙目で、ガタガタ震えてるのがそんなに面白いのか!? 

 いや、盾にしているオレが言える立場じゃないけども。




「リベリー、ずるい!!! ボクもくっつくし」

「来るな!!!」




 そこにタイミング悪く、ナークがこの現場を見てしまった。

 まず何を勘違いして、盾にしている姫さんを抱き着いているだなんて言えるのか不思議だ。その間にも、どんどん弟君の表情は険しい。


 止めろ、何で雰囲気で察しない!!! 

 姫さんが涙目になっているのに気付けよ、アホ。




「作戦の前に、ゆっくり話そうか。……4人で」

「え」

「「ひえっ」」




 最後の最後まで、意味が分からないって顔をするナークをあとで怒っておいた。

 いや、オレが内緒で出て言ったのと戻ってから姫さんを盾にしたのが始まりだ。そんなオレが言えた義理ではないのは分かっているが、いつもなら察するのに何故気付かない。


 弟君の説教が終わったと思ったら、今度はカーラスさんが「じっくり話しましょうか」とか言って別の所に連れて行かれた。

 ……ラーグレスさんが止めなかったらと思うと、今でも怖い。



 姫さんを盾にするなんて真似は、2度とやらねぇと心に誓ったのだった。



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