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第203話:宝剣の眷族


ーギルダーツ視点ー



「何でそうなった……」

「えっと、姫さんが……そのきっかけと言うか、何というか」




 舌打ちしつつ、自分がかなり苛立っているのが分かる。

 今までの報告をして来るリベリー。そこでふと思った。レント王子は、この事を知っているのかと。




「どうせ説教は受けるから、変わらないと……思う」




 そう言う割に、どんどん顔色が悪くなっているんだが。

 ルベルトがその様子を見て「相変わらず弟に弱いんだね」ととどめの一言。




「いや、だって怖いし!!! 姫さんには激甘なのに、オレとバーナンには変わらずに警戒心を剥き出しな」

「まだ怒ってるの? 嫉妬深いな、レントは」

「それはそうでしょ。まだレントしか知らなかった体質の事で、君に目をつけられてリベリーを使って攫ったんだ。言ってたよ、彼。絶対に許さないって」




 今、とてつもない事を言ったな。

 攫った……だと?




「ギル。抑えて、抑えて」

「……すまない」




 ルベルトに言われなければ、睨みがきつかったのだろう。現にリベリーとバーナンは、目を逸らしている上に何も聞かないでと言わんばかりの雰囲気を出す。それをため息交じりで「その件については私達が」と、護衛をしているジークが言う。




「レントの代わりに説教しとくから。バラカンス、逃がさないでよ」

「分かってる」




 ギョッとしたバーナン王子とリベリーは、あからさまに嫌な表情をした。

 まぁ、どうせ内緒で来たのだから戻ってきた時にレント王子に説教を受けるのだ。罰を受けるという事なら、これで良しとしよう。




「……ギルも、過保護だよね」




 ルベルト、「も」と言ったんだからお前も入っているんだよな。

 そう思って睨むと、ニコリと笑顔が返ってくる。それで気を緩ませつつ、改めて彼から報告された内容を頭の中で整理していく。




「第2王子に……第3王子の存在か。頭が痛い事ばかりだな」




 あの国の王族は謎が多い。

 情報操作をしてくるから、内情を知る機会もない。向こうも交流してくる気配がない為に、他と比べて情報が少なすぎる。


 そう思って、こちらで動こうとすれば出迎えは暗殺者だ。

 自国の情報を盗まれないようにしているのか、向こうは徹底して交流を阻んできた。その割に、戦闘を仕掛けて来るんだから対応しないとマズい。




「噂で聞いた事はあった。……第2王子と第3王子の存在も」

「そうなのですか、大ババ様」

「確証は得られないし、嘘かも知れない。そんな曖昧なものは、王族の耳には入らないだろう」




 ルベルトの疑問に彼女はそう答えた。

 それよりも、俺としてはウィルス達と共に行動していると言う事実の方が信じられない。仮にも敵国の王子と行動?

 何故、それをレント王子が許しているのかも分からない。カーラスからそんな報告は受けていないんだが。

 ……うなだれる俺に対して、リベリーが「悪いな」と謝ってくる。




「俺もナークも、警戒はしているんだ。なんせ、最初は魔獣の姿で姫さん攫われたし」

「「何だと!!!」」




 バーナン王子と共に叫べば、彼はギクリと肩を震わした。

 チラリと視線を向けて助けてと言う様に、護衛であるジークとバラカンスを見る。だが、2人は無言で顔を逸らした。




「おい……」

「貴方しか知らないんだから、ちゃんと責任をもって報告をして」

「自分で地雷を踏んだんだ。当たり前だ」

「う……」




 その後、頭をかき詳細を話していった。

 ハーベスト国の内情は知らなかったが、魔獣を人為的に作る実験を繰り返してきたのは本当だった。その確証を得られたのが、疑っていた王族なのだが……。

 しかも、ゼストは既に魔獣に乗っ取られている、だと。

 信じたくない内容だが、ウィルスとナークを攫ったのが自分の状態を治す為に攫ったのか。それでレント王子が死にかけたんだから、謝るだけでは済まないだろうに。




「多分、姫さんに頼まれたんだよ。弟君、姫さんの言う事なら一発で頷くし」




 俺の表情を読んだリベリーが追い打ちをかけて来る。

 ルベルトも頷いている辺り、諦めるしかない。彼は夜中の内に戻るんだと聞き、それまではこっちの様子を見に来たんだと言った。


 思わずバーナン王子からの要請かとも思ったのだが、違ったようだ。そう思って見ていると、リベリーは俺の事をじっと見た後で「東にいい印象を持たないからな。一応、事情だけはと思って」とこちらに飛んできてくれたのだ。




「ここで悩んでいても仕方ないよ。結局、ウィルス達が行動をすると決めたんだ。責めるに責められないよ」




 主であるバーナン王子にそう言われれば、俺がとやかく言える事でもない。

 頭を切り替えて、リベリーにも作戦を伝える。




「魔獣の数は不明。だが、死体からも作り出せる事を聞いた以上……数は揃えているとみる。そして、リベリーが言うには兵士達も準備の取り掛かっている、だったな」

「オレが立ち寄った町も含めて、それなりに用意はされているな。ただ、いつまでも本国から号令がかからないからだらけているぜ?」

「……少しでも意識を奪って、魔獣を作りだしやすいように整えているのかもね。それでも魔獣の特性は変わらないだよね?」




 ルベルトの確認に俺は頷いた。

 憑依でも、死体から作り出したとしても……魔獣の特性は変わっていない。

 魔力が高い者から優先的に狙う。これは、俺達王族と魔女を探し当てる為であり排除するように本能で動いているからだ。

 

 宝剣で倒すか、ウィルスの魔法で魔獣達は沈静化する。

 だが、魔法で倒せる魔獣もいる。今まで不思議に思っていたが、リベリーから聞いた情報である死体からでも作られる事を聞いてピンと来た。




「恐らく死体から作り出した魔獣は、かなり劣化している。魔法で倒せると言うのがその特徴だ。だが、向こうもいくら作れるからって多くは出してこないだろ」

「厄介なのは、相性がいい奴と憑依している場合だろ。トルド族のガナルが良い例だ」




 俺の読みに周りも頷き、バーナン王子が言った事実にも頭に叩き込む。

 問題なのは、それを見極める方法か……。




「ガナルみたいな奴はそう簡単には現れないだろ。自分以外の他人を受け入れるって、意識だけでも辛いと思うぜ? 普通の魔獣よりも何倍も力が上がるだろうし、それは宝剣で対処しないと被害が広がるしな」

「そうなったら、私とリラルで止めよう。幸いにも、リラルの宝剣は私達のとは違って特殊な感じだし」

「そうだね。まさか魔石から直接、武器が作り出されるだなんて聞いた事ないし」




 ん?

 魔石から、直接……?




「あぁ、言ってなかったね。リラルの宝剣は、エメラルドの魔石から生まれたんだ。私やレントも、触れられるけどもう子供の頃の話だし」

「ずっと眠る様に反応がなかったのに、いきなり騒ぎ出したんだ」




 聞けば、彼の剣が突然光りだし天に届くような光の柱が立ったのだという。

 そして、その光の先は東の国に居るレント王子達の居る方向へと、橋が架かる様にして反応をしたのだという。


 宝剣同士が共鳴でもしているのか。

 だが、そんな反応をした。だなんて記録はどこにもなかったぞ。




「謎が多いのが宝剣の特徴だからね。その生まれは様々なのも頷ける。魔石から直接作り出された武器なら、他と違って特殊なんだろう」




 大ババ様がそう言い、彼に剣を出すようにお願いをした。

 触れるのだろうか? 大ババ様の魔法は、鑑定が得意だから。武器でも植物でも、見てきたものを直に触れる事で発動する。

 同じ草木でも、変異する種類のものがある。

 それは、薬を作る彼女からしたら嬉しいものだ。その情報を使って、新たな薬を作るのも得意だし魔物の外皮も調べられる。

 

 そのお陰で、南の国に生息している魔物の弱点がどんなものなのか分かる。

 今にして思えば、彼女が最初にウィルスを光の使い手として定めたのも、こういった魔法を扱うからこその予感なのかも知れない。




「触れるのは止めておくよ。その宝剣、恐らく使い手以外には攻撃してくるんだろうし」

「え……」




 身に覚えがないとばかりに、剣を見せた後でそう言われればそんな反応をしたくもなる。

 大ババ様の持っている杖が刃や柄に軽く触れる。だけど、それだけでも宝剣は反応しするのか微力な魔力が作り出される。


 今いる空間が見えない力に圧縮され息をするのが辛い。


 その中で平然としているのは、リグート国の王子達だけ。数回叩いてすぐに離れた大ババ様。それで敵対しないと分かったのか、その謎の力はすぐに止んだ。




「ふむ……まともに鑑定させない、か。精密に調べれば、どんな特性なのか分かるものだけど……。使い手以外には心を開かない。扱うのに苦労する分、道は示したんだろう。予想通りと言おうか、レント王子達が居る方に反応を示している」




 聞けばとても微弱で、宝剣にしか分からない繋がり。

 エメラルドという共通のものから生まれたからなのか、同じ使い手が全て風を扱うからか。すると、リベリーの腰に下げていたと思われる武器が浮かんでいた。


 緑色に光るそれは、リラルの宝剣へと近付いたかと思えば一瞬にして眩い光に包まれた。




「な、何がおきて……」

「ほぅ。これは驚いた。宝剣が、眷族を作り出したよ」

「へっ……眷族って」




 俺達が呆然としている中で、大ババ様はただ事実だけを告げた。

 まさか宝剣が、眷族を作るとは思わない。使い手は選ばれるのは、大体は1人だったと記憶していたのだから。


 武器の所有者であるリベリーが、俺に説明をして欲しいとばかりに視線で訴えかけて来る。だが、俺は正直に言った。こんな事は、初めてだ……とな。



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