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第194話:白昼の戦闘


ーウィルス視点ー



 私が聖獣さんとの話を終えた。そっと見てみるとレント達は驚いた様子で、聖獣さんの事を見ていた。

 早く言わなかった事よりも、最初から種を狙えば良かったんだと悔しがっている様子。良かった、怒られない感じ……?




「ま、悔しがっても始まらないね。気配を感じる事が出来るのって聖獣である君しか出来ないでしょ? 魔力を探るのとはまた違った感じなんだろうし」




 納得したように言うレントに、聖獣さんは頷く。

 その種自体にも気配を感じる。それって、向こうにも同じような事ができたり……?

 


【どうした】



 私の方を見て不思議そうに首を傾げる聖獣さん。

 言っても良いのかなと少し迷いながらも、聖獣さんに向けて念話で思ってみた事を告げる。

 すると、リベリーさんが鋭く「ちょっと待て」と声を潜めて言った。それだけでピリピリとした空気を感じ、体に緊張が走る。




「……3、4……。いや、5人に囲まれてる」

「暗殺者か?」

「微妙だな。気配がバラバラすぎるんだよ……。多分、何人かは暗殺者だろうが。あとは――」




 ドールさんの質問に、リベリーさんは感じ取った事をそのまま告げる。気付いたら、聖獣さんは私の傍を離れずにピタリと寄り添った。

 どうしたのだろうと思っていると、私達の足元に集まっていく魔力を感じ取り――炎が襲い掛かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ーレント視点ー



 リベリーの警告と共に、感じた魔力。魔法を放とうとしているのが分かり、すぐにウィルスの傍に行こうとした。が、その前に聖獣が彼女に寄り添う様子が見えた。




(彼に任せて良いね)




 すぐにそう判断した。

 ウィルスはラーファルとの特訓で守りの魔法を中心に身につけている。護衛役にと選ばれたスティングからも、魔力を探る方法を教わっていると聞いている。


 だから大丈夫。彼女ならちゃんと出来るし、聖獣が彼女の盾になるのは分かっている。自分を最後だという言い方に妙な引っかかりは覚えるけど……。そうあるのが、当然のような振る舞いとその言動。


 それが日に日にではあるが、和らいでるのも分かる。ウィルスが契約者としているのも含めて彼女の温かさに触れているのだろう。聖獣と契約者という壁を意識してか、彼はあまり踏み込んだ事はしなかった筈だしね。




(そういうのが、ウィルスにはあるんだよね。いつの間にか親しくしているのが当たり前のような……不思議な魅力)




 ナークも聖獣もウィルスを契約者として接している以上に、彼女自身を大事にしている。そういう共通した部分もあるからか、ナークとは早い段階から懐くのが早かったように思うし。

 自然と彼等に任せている辺り、自分でも不思議な感覚だけど。




《大丈夫だ。姫さんはあの聖獣が守り切ってる》




 自分だけでなく、近くにいたドールやシグールを守りながら炎を防いでいるとリベリーからそう念話で伝えられた。彼も、ドールの部下達を守りながら無事な姿に内心ほっとする。

 兄様の護衛をしているし、ナークにとっては兄のような存在の人だ。実力も折り紙付きなのは分かっている。が、その兄様が普通に彼を手放したんだ。自分自身だって狙われる要素はあるし、兄様自身だって危ない事をするのに。


 だからこそ、ちゃんと彼も含めて私達は無事で帰らないといけない。そう強く思いながら、向かって来る刃を風で防ぎ相手の姿を確認する。




(魔法を使う術者は……2人。前後に1人ずつ、か)




 放たれた炎は焚火のレベルじゃなく、火柱となってこちらを襲ってきた。明らかに狙いを定めたそれに、私は敵にバレたのかと焦った。ウィルスの容姿は魔法では変えられない。

 1度、聖獣がウィルスの中に入った時の容姿を思い出す。

 白銀の髪に同じ色の瞳。聖獣が言うには、本来の色であり今の彼女の色ではない。それにリベリーから聞いた話だと、ウィルスがその色に変わった所を見た事があるんだという。


 私は1度知っているから良いが、知らない方のリベリー達からしたらかなり驚いた事だろう。元々、私が魔法で髪の色を変えているのだって本来の色を隠す為のもの。

 既に本来の色を隠しているウィルスに、それ以上の色で隠すことは出来ない。だから、ウィルスの容姿で狙ったというよりはシグール王子を狙ったものかと警戒を強める。




「う……」

「かはっ……」




 魔力を探った先には術者がいる。

 次の攻撃をされると困るから、無風空間にさせて酸素を奪う。言葉を紡いだとしても、声として発していないのなら意味はない。

 そう無力化すれば、リベリーからは「うわ、こわっ」と少し青ざめた言い方をしてきた。敵の数を減らしたのにそう言う言い方はないんじゃないかな。


 そう思いながら、他の人達の対応を見てみる。

 リベリーは既に1人を相手にしているし、ドールの部下達も残り2人の暗殺者を相手に応戦している状態だ。


 状況を確認しないと……。

 ウィルスはドール、シザールと共にいる。聖獣とウィルスの魔法で防ぎ切っているし、魔法を使う術者は私が気絶させた。彼等と話していたのは、王都の外れだが火柱が上がった事で見張りの兵士達に気付かれるのも時間の問題か。

 



「リベリー!!」

「分かってる!!!」




 対峙していた相手の顎を狙っての蹴りを決めた彼は、砂を巻き込んでの大きな竜巻を作り出す。視界を悪くして隙を見て退却。最後まで言わなくても実行するリベリーは頼りになる。


 その隙にウィルスと聖獣の魔法で、一気に秘密基地へと戻る。

 王都から慌ただしく戻った私達の様子に、何が合ったのかとカーラス達に説明していく。

 距離が長いのもあってか、ウィルスはヘトヘトになり聖獣も労わる様にペロリと軽く舐めている。不機嫌だったナークはすぐにウィルスの傍に寄り「ボクがちゃんと世話する!!」と意気込んで奥へと連れて行ってしまった。


 あまりにも早すぎて唖然としてしまったけど。




「行くから平気よ。私がいると話しも進まないでしょうしね」




 ティルはそう言ってきた。魔女というのもあるし、特に彼女は見た目も奇異に見られがちだ。刻印の事も含めて知っているのは少ないのもあるだろう。

 私が無言で頷くと彼女はそれを了承と受け取り、軽くだけど微笑んでくれた。

 それもほんの一瞬だけで終わり、すぐに無表情になって奥へと行った。

 まだ状況を分かっていないドール達に話せば、魔法でそんな事が出来るのかと驚かれた。




「にしても、王都から少し外れた所とはいえ急だったね」




 シグールが参ったように言い、私もそれには同意した。

 私達が居ない間、ここは大丈夫だったのかと確認すれば特に変わった様子もないと聞き少し安心を覚える。


 なら、何であの場所で攻撃を仕掛けたのか。

 しかも狙いは私達というよりはドール達を狙ったように見えるけど……。




「もしかして、彼等と繋がっているのがバレてるんじゃないの?」




 私が不満げにそう言えば、シグールがそれはないって反論してきた。

 ドール達が居るだって人の出入りが激しくなったから、様子を見に来ただけだという。いるかも分からない相手だし、彼等が居たのは本当に偶然だ。




「んで、お前さん達は城に入りたいんだよな。……魔獣の種、だったか。あのお嬢さんでないと対抗出来ないって話は、本当のようだしな」




 さっきまでの戦闘と聖獣の事を聞いてか、ドールの態度が柔らかくなったっように思う。カーラス達にも情報の共有として、魔獣の種の事を話す。目的のものは城の中にあるようだし、探索するしかないようだと分かると皆は微妙な表情をした……。

 ま、敵地のど真ん中に入る上に危険しかない。

 ドール達は武器商人として、城の中に入りゼスト王を捜索して討つ気でいる。兄を止めたがっているシグールは、どんな気持ちで聞いているかは分からない。




「……正直、討った後はどうするんです。代わりにシグールを王にするんですか?」




 カーラスがさらっと聞いてきてビックリする。

 武器商人として各地を回った結果、前の国王も酷い状態だったが今の方がもっと酷いという。

 貧富の差は広がり、難民達が多くなっている。だと言うのに、忽然とその人達が何処かへ消えたという話を聞き偶然にも見てしまった。


 その難民達が魔獣に変化する所を。

 ドールに協力している人達は、ハーベルト国の兵士。任務で国を離れ、久々に故郷に戻った。そこにあったのは跡形もなくなり、自分の両親や幼馴染み、あるいは恋人もいたのにその痕跡が綺麗になくなっていた。




「最初は訳が分からなかったが、難民達が魔獣に変化させられる実験を見た時に悟ったんだ。……故郷もこうなったんだと」




 ドールの悔しそうな声。とても苦しそうに言っていた。

 彼も東の国の出身者。傭兵をした経験で武器商人をしているが、全ては魔獣の情報を掴む為。自分の故郷を奪った国を恨み、同じような境遇の者達と今日まで奮闘してきた。


 ゼスト王も、その前の国王も道具の様に人の命を散らす。

 そんな王の国は発展することもなく、広がるのは悲劇だけ。だから彼等は自分の命を懸けてでも王を討つ決意を固めた。


 今、働いている兵士達もいずれは居なくなる。その可能性が含まれる。

 魔獣に変化させられる術を持っている限り、この連鎖は止まらない。帰る場所がない自分達のせめてもの反撃。だから、私達に邪魔をされるのは困るのだと言った。




「……私よりも、下の弟の方が向いている」




 そんな中、シグールは告げた。

 自分は既に死んだと言われている身。ならその代わりに王として成るのは、弟のアークだと言った。

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