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第189話:変わらずの態度


ーウィルス視点ー



《ウィルス。心配かけてごめんね。動けるようになったんだけど……来れるかな》

「っ……!!!」




 突然の、念話でビックリした。

 思わず周りを見て、自分の様子がおかしくないかと思う程に。




「……ほっ」




 多分、大丈夫……だと思う。

 ラーグレスがすぐに「王子からですか?」とコソッと言うので、驚いて見つめる。え、そんなに分かりやすいの。

 そんな思いで見つめていると――。




「すみません。嬉しそうなので……もしかしたら、と」

「うっ」

「姫様が自信を持てなくてどうするんですか。レント王子の為に、必死で治療したのは貴方なんですから」




 自信を持って下さい、と手を握り慰めてくれる。

 泣きそうなのをぐっと堪えるも、優しい手つきで頭を撫でられたら……我慢できなくなる。

 ただでさえ、ナーク君とリベリーさんが大変なのに。

 私だけ舞い上がるのも違うと思うんだ。




「それに王子にならちゃんと話してくれる、と思いまして」

「……」




 さっと顔を逸らす。

 流石というか、幼い頃からずっと傍に居るからだよね。隠している事なんてバレバレですよね。

 だったら理由を聞いてくると思ったんだけども……。




「無理に話を聞いたらカーラスに怒られますしね。彼、姫様の事を尊重し過ぎているので、話してくれるまでは我慢していますよ」




 うぅ、カーラスにもバレてる……。

 ジークさんにも分かりやすいと言われているんだから、当たり前か。ラークさんも嬉しそうに「王子から連絡ですか。早く行かないと」と急かしてくる。


 こ、心の準備が……!!!

 



「ウィルス様。私はまた王都の様子を見に行ってきます。兵士の出入りが多いのもありますが、何か変わった事があれば連絡をいれますから」

「あ、はい。……何度もすみません」




 私とナーク君が3日も寝込んだ時。

 私は聖獣さんとナーク君の過去を体験した。本来なら人の過去を覗く事は許されないけど、聖獣さんが言うにはトルド族と契約をしているからだと言った。


 ナーク君とリベリーさんは、同じトルド族。

 彼等の身体能力は幼い頃から身に着けたものであり、魔法の適性はこの時点では未知数。

 それが確立されていくのが、私やバーナン様の様に「主」を得るという方法。ギルダーツお兄様から聞いた話だけど、幼くても彼等と言う一族は魔力を持っているのが特徴的。


 魔法の覚醒で、彼等トルド族だけが扱える力も同時に解放されていく。

 

 それが魔力を感知出来ると言う事。

 ラーファルさんも、長く魔法師団に所属しているがこれを身に着けるのに数年はかかると聞いた事がある。私なんて魔法が扱えるだなんて、知ったのがかなり遅いし自分の魔力なんてよく分からない。


 ただ、聖獣さんが現れる時は必ず白銀の粒子が見える。

 私の魔力もこんな感じに見えるのかな、と思うも実際はよく分かっていない。




【ウィルス。俺は彼に付いていく。護衛の代わりにはなるだろう】

「お願いしても平気?」

【構わない。大事な人なんだろ? 早く行って、安心させるといい】




 う、顔に集まる熱をどうにか消したいのに……追い詰める聖獣さんが酷い!!!




【なんだ。おかしなことを言ったか?】

「いや。全然おかしくないな」

「っ、もう行くね!!!」




 拗ねるように足早に離れていくと、聖獣さんとラーグレスはそんな事を言っている。聞こえない。全然、聞こえないもんね!!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 なんて、思ってたのも束の間でした。

 回復したレントは元気にしていて、良かったと思って抱き着いたら……そのまま離さない所か追い詰められました。


 ナーク君とリベリーさんの様子がおかしい所とか。

 何で私は知っているのが前提で聞いてくるのか、分からない……けど、知っているから強く否定できない訳で……。

 結局、聖獣さんと見たナーク君の過去を話すしかなかった。




「あの、ごめんなさい……」




 ティルさん、シグール様、レントは私の話を聞いてからずっと黙ったままだ。

 するとレントはぎゅっと、私の事を強く抱きしめてくれた。あやす様に頭を撫でられる。か、隠し事をしているから怒られると思った。




「でもこれで2人のギスギスした感じの理由が分かった。……ウィルス様、ナークとは話せているの?」




 ティルさんにそう聞かれて、今は全然と言う。ナーク君がリベリーさんと2人で話してからというもの、私との距離も微妙なのだ。

 だからレントがティルさんの治療を受けている間、私の傍には聖獣さんがいる事が多い。


 だから、ラーグレス達も彼が居る事に驚きはしないしナーク君の代わりだと言えば柔軟に対応してくれた。ラークさんがこの頃、王都に行って様子を見ては情報を引き抜いたりと。

 カーラスとラーグレスは周辺の探索と魔物の駆除。


 魔物の残骸で、ディーデット国の様に皮や骨が素材として使われる武器屋に何度か行ってお金と武器を調達。同じお店に居たら顔を覚えられて、ハーベルト国に聞かれる可能性があるから各地を転々としているけど。


 私はリベリーさんと皆のご飯を作るんだけど……。

 沈黙が重くて、話しかけられない。無言でテキパキ動くから、気付かない間に料理が次々と出来上がり役に立っていない感がヒシヒシと伝わっくる。


 だから、寝る時には聖獣さんに暴露している事が多い。その間、彼は私の事を【これから頑張れば良い】、【明日には元に戻るさ】と何度も励ましてくれた。


 そのお陰で今日まで頑張ってきた。

 ホント、聖獣さんが優しすぎてて嬉しい。




「もう、どうしたら良いか……分からなくて。でも、ナーク君の過去を勝手に言うのも違う気がして」

「辛かったんだね。悪いね……」




 倒れなければ、とぶつぶつというレントがちょっと怖い。

 それよりも本当に大丈夫なのかと聞いた。倒れている間、サソリが魔法によって生成された特別製だって言うのは知っている。


 そのサソリ、私も見た事があるからだ。

 魔獣の姿だったシグール様が、私とナーク君を連れ去ったあの時。その追手らしき気配と同時に、サソリが居たのを思い出した。

 私は中が薄暗くてよく分からなかったけど、ナーク君が鋭く「いる」と言い2人で息を秘めた。


 その後、別方向に行った事で諦めてくれたとほっとした。

 そしたら、突然温泉に連れて行かれて……魔獣がシグール様だった事もだけど、ハーベルト国の第2王子。


 リベリーさんが病死扱いされていたと言うが、本人はそれで当たっているという。




『国を出て約10年だからね。病死扱いされてるだろうな、とは思ったよ』




 王位を剥奪されたのか、理由はまだ分からない。

 シグール様は弟の事が心配。無事でいるかも分からないから、連れ出されればと悔しがっている。


 ふと、シグール様の髪と瞳を見る。

 ゼスト様と被る色。蒼い髪は、黒に近いし瞳も同じような不思議な色合い。私は最近、この色が見た事がある……のかな。




「ウィルス」

「っ、はいっ!!!」




 思考を停止する。

 でないとレントが怒る。シグール様をじっと見ていたのがいけないのか、レントがちょっと怒ってる。違うと言う意味で抱き着くと満足したのか「そうそう」とか言い出し始めた。


 ……お、思惑通り? レントに踊らせている?




「あ、気にしないで。彼が嫉妬深くて、君を独占したい気持ちが抑えられない奴だっていうのは分かっているから。ここ数日でよく分かったし、ちゃんとコントロールしてね」




 そこは気にして、欲しいです……。

 ちゃっかりシグール様は挑発しているし、ティルさんは「バカ」と言っているし。

 レントは離す気がないのが伝わるから、もう何も言わない。




「それじゃあ、ラークさんが戻ったらこの情報を共有しよう。彼等も心配してたから多少の荷は下りるでしょう。じゃ」




 そう言ってティルさんとで出て行こうとするシグール様。あ、私も食事の準備をと思ったら……横抱きではなく、自分の背にレントの体温を感じる。




「レント?」

「ん。充電したい」

「あとで一緒に寝るから、今は――」




 ダメと言いたいのに、チュッとキスで遮って来た。

 流されまいとしていると「頑張ってね」と笑顔のシグール様。「あとで薬持ってくる」と言うティルさん……。


 え、放置? 

 そうじゃなくて、見られた。……恥ずかしい所見られたよ!!!




「ふふっ、もう顔が赤い。ウィルスが変わらず可愛いのがいけないんだよ」

「だ、だって……!!!」




 本当に放置されちゃったよ!? 

 

 綺麗に無視していく2人を恨めしく思いながら、聖獣さんが来るまで頑張ったよ。背中とか首筋とか、色々と恥ずかしい所にキスをされた。

 

 ヘロヘロな所に聖獣さんから待ったがかかる。

 うぅ、このフワフワな感じが嬉しいよ。ぎゅっと抱きしめてたら、レントが後ろから睨んでいる気配を感じるけど無視だよ。


 ルベルトお兄様の外でも中でも変わらないね、と言っていたのを思い出す。何処に行こうがレントはレントだ。そう思い知らされたけど、元気になってくれたのは嬉しく思う。

 単純な頭だと理解しているけど、とにかく久々の触れ合いがちょっと嬉しくもあったのだった。

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