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第139話:お預け……?


ーレント視点ー

 

 呪いから解かれてから初めての2人きりの夜。

 今までカルラが居て心強かったのか急にウィルスは距離をとった。今も、ソファーの端でちょこんと座りつつ、チラッと見てはすぐに顔を逸らす。


 最初はカルラも居たから壁代わりに、私の方に向けて来るからなんのご褒美なのかとクスリと笑う。でも、珍しい事にそのカルラはペシッとウィルスの事を器用に叩く。




「うぅ、ちょっ……カルラ」

「ミュミュ……」

「へっ、わ、わああっ……」




 ぴょん、とウィルスから逃れるとそのまま部屋を出て行ってしまった。窓は少しだけ開けていたからそこから簡単に行ってしまったんだ。

 とりあえず、風通しを良くするのに開けていたからと思い窓を閉める。下を見ればビーが迎えに来ていたのか既に待機していた。


 ……あっちも良い感じなんだ。


 お互いに邪魔はしないと言われているようで、これはカルラなりに気を使ったのかも知れない。思わずふふっと笑う。




(さて、と……)




 ガチャリ、と窓を閉める。

 主人を思う飼い猫はどうやら私にエールを送ってくれているようだ。


 ソファーに居たウィルスは、急に慌てたように出口へと向かう。無論、それを許す理由がないからと風の魔法で彼女の体を浮かす。




「きゃあっ……」




 不安定になった足場だからウィルスは声をあげる。

 そのまま引き寄せてギュっと腕の中に閉じ込めた。暴れる彼女を無理矢理に自分へと向けさせると、途端にピタリと止めた。




「ウィルス」




 愛しい人の名前を呼べば、彼女は分かりやすく顔を赤くした。そのまま俯くのを許さないとばかりに、顔を上げさせると「な、に……」と答えてくれた。


 それが嬉しいと思うのは重傷だろうか?




「ねぇ。何で私に視線を合わせてくれなかったの?」

「……」

「カルラの事を盾みたいに使ったら、怒るでしょ。現にそれで出て行ったんだし」




 本当は違うのだろうが、と心の中で付け加える。

 ウィルスの事を横抱きにして、ソファーに座れば降ろして欲しいと言われた。

 理由を聞けば重いからだと言うが、全然軽い方だと思うんだけど……と思ったがこれはクレールには言わないで欲しいと言われている。デリケートな問題だからであり、あんまり詮索しないでという意図も含んでいる。




「私はもっとウィルスの事を見たいからね。こうして近くに来られるの……嫌かな?」

「っ……」




 ワザと悲し気に目を伏せれば、ウィルスは困った様子でいる。耳まで真っ赤にしながらも「わ、私も……同じ」と言う告白を受けて、ニヤリとした。


 髪に口づけをすれば、驚いたように体が固まる。

 その隙に頬や額、首筋へと次々に印を残していく。その度に可愛い反応をしてくれるから、歯止めが効かなくなる。




「っ。レ、レント……あの、あのね」

「ん?」




 反応が可愛いからつい夢中になってしまった。

 ずっと名前を呼んでいたのに無視されるようにキスをするからと、むくれたウィルスがまた可愛い。

 思わずぎゅっと抱きしめていると、「ちょっ、ちょっと!!!」と背中を叩いで抗議してきた。




「ごめん、ごめん。可愛い反応したからね……。ごめんね、夢中になってて」

「かっ……かわ、かわわわわっ。む、夢中ってなにっ!?」




 プシュウ、とお風呂の湯気みたいに顔を真っ赤にしてくるから本当にどうしたのだろうかと思う。カルラが一緒だから今まで平気だったのかと思いながらも、寝室のベットの上で2人で転がる。




「レ、レントの、バカッ……」

「うん」

「うくっ……」




 即答されるとは思わなかったのか、口をパクパクとしていて言葉になっていない。こうしている間にも彼女の心の中は常にこちらに入ってくる。




ーっ、もう嫌だ。何なの、今日のレント!!!ー


ーむ、胸がドキドキするし、いつもより近いし……!!!ー


ー余裕な顔しているのが悔しい~~ー




 うん。いつも通りの彼女の心の声だ。

 おかしいな……。ちゃんと説明したし、ウィルス自身も注意すると言ったのに。言った翌日から既に心の声が聞こえてくるから、思わず笑いをこらえるのが大変だった。


 大慌てな彼女を落ち着かせる為に、ポンポンと背中をあやせば心の声も赤くなっていた顔も収まって来た。




「わ、わたしっ……」

「待った」




 彼女の口を私に人差し指で抑える。

 上目遣いで、覗き込んでくる顔がまた可愛い。それに、彼女の瞳には私しか映っていないのを嬉しいと感じる。


 心が満たされると言うのはこういう事なのだろうか。

 幸せに思う気持ちとは……こんなにも甘くて、魅力的で夢中にさせる。


 毒にも似たようなこの甘さに、ウィルスは気付いているのだろうか。夢中にさせている自覚が……果たして彼女の中にはあるのだろうかと、何故だか私の方が焦ってしまう。


 こんなにも私の事をかき乱している。なのに、本人は気付いていない。ナークにも自覚しておくよう言われていると思ったんだけど……甘かっただろうか。




「今更だけど……。ウィルス、私の妃になって。愛しているのは貴方だけなんだ」




 サラサラとした彼女の髪をとり、匂いを嗅ぐようにして見せ付ける。

 この頃、柑橘系の匂いが好きなのかよく彼女から香る。私的にはこの香りは好きだから、他にも好みがあるなら聞いてみたい。




「ず、ずるいよ……そんな言い方」

「ふふっ、今更? それで……返事を聞かせて。私の愛しい人」




 顔を近付けば戸惑いながらも、正面から私の事を見る。

 震えているような唇にそっと頬に触れる。緊張しているような表情だったけど、徐々に落ち着きを取り戻していき――。




「好き、です。……私、レントの事が好きなの。だから、だから――」




 絶対に離さないで……。

 小さいながらもはっきりと答えてくれた。その証拠に私の手を包み込むようにして握ってくれている。

 嬉しくて思わず泣きそうだった。でも、まだウィルスは何かを言おうとしている。それを聞くまでは我慢だと自分に言い聞かせて言葉を待った。




「レントの隣に居て恥ずかしくないようになる。胸を張れるように、私の旦那様はこんなにも素敵な人だって、言いたいの。傍に居て嬉しいのはレントだけだよ……。レントだけの、妃になりたいです」

「ウィルス!!!」




 嬉しい言葉ばかりに我慢がならなかった。

 待っていた言葉。私が思うように、ウィルスも同じ気持ちなのだと分かって凄く嬉しい。


 じっと見てたら、彼女の方から目を閉じた。

 彼女から仕掛ける事もあったが、それは大体寝ぼけている時だけだ。だから、こうして彼女から誘って来るのが……本当に嬉しい。




「ん……」




 軽く触れるだけ。たったそれだけでも、私の心は凄く満たされた。


 不安だった。


 私は強く彼女の事を想っているが、彼女の方はどうなのか。

 自分だけがこんなに舞い上がっていて、彼女の本当の気持ちは……どうなのだろうかって、ずっと思ってたんだ。




「やっぱり、こうして言葉にしてくれるのって嬉しいな。明日、父様と母様に報告しに行く。……勿論、良いよね?」

「わ、分かってる癖に……」

「うん、聞いてみたいだけ♪」

「もうっ……」




 知らないっ、とばかりにそっぽを向かれる。

 でも、私が諦めもせずにじっと見つめていれば……。ウィルスはぎこちなく見つめ返してくる。




「ん? どうしっ……」




 自分の唇に、そっとウィルスの唇が重なった。

 不意にするから、驚きすぎて反応が遅れてしまった。バチリ、とまた目が合えば彼女はそのまま恥ずかしそうにして端に移動を開始する。




「うきゃっ……」

「ダメ。今日はこのまま、ね?」




 正面で顔を合わせないだけまだマシだ。

 後ろから抱き込むようにして、そのまますっぽりと彼女を捕える。耳元でそっと言えば分かりやすく、体が跳ねる反応に思わず笑みが零れる。




「ふふっ、明日が楽しみだな」

「……わ、私も……」




 私の独り言にも、ちゃんと反応をしてくる。

 それが嬉しくてぎゅっと強く抱きしめて、すぐに緩める。ニヤニヤする私とは対照的にウィルスは、ずっと顔を真っ赤にしているのだろう。


 彼女を抱きしめながら寝た私は、本当に幸せものだと思いながら眠りについた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その翌朝。

 腕の中で抱きしめたウィルスが居なくて焦った。そうしたらナークが厨房にいるよ、と念話で教えてくれる。


 着替えて向かう途中で、スティングとばったり会う。彼が手にした可愛らして小さなラッピングをした物が目に入る。ジークとバラカンスにも似たような物が渡されている。


 聞けば今朝がたにウィルスが渡してくれたのだと言う。

 ………。

 思わず私のはと言いたくなったが、ナークの言う様に厨房に行ってみると彼等にも何やらプレゼントを渡している。むむっ、と思わず聞こうとして彼女が私に気付くと――。




「あ、明日……デートして下さい!!!」




 そんな嬉しい言葉を聞いた。

 勿論、断る気なんてないから大きく頷き「じゃ、仕事終わらせて来る!!!」とすぐに執務室へと引き返した。


 色んな人にプレゼントをしている事も、綺麗さっぱり忘れて私は仕事に集中した。その休憩の合間に父様と母様に改めて報告しに行くのも忘れずに行い、この日の私はかなりの気合が入っていたのだろう。



 すぐに城の人達には嬉しい報告なのだと、伝わるのに時間は掛からなかった。リベリーが呆れ顔で「弟君、怖いわ」と嫌味を言っていたが無視して仕事に没頭した。



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