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第126話:見習いの旅


ーウィルス視点ー


 内緒で働き始めて早2カ月。

 リラル様が色々と手伝ってくれるから、レントには上手く隠せている……と思いたい。

 レントはリラル様と帰って来た日から、私にある事をお願いしてきた。それはサンドイッチが食べたいと言うお願いだ。




『ねっ、私からのお願い。……聞いてくれるよね?』

『う、うんっ……!!!』




 勢いで頷いてしまったのは……仕方ない。

 毎日、顔を合わせているけれど、朝食もいつものように食べさせるというのも恒例なんだけれど。未だに侍女達からの黄色い声にも耐えて、食べないといけないんだけど……!!!


 国民からの期待も高くて、カッコよくて私を守るっていつも言ってくれている素敵な人。毎日、ドキドキしててそれも見抜かれてて。


 素敵な人から首を傾げながら聞かれたら、頷くしかないと思うんだ。

 何でもお願いを聞きたいと思うのは普通だと思うの。……違う? 違わないよね??




「ウィルス様。王子の事、本当に好きですよね」

「ミ、ミミミ、ミリアさん……!!! そんなにハッキリ言わないで下さい」




 今、私とミリアさんはお昼休憩を利用してお話をしている。

 2カ月ずっと働いている訳では無い。なんせ私はカルラと3日間で入れ替わる。これは今も変わらないし、これ以上代われる日数が増えないのは負担を掛けない為と言うのが大ババ様とラーファルさんの見解だ。


 ここで下手に伸ばしたりしようとして、その反動で私とカルラがどうなるかは未知数。危険に手を出すよりも今の現状で出来る事をしようとなった。


 


「ふふっ、王子も幸せ者ですよね。毎日、ウィルス様に手作りの物を貰って」

「い、いえ。私もミリアさんの旦那さんのリーガルさんから厳しく教わっていますから」




 リーガルさんの奥さんがミリアさんだと知ったのはつい最近の事。

 ネルちゃんが知っているんだと思っていたみたい……。そりゃあ、私はお城に居るしリーガルさんは厨房の料理人で私達が食べるご飯を作っているんだからそう思われても仕方ない。

 仕方ないんだけど……リーガルさん、全然自分の事話さないんだもん。


 話をふっても「おう」とか「そうですか」だよ。


 会話が続かない……!!!




「まぁ……リーガルと話すのって難しいし」




 奥さんであるミリアさんに難しいって言われる旦那さんって……良いのだろうか。そう思っていたらミリアさんが何だか意地悪そうな笑顔を私に向けた。


 え、嫌な予感する。




「ナークから聞いたよ。王子に『愛してる』って言ったんだって?」

「っ、ごほっ、ごほっ……!!!」




 うっ、思わず食べてたサンドイッチを喉に詰まらす所だった。

 じゃない!!!


 え、え、何で、ナーク君そんなこと言ったの!?




「ふふん、ウィルス様だって大胆なこと言ったわね」

「うっ、あ、あれは……」

「そんな事言ったのね。ウィルスは……。成程、だからレントは毎日頑張っている訳だ」

「っ、ラウド様!?」




 ど、どどどうしてここに!?


 え、ファーナムもいる。居るなら言ってよ……。

 そう思っていたら、ちゃっかりラウド様も座って3人で昼食をすることになった。テキパキとファーナムが用意をして、いつの間に居たのか侍女達もいて全員ニコニコとしている。


 何で皆、私に寄るのだろうか。

 そして何でそんなに期待の眼差しを向けられるのだろうか……。




「……あの、食べます? サンドイッチ」




 そう聞いたら全員首を振って「大丈夫です」の一点張り。

 むしろそれよりも……と言った感じで見られる。なんだろう……と思い当たる節はあるけれど、違うよねと思っていたらラウド様が爆弾を投下した。




「ふふふっ。皆、話しが気になるのよ。ねっ、レントになんて言ったの? それにそのイヤリングと指輪、一体どうしたのかって気になるんだもの」




 ねっ? とウィンクをしながら周りに聞けば、「はい!!!」と元気のいい返事をされる。唯一、ファーナムだけは「頑張って下さい」と言ってくれるけど、止める気は……ないんだね。


 それから、なるべく。なるべーく、恥ずかしい顔を見られないようにしながら話をした。

 海辺でのお互いの告白や、その……レントから婚約指輪とイヤリングを渡してくれた事、とか。




「うぅ。喉、乾いた……」

「お疲れ様です。こちらをどうぞ」




 ミリアさんは元々仕事の休憩時間で、一緒に居たこともあり途中で抜けた。じゃあ、私も!!! と思って立ち上がったらラウド様に肩を抑えられ「続きは?」と促された。

 

 既に逃げ場を侍女達にガードされ皆は無言の笑顔で続きを……と言った期待の視線を向けられる。


 非常に居心地が悪い。

 話せる範囲は話したのにと思いつつ、ナーク君をこの場に呼べないのが悔やまられる。

 彼は姿が見えないだけでちゃんと居る。でも、このお城の中で姿を見せるのは知っている人達が居る時だけ。ラウド様とファーナムが居ても侍女達に姿を見せないのはリベリーさんと同じ非公式の護衛だから。


 リベリーさんもナーク君も、護衛をしてくれる心強い人。


 自分達が住んでいた里には暗殺の訓練を受けたりして実際にそれでお金を貰っていた過去がある。

 恨まれやすい職業だし、自分達の事を狙う人間が居てもおかしくないからと極力は姿を見せない。だから、ナーク君と3人でご飯を食べる時とか食べさせられる時とかは、侍女達は中に入れないしファーナムが「お休み中です」と言って遠ざけている。


 多分、ナーク君も聞いている。と、言うよりミリアさんに教えたのはナーク君だったんだね!!!


 発端はそこからじゃないか!!!!!




「ね、ウィルス。まだ時間はあるし、予定もないのよね? ファーナムから聞いているの。今日は厨房にも行って図書館にも行ってて、暇を潰す気でいたのよね?」




 はっとしてファーナムを見る。

 彼女はそれに気付いて、さっと顔を逸らした。その姿がなんだか、ごめんなさいをしているようで。

 ……ラウド様、権力を使って聞き出すのはダメだと思うんですよ。


 結局、私はそのまま続きを話す事に……。

 


 翌日。

 話が広がるのは早かった。お城の中を歩ている度に感じるニコニコとした表情で私を見ては「今日は厨房に向かわれますか?」、「図書館に向かわれるのでしたらこちらが近道ですよ」と教えられる。




「ご苦労様です」

「まぁ。ここまで広がったら、なぁ?」




 軽く泣いている私をなぐさめるのは、見習いをしているルーカスさんとフィルスさん。厨房を出入りする時に、リーガルさんに私の事をお願いされながら共に料理を学んでいる仲。

 厨房の人達にまで広がるとか……。

 もう逃げ場なんて無いんだなと思っていると、私に気付いたのか料理長が歩み寄ってくる。




「届きましたよ、ウィルス様。南の国からの特産品と向こうのお城で働いている見習い達です」




 私もただ南の国に3カ月も居た訳じゃない。

 ギルダーツお兄様からリグート国との貿易を結ぶ事を聞きある事を考えた。


 話はしてみると言ってくれたお兄様。


 帰ってから料理長にその提案を話せば、すぐに固まり「おぉ、これで勝手に居なくなるのはないな」とリーガルさんからは褒められた。


 そんな頻繁に南の国に行くのなら、良かったのかも知れない。

 特産品を特別に融通してもらうのは悪いからと、ディーデット国の料理長と何度か話せるように場を設けたりした。


 その結果、お互いの特産品を送るのと見習い達に研修という形で互いの国に行こうと言う事になり話は盛り上がったみたい。だから、今話しているルーカスさんとフィルスさんも南の国に行く。




「お前達、向こうでもまれて来い」

「ひっ、酷い!!!」

「こんな経験ないからな。姫様に感謝しなさい」

「料理長、良い事言ってますけど顔が悪い!!!」




 なんだか、2人には申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。

 私がサンドイッチを作ったり、リーガルさんにデザートの作り方を教わりながら2人に精一杯のもてなしをした。


 2人は喜んで、涙を流しながら「姫様の手作り、味わえないの嫌だ!!!」と言う。それは来たばかりの南の国の見習い達も、見ており困ったように目を泳がせている。


 どうしよう。別に彼等が悪いわけではないのだ。そしたら迎えに来たレントがたまたま。その部分だけを聞いてしまい――




「誰のが味わえないって……?」




 ピシっと空気が凍るのを感じた。

 でも、ルーカスさんとフィルスさんは抵抗とばかりに私に抱き着き「王子が羨ましすぎる!!!」と言うんだけど……レントを煽らないで。


 みるみる機嫌が悪くなってるから!!! 


 涙目なのは私もなんだけど!!!


 


「話しは聞いている。さっさと向こうに行って料理長達の言う様に強くなればいい。その間、安心して良いよ」




 べりっと私から引き剥がして、抱き寄せて来る。

 そう、見せ付けるように。抱きすくめるようにワザと密着して、だ。




「私の大事な大事な婚約者に抱き着かないでよ。それをして良いのはわたしだけなんだから」

「レ、レント……!!!」




 普段なら来ないのに、何でこういう時にだけ勘が働くのか。

 あ、まずい。私を見た……。こ、刻印でバレた?




「……あとでお仕置き、ね」




 ひうっ!?  

 すっごく悪い顔をしてる!!!    

 リーガルさんに助けを求めると「頑張れ」と目で語られ料理長さんに向けると何事も無かったかのようにディーデット国の見習いの人達と話してるし!!!


 その見習の人達だって、気が気じゃない感じでこっちを見ているんですけれど!!!


 え、え、何。私、地雷は踏んでないと思うのに凄い敗北感がある!?

 


 そのままレントに連れて行かれて、理不尽なお仕置きを受ける事に……。その日から私は、南の国の見習い達との距離を詰められなくなったんだ。

 レントに睨まれたくないからだって。それを聞いた私はレントに厨房の出入りの禁止をお願いした。


 嫌だと言うレントにもう手作りを作らない。と言ったら泣きそうな顔をしてなんとか言う事を聞いてくれた。

 ……ごめん、すっごく傷付いた顔をしてたんだけど、ちょっとだけ我慢して。もう少ししたらその分のお礼をするから!!!


ウィルスも段々と恋愛脳に……?

次回から隣国のお話になります。恐らく? 初であろう、エリンスの婚約者であるイーグレット視点から話は始まります。

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