紫色の妖花
和やかな雰囲気を作ってくれる、健全で暖かなものばかりが、花というものでもありません。
毒を持つ、紫色の花もそこには紛れていたのです。
怪しいとわかっているのに、手を伸ばしてしまうのです。
いけないとわかっているのに、手を触れてしまうのです。
毒を含んでいると、わかっているものこそ、触ってみたくなってしまうのです。
禁じられたこそだから、やりたくなってしまうのです。
黄色の花、穏やかな花の中に、毒々しい……なんとも毒々しい紫色の花です。
不意に出現した、唐突に花の中から出現した、この怪しく毒々しい花をなんとすべきでしょうか。
キャンパスを染めたこの紫色は、怪しくもなんとも美しい色なのです。
いけないものが魅力的なものですから、怪しいものは美しいものなのです。
矛盾しているようで、正という他のないことでした。
黄色の花が、愛らしく肯定するところの美だとするならば、紫色の花は、怪しく否定するものの美であったのです。
離されたその差異は重なり合っているようなものでした。
芳しい香りのこともあって、気分も高揚してしまっていたのでしょう。
不思議なことに、黄色の花とは違って躊躇い惑うこともなく、容赦もなく紫色の花を手折ってしまいました。
手折られて、手の中でぐったりと横たわる花は、やっと愛らしさを帯びたように思えました。
そして、これこそが、真に紫色がキャンパスに舞い降りるということだったようです。
花弁はひらり堕ちました。