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彗星への願い事  作者: 如月ナオト
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ゴールデンウイーク 1

 チャイムが鳴り、午後のホームルームが始まる。「くれぐれも課題はちゃんと提出するように」とだけ担任は言い、ホームルームが終わった。

 そして、生徒の大半が檻から解放された動物みたいにはしゃいだ。

 「よっしゃぁぁぁぁぁ、ゴールデンウィークが来たァァァ」

 誰が叫んだかはわからないがこれが生徒の気持ちだ。


 四月下旬の金曜日、明日からゴールデンウィークと言われる約一週間の連休が始まる。

 すでに、クラスの何人かは遊ぶ約束をしている様子だった。


 だが、八尋は仁と恭也とは遊ばない。

 仁は「まだ見ていないアニメをこの一週間で見る」という目標を達成するために遊ばず、恭也は所属しているハンドボール部がゴールデンウィークにもあり、休みが3日しかないうえにその休みの日は彼女と遊ぶことになっているらしい。

 八尋は部活に所属しておらず、一週間ずっと家でボーっと過ごすはずだった。しかし、今は彼女がいる。(非公開の)なので、彼女と遊べるだけ遊ぶ予定だった。

 だが、昨日の段階でその計画が潰れた。

 理由は家族と箱根の旅行をするらしく、日曜日に出発するらしい。なので、明日の土曜日しか遊ぶことが出来なかったのだ。

 (まぁ、愛唯と遊べるだけでもうれしいんだけどね・・・)

 

 八尋が帰ろうとした時、千慧が八尋の袖口をつかんだ。

 「何か用?」

 「今日委員会がある」

 「そうなのか?」

 「うん、この前の委員会で言ってた。だから一緒に行こ」

 八尋はめんどくさがりながら、千慧と一緒に保健室に向かった。


 委員会では、これからの予定とアルボースの補充だけだった。

 アルボースは二人一組になって補充するので、同じクラスの千慧と一緒になった。


 「・・・これで終了か?」

 「えぇ、そうよ」

 3階のトイレの前で自分たちの仕事が終わったことを確認し、八尋はすぐに帰ろうとした。だが、千慧はずっとその場に立ちつくしていた。

 「どうかした?」

 「あなたが最近、今まで以上に気持ち悪くなったのはなぜかしら」

 「は、今なんて?」

 「だから、なんで最近になってより一層気持ち悪くなったのって聞いているの」

 「・・・知らねぇよ」

 「あら、自分が気持ち悪い存在だって気づいてるのね。思ったよりは賢いわね」

 八尋は、千慧がいきなりの上から目線の言いように驚きと怒りを感じた。

 「俺が気持ち悪いなら関わるな。お互いのために」

 「本当はそうしたいけどそうしなければいけないのよ」

 「・・・どういうことだ?」

 「あなたは向坂君ととても仲がいい。だから、あなたと向坂君との距離を離したいの。だからやりたくもないこんな委員会に入ってあげたのよ」

 「なぁ、俺と仁の距離を離すためにお前は何をするつもりだ?俺を殺すつもりなら返り討ちにするぞ」

 「ふふっ、安心して。そんな物騒なことはこちらもしたくはないもの。だから、私の彼氏になってもらえるかしら」

 あまりのことに口が思いっきり開く。

 「あら、あまりのことに口が塞がらなくなりましたか」

 もし、八尋と千慧が恋人になれば、お互い席は隣なので仁も気を使ってあまり近くに寄ってこなくなるだろう。

 「お前って仁のことが好きなのか?」

 「・・・なっ、なんでそうなるのよ。私はそんなことを一言も言ってないわ」

 「あっそ」

 八尋はどうでもいいと思いアルボースを返すために保健室に向かった。

 すると、今度は襟をつかまれた。

 「何無視してるの。それで、私の要求は受け入れてもらえるのかしら」

 「お前の要求は受け入れない。それに、仁に好きになってほしいなら自分の努力で頑張れ。ストーカーにならない程度で」

 「だから、なんで私が向坂君のことを好きって思わないでくれる。私がアニメ好きの男子なんて好きになると思う?」

 「だけどそれ以外完璧だろ」

 「うん、なんたってテストでは常に学年トップの成績を残し、去年の体育大会のリレーでは最下位からまさかの全員抜き。顔もモデルみたいに小さく立派に整っていて背丈も高くて体もしっかりしていて・・・ごほん、今のは聞かなかったことにしてください。つまり、あなたの言う通りです」

 (いい加減に好きって認めろ)

 「ゴールデンウィーク明けなら俺がおまえと仁を近づけてやってもいいぞ。あいつが3次元に興味があるか知らないけど」

 「・・・そう、なら放すわ」

 千慧はやっと襟を放してくれた。

 

 その後、校門のところに愛唯が立っていた。

 「どうしたの、愛唯」

 よく見てみると、愛唯は何処か不機嫌そうな表情をしていた。

 「先輩、一緒に帰りましょう」

 「う、うん」

 そして、二人は並んで歩いた。


 だが、愛唯はずっと不機嫌なままだった。


 「ねぇ、なんでそんなに機嫌が悪いの」

 「別に悪くはありません。ただ、先輩って意外に女子にモテるんだなぁって感心しているだけです」

 「ごめん、言っている意味が全く分からないんだけど」

 「先輩と一緒にいた人、かなり美人でしたね」

 「うーん、言われてみれば確かに他人よりは大人っぽくて美人だね」

 すると、愛唯の機嫌がさらに悪くなった。

 (あれ、何か変なこと言ったっけ)

 「・・・先輩はあの人のことをどう思っているんですか」

 愛唯は歩く足を止め、顔をかなり近づけてきた。

 (ち、近すぎる。何とか理性を保て、俺)

 「ただの隣の席に座っているクラスメイトって思ってるけど」

 すると、愛唯は少し機嫌がよくなった。

 「だったら、私のことはどう思っているんですか」

 「俺の可愛い彼女って思っているけど」

 すると、愛唯の顔が真っ赤になった。

 「な、な、な、なんでそんなに抵抗もなく言っちゃうんですか。そ、そ、そ、そんなこと言われるとなんか恥ずかしいです」

 愛唯は自分の顔を隠すために顔を下に向けた。

 (あれ、この展開どっかで見たことのあるような・・・そういえば彼女の機嫌が悪くなるのは他人と仲良くしているのを見て嫉妬するからって楓花が言ってたような気が・・・もしかして、嫉妬しているのか)

 「ねぇ、もしかしてだけど嫉妬した?」

 「・・・はい。私も一応保健委員なのに先輩は全く気が付いてくれなくて、他の女性と一緒にいるのでなんかもやもやしちゃって」

 「あ、そういえばあの時アルボースを持ってたのはそういうことか」

 この発言で愛唯の機嫌は悪くなる。

 「やっぱり気づいてなかったんですね。少しがっかりしました」

 「・・・ごめん、全く気付かなかった」

 「だったら、明日のデートで私をたくさん楽しませてください。そうじゃなきゃ許しませんよ」

 「わかった」

 そして、二人は再び歩き出した。そして、互いの距離は少し短くなった。


 「それでは、また明日」

 愛唯は元気に走り出した。

 ・・・・

 「一人は慣れているはずなんだけどな」

 八尋は愛唯と反対方向に歩き出した。

 

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