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この手は幸せすら掴めない  作者: ゆぅたる
7/9

それぞれの思い

誤字報告を受けたので訂正しました。

結局は顔の

ご気おつけて→お気をつけて

支えない→使えない

です。

すみません!

彼女の横顔を改めて見て気づく。

今まで可愛いとか、綺麗だとか思っていたけど、

それ以外にももっと魅力的なところがあるじゃないか。

過ごした時間はとても短く、決して彼女の事を「よく知っている」とは言えないけど、それでも、時々見せる素の表情には何度も胸の鼓動が速くなるのを無意識に感じた。

クエストを受けるまでの時間彼女は他の人とも楽しそうに喋り、笑顔を見せていた。胸が痛かった。俺に話しかけたのは顔とか言っていたけどおそらくは社交辞令みたいなもんだろ。

彼女は誰にでも優しく、最初こそ近寄りがたい雰囲気があったけど、とても暖かい「女の子」だった。

何度も感じた胸の高鳴りも痛みも俺はスミレの事が「好き」になっていたかもしれないことだった。


「……。」

それに気づくとどうも顔が熱い。


「ん…。んー。か、カケル?!起きたの?!」

「う、うん。おかげさまで。」

「そっか!よかったー。」

スミレは緊張が一気に解けたのか無防備にもベッドに体を伸ばしてきた。

や、やばい。なにがやばいのかは、さっきまで、あんな事を考えていたからスミレが眩しくて、直視できない。


「ねぇ、カケル。その…ごめん、なさい」

「え?」

「だって。カケルが怪我したの、私のせいだし。」

「いや、そんなことはないよ。」

「でも、」

「でも、じゃなくて。スミレがこのスキルに気づいてくれなきゃあの子は助けられなかったし、使えないって思ってたスキルが誰かの役に立てたからさ。」

「それでも!それでも…怪我をしたのはそのスキルを使わせた私のせいなの!カケルは知らないと思うけどカケルは五日間も意識が戻ってなかったよ!」


スミレの目には涙があふれてる。

あれから、五日間彼女がどんなに自分を責めてきただろう。だけど、これはスミレのせいじゃない。


「確かに意識がなかったかもしれない!けど生きてる!あの子には死ぬ運命があったのを、俺達で変えたんだ!スミレはあの子にいい事をしたんだよ!」

「そこじゃない!!」

「え?」

「確かに、あの子は助かった。けど、その代わりカケルが傷つくのは嫌っ!」


その言葉にどれほどの思いを込めて、言ってくれたかなんて定かじゃない。好きな子に言われたら本当に素敵な言葉だよ。だけど!


「結果的に傷ついたかもしれない、だけどそれがこのスキルの力であって、俺一人が背負えばみんな救えるんだ。傷つく対象がたった1人の人間に絞られただけじゃないか。誰かの運命を変えるならそれなりの覚悟が必要だし、あの子にスキルを使う時だって自分が痛い目にあうのぐらいわかってたよ。

でも、それでいいんだよ。何にも役に立ってこなかった俺が。何も役立てないと思ってたこのスキルで、誰かが救えるならそれでいい!例え自分がどんなに傷つこうが自分の体だよ!人助けだ!いいじゃないか!何が悪いんだよ!」


初めて人の役に立つ。ほかの人からしたら馬鹿なことかもしれないけど、クソ中途半端な人生生きてきた俺にとっては充分すぎるほどのことだ。


「カケルはわかってない。確かに体に傷をおったのはカケルだけだよ。でも、もっと違うところ、『カケルが死にかけてる』その状況になるようなことを促した私の心はどうなるの?!痛まないとでも思ってるわけ?!」

「違う!気にするような事じゃないって言ってるんだよ!」


いつしか、声を荒げ何を言ってるかもわからないようなほど感情的になり、自我を通した。スミレが言いたいことがわからないわけじゃない。だけどスミレが気にするようなことじゃないじゃないか。


「…たった、数日だぞ。俺らが一緒にいたの。確かに随分と助けられた。こっちに来たばっかりで右も左もわからない俺に沢山のことを教えてくれたことに関しては頭が上がらない。」

「うん。」

「でも!出会って数日、まだお互い知ってることよりも知らないことの方が多い間柄で、そんな男に対してそこまで心配する必要ないだろ。ましてや、人助けをしたんだ。」

「……。そう。じゃあ私は気にせずこれから傷ついてくカケルの姿を見てけばいいの?

あなたが傷つけようとしてるその体は!私が守りたいものの一つなの!」


守りたいもの。その言葉は俺の中に響いて鳴り止まない。溶けることせずただただ、投げつけるように放たれたその一言に無意識に視界が滲む。

言わなくても伝わる。俺も同じだから。「誰かを救える」ことを言い訳にしながらも、心の底で傷ついてく欲しくない。笑顔でいて欲しいと願ったから、ここまで意地を張るんだ。

声もガラガラで、ちゃんと伝わるかわからないけど。伝えなくちゃ、いけないことがある。


「ありがとう。そんな事を言ってくれるのは今じゃスミレだけだよ。でもさ、俺だってそんな悲しい顔をされたくないんだ。怪我をしたのはスミレのせいじゃないって言って安心して欲しかったんだ。ごめん。」

「うん。私も、初めて誰かの役立てた時は嬉しかったから。私も理解しようとしてなかったね。ごめん。」


お互いの気持ちを素直に言えた。

少し嬉しいけど。

問題が起きたら解決をしなくちゃいけないんだ。


「なぁ、スミレ。これからの話をしよう。」




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