本当の力
兎にも角にも、この世界に慣れて生活を組み立てて行かなくてはいけない。
早速次の仕事を受けて報酬を貰おうではないか!
「どんな仕事にする?」
「もう、お昼前だしすぐに出来そうなのはないからお昼をたべてからしよう。」
「そうね。」
俺の提案にスミレは快く答えてくれた。
この世界の食べ物は俺のいた世界と少し違うのだが、少しすずつ慣れてきた。しょっぱいけど。
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「そうね!じゃあ、あの依頼とかどう?」
「おう!そうだな、フムフム『森の中の咲く一輪の結晶』って。何これ?」
「その名の通り、花に結晶の咲く種類があるのだけれど、希少だし高く値がつくのよ。半日もあれば一輪ぐらいは見つかるわよー」
「んー。じゃあそうしよっか。」
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(森の中って案外怖いもんだな。)
「ねぇ…」
トントン
「ぎゅあ?!」
「きゃぁ!!ちょっと!いきなり大きな声出さないでよ!」
「いきなり話しかけられたらビックリするだろ!普通。で、なんだよ?」
「前に小さい女の子がいるのよ…」
「それがどうしたんだ?」
「実はね。私のスキルの中の一つに『運命の道筋』っていう未来予知のスキルがあるんだけど…」
「うわぁ…まじかよ。すげぇな。」
「でも私のスキルは別に見たい時に見れるわけじゃなくて、唐突に来るの。」
「それで、あの女の子の未来が見えちゃったわけ?」
「うん…」
「どうしたんだよさっきから浮かない顔して。」
そんなことを言いつつも俺の中にも最悪の結論なんてある。ただ俺は未来なんて見れないし、先がわかるなら対処のしようがまだある。
「あ、あの女の子ね…多分とゆうか、確実に今日中に死んじゃうわ。病気とかじゃなくて、誰かに殺されて…」
彼女の言葉は予想はできてはいたが実際現実として突きつけられるとかなり重く、深く、黒い。そんな感情の渦に巻き込まれながら、俺は一つのことを決めた。
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「そっか…なら、俺達で助けよう。
助かる命を見捨てるなんてできない。」
(俺は1度死んでる。その恐怖と喪失感とやるせなさは俺の前では味合わせたくない。)
「うん。そうだね。」
「任せろ。どんな事をしてでもあの子は俺が助ける。絶対死なせない!」
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カケルの言葉で少し安心したのか、少し足がふらつく。
カケルは本気なんだ。この世界に来たばっかだから、不安なことも多いはずなのに。
そんなものは全て後回しにして、彼女の命を助けようと考えている。
1歩先を歩くカケルの背中を見て、安らぎと暖かさと憧れを感じる。
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この世界はどこまでも、彼女に対して不平等なのか。カケルはそんな事を考えながら、阻止してきた。
あの幼き少女はまだ、生きてる。
死を防ぐこと29回。森の中のありとあらゆる危険を排除したのにも関わらず彼女を殺しにくる。
「きっと運命の矯正力ね。本来変えていいものではない運命に逆らっているもの。」
「そっか。あの子の未来はまだ死を指してるんだろ?」
「そうね。」
スミレは考えた。自分の頭の中を全て回して、そして一つの疑問が浮かぶ。
「ねぇカケル。カケルの今まで使った能力のあと必ず不幸な事が起きるって言ってたよね?」
「まぁ…そうだな。」
「だったらさ、」
「きっと、今まで能力使用による副作用のようなものじゃなくて、それが本来の能力何じゃない?」
え────?