互いの距離
早速依頼を受けた。
彼女は町から1kmほど離れた鉱山から鉄鉱石を運ぶ依頼を受けたかったらしい。
「ごめんなさいね。パーティー組んでいきなり重いもの持たせようなんて。」
「大丈夫ですよ。何受けるか決めてなかったし、一人でやるのはキツそうな内容ばっかりだったので、こっちもありがたかったです。」
「ところで、ヒイラギさん。」
「何ですか?」
「2人ではこの先、依頼を受ける時に選択肢が狭いと思うのですけど……」
「人手が欲しいんですか?」
「そうです。」
「そこら辺はスミレさんに任せます。」
「はい。わかりました。」
「「………」」
気まづいなあ。お互い少しまだ遠慮してる感じがするし、この先ずっと敬語ってゆーのもなぁ。
「ねぇ」
「は、はい!」
「俺のことさ、『ヒイラギさん』じゃなくて『カケル』って呼んで下さい。」
「どうして?ですか?」
「『ヒイラギ』ってのはファミリーネームなんです。スミレさんの『スミレ』はファーストネームですよね?」
「はい。そうですよ。」
「それに、せっかくパーティー組んだのにいつまでも敬語じゃ気まづいので、呼び捨てにしてくれて構わないです。」
「わかりました。ですが…カ、カケルはどうして敬語なの?」
「あ!ごめんなさい!じゃなくて、ごめん!」
「じゃあ、私の事もスミレでいいわよ。」
「うん」
「じゃあ、よろしくな!スミレ!」
その時の彼女の笑顔はとにかく可愛くて、胸の奥からモヤモヤした感じの想いは、形にならないまま、ずっと引っかかってこの感情の名前を俺はまだ、知らなかった。