結局は顔
「柊 翔流さんで宜しいですね?」
「はい」
「では、身体にお気をつけて下さい。」
この世界にきて一週間。
衣服は俺だけ学校の制服。ブレザーなんだか、この服装は少し目立つ。こっちだと、派手な服装の人はあまり見かけない。せいぜい貴族ぐらいだろうな。
流石にキツイので服は、ロリっ子神様から貰ったお金で調達し、制服に関しては今泊まってる宿にある。
食べるものに関しては転生した時に、ロリっ子神様がある程度の量をくれた。もう少しは大丈夫だろう。
住む場所については、宿を借りているが金銭面を考えるとまぁ、仕方ない。
最低限の衣食住は揃った。あとは生活をするのに必要な職だが、それはさっき冒険者登録を済ませた。
掲示板にある張り紙の依頼を受けて達成すればそれに応じた報酬が貰えるらしい。
だけど、スライムとかゴブリンとかRPGお馴染みのモンスター達はこの町周辺にはいないらしく、 依頼内容は素材を取りに行ったりと、簡単なものばかりだ。
まぁ、正直言ってかなり有難い。〈盗み〉とか使えない〈スキル〉があるだけで、戦闘力皆無だからなぁ、…
「ねぇ…君。さっき冒険者登録してたよね?」
声をかけられ咄嗟に振り向く。その瞬間俺の中の時間は全て刻むのをやめた──────。
──────
その人の肌は、白く透き通るような透明感に溢れ光すら反射するような、繊細で緻密で精巧な、まるで人ではない何かのように程遠い存在にあるかのように、瞳は明るく、雰囲気は陽気に満ちて行き交う人々は見ることすら躊躇われる程の恐ろしく整った顔立ち。
髪は長く、銀髪で触れてしまったら溶けてしまいそうなほど儚く、健気だ。
視界に映る全てのものを極限まで美化し、彼女がいるだけで世界は彼女を中心として動いているような、そんな錯覚に囚われる。
どれだけの綺麗な賞賛の言葉を並べても、足りない。
この世界にこの人の美しさ、可愛さを表現する言葉はあるのだろうか。現在の俺はその言葉を持ち合わせていない。
その事がとても悔やまれるほどの外見を持って、何を俺にたずねるのだろう。
「私は、スミレ。 スミレ・スィニエークよ。突然ごめんなさい。あなた…たしかヒイラギさんよね?」
「あ…はい、そうです。」
え、何これ。周りの目線で死にそう。人ってこんなにも黒い感情を剥き出しするものなの?泣きたい。二つの意味で泣きたい。
美女に話しかけられた感動と人の目が怖い。
「それで、スミレさん。御用は何でしょうか。」
「あっ!その事なんだけどヒイラギさん。あなたの〈スキル〉の力を借りたいのよ!」
またそれか…ランクEXの肩書きだけで、こんな人までが俺を訪ねてくるのか。足でまといになるのはごめんだし〈盗み〉なんて最悪な名称の上に想像以上に不自由なスキルだ。、周りの視線で死にそうだし、こんな人に話しかけられるのは嬉しいけど。ここまで来ると、あまり穏やかじゃいられない。
「あの、それなら御免です。お話は有難いのですが、スミレさんが思ってるほど汎用性が高いわけでもなく、〈盗み〉だなんて事はしたくないです。」
気づけば少し怒気が混じっていた。
「そもそも、任意のものも盗れず発動しても何を取ったかもわからない。今まで試してきたがうまくいかないし使用後には嫌な事が必ず起こる。なので、お断りします。」
そう、〈盗み〉を使った後は必ず自分に対して不幸な事があるのだ。泥をかけられたりもしたし、いきなり突風に巻き込まれ飛んできた木片で怪我した。
そのくせに使っても利益になるような、ものは全て盗むことは不可。
「こんなスキル肩書きだけのゴミだよ。」
吐き捨てるように言い、その場から立ち去ろうとした。が、
「そう…なら、単刀直入に言うわ。」
「あなたとパーティーを組みたいのよ。」
「は?」
「〈スキル〉じゃなくて、人が欲しいの。EXランクの〈スキル〉が目当てで交渉したら、上手く行くと思ったのだけれど、ごめんなさいね。逆に気分を害したみたいね、申し訳ないわ。
いきなり話しかけて見ず知らずの人にパーティーになって欲しいなんて言ったら失礼かと思って。」
そんなことかよ。なら、そっち先に言えよ。
「はぁ…まあ、いいですよ。どうせ1人だったんで、よろしくお願いします。」
よく見れば、歳は俺と対して変わらないほどの人で、しかもこんなにも整ってる人と組むことになるとは…。やったぜっ!!
さっきの怒りはどこに行ったのやら…ちょろいぜ!俺!
「ところでなんで俺なの?」
「えっと…その…顔、です。」
ロリっ子神様。ありがとう。俺、「無能」だけど頑張るよ!