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第一話 楽しみの前の手続き

ゲーマー女子は増えたようですが、それを狙って下手くそな男プレイヤーが増えるのは、オンライン事情が発達した現在のゲームを遊ぼうと思うと少し歓迎できない部分があります。 寛容になるか住み分けか、という問いは、自分と運営のどちらに責があるのかという攻撃的な問いになってしまうことが多いので、一緒にやるからにはそれなりに強くなってほしいものです。

「ついに来たね」

「そうだな」

「ちゃんと初期設定終わらせてあるんでしょうね?」

「その辺は大丈夫だ、今回ばっかりはしくじれないからな」

「どうだか。 忠伸のことだからまさかがあるかもしれないぞ」

「相変わらずひっでえなあ」


数日前に本体が届き、ついに今日はサービスイン当日。 授業が終わった帰り道、三人が楽しそうに話すのを横で聞きながら、私は高まる興奮を抑えていた。


開始自体は昼頃だったはずだから、今頃もう遊んでるプレイヤーがかなりの数いるんだろうな……。 でも、数時間くらいのハンデなら、私は負けない。 なんてったって、鍛えてるから体の動かし方は良く分かってるし。 初めてやるVRだし、トップを走ろうなんて大それたことは考えてないけど、折角だからそれなりに名前を知られるようなプレイヤーになりたい、なんて、夢見すぎか。 そんなことを思うのは、多分、身近にそういうヤツがいるからかな。


「んじゃ、お前らはすぐ入るだろうけど、俺は七時くらいになりそうだから、そのころ……、そうだな、最初の町の出入り口辺りで待ち合わせるか」

「了解。 つっても俺はフレと行くからすぐ離脱するぞ」

「私もSNSで何人かもうパーティー組もうって誘われてるからそっち行くよ」

「そこは俺も似たようなもんだから……、柳は?」

「私?」


確かに私はこのメンバー以外にゲームをする友達はいない。 兄さんは真面目だからこういうのはあまり好きじゃないって言うし。


「まあ、ほどほどに頑張るから。 私みたいに一人でいる人が他にもいるかもしれないし、そのうちフレンドもできるって」

「心配だなあ。 碧ってあんまり社交的な方じゃないし」

「困ったらきなことギー君がいるから大丈夫」

「え、俺は?」

「?」

「ナチュラルに何言ってんのみたいな顔するのやめない?!」

「冗談だよ」


そんな風に笑いあいながら、冒険の始まりへ、一歩ずつ近づいていく。 これが、長い長い茶番の始まりになることを、私たちはまだ知らなかった。


◇ ◇ ◇


ヘルメット型の本体をかぶり、こめかみ辺りにあるスイッチを入れる。 まずはヘルメット内のディスプレイに表示されるトップ画面。 そこにたった一つ浮かんでいるアイコンを視線操作で選択する。 ゲームのタイトルは、『クロス・メビウス・オンライン』。 そこから表示されるメニューで、プレイを選択すると、一瞬体がふわっと浮くような感覚のあと、気付けば自分とそっくりそのままな体形のアバターが目の前に立っていた。


≪無理のない範囲であれば体形の一部を変更することが可能です≫


アバターの頭上にはそんなことが書いてあるけど、別に自分の体にコンプレックスもないし……。 ……少しだけ、皆にバレない程度に胸を盛るくらいは許してほしい。 きっとそのうちこのくらいまでは成長するし。 ……するよね?

髪の長さと色、それに目の色も少し弄っておこう。 濃い青紫のミディアムストレートに、目は……どうしよう、緑もいいけど水色も、赤も捨てがたいかも。 ここは水色にしておこうかな。


次は初期装備を選ぶのかな?


≪それでは、各武器のチュートリアルに入ります≫


チュートが先か。 と思うよりも早く、周囲が無機質な白い部屋からサッカー場か野球場のような刈り揃えられた芝のフィールドに変わる。


≪最初は片手剣の訓練となります≫


見るからに初心者という感じの皮鎧に身を包んだ私の手には、いつからか片手持ちの直剣が握られていた。 そして目の前に、居合で斬る……なんて言ったっけあれ。 あんな感じのわら束が立っている。


≪武器には、サイズ、重量、切れ味の基礎パラメータの他、突撃適正、斬撃適正があり、適正が低い攻撃を使うと威力が低下します≫


そんな説明と同時に目の前にウィンドウが開く。 この武器のステータスのようだ。


△ △ △

武器名:直剣(チュートリアル専用)

カテゴリー:片手剣

サイズ:標準

重量:75pt

切れ味:100pt

突撃適正:B

斬撃適正:C

魔力伝導:C

武器説明:武器の使用に慣れない新人冒険者のために、軽めに作られた直剣。 すべての攻撃をそれなりにこなせる作りになっている。

▽ ▽ ▽


恐らく標準重量が100、切れ味も100が標準で、適正はCが標準レベルって感じかな。 魔力伝導?


≪このゲームでは、剣、および盾を媒介に魔法を使用します。 魔力伝導が高いほど強力な魔法が使用できます≫


なるほど。 説明文を深読みすると、魔力伝導が高くないとそもそも発動しない魔法もありそう。 重さは自分でちょうどいいものを探して、切れ味と適正、伝導は高ければ高いほどいいみたいだ。


≪武器による攻撃の際に技名をイメージすることで、収得済みの剣技で攻撃することができます。 剣技には特殊な補正がかかっており、一般的には威力が高い代わりに発動後数秒間アバターの動きが鈍化するなどのデメリットも存在します≫


重い一撃を入れたい時には便利だけど、融通が利かないって感じか。 取得の条件にもよるけど私はあまりいらないかな。


≪魔法は、呪文ごとに詠唱時間が存在します。 詠唱時間という呼称は便宜的なもので、実際に長い詠唱をする必要はありませんが、発動時に呪文名を宣言する必要があります。 この宣言は以降取得可能なスキルによってキャンセルすることが可能になります≫


無音詠唱で発動時は宣言、これもキャンセル可能、と。 対モンスターはともかく、対人ではそのスキルとやらを取らないと魔法での奇襲は不可能。 PvPも実装してるって話だから魔法特化の場合はその辺が厄介かな。


≪では、一部剣技および呪文を習得状態にしましたので、自由にお試しください。 終了するときは、メニューを開くと、『次へ』のコマンドが出現します≫


メニューの開き方は体形変更の時にやった。 ただイメージするだけでいい。 の前に、習得状態になったスキルが表示される。


≪片手剣技:剛閃Lv.1 を習得しました≫

≪片手剣技:瞬閃Lv.1 を習得しました≫

≪火属性魔法:火弾Lv.1 を習得しました≫

≪光属性魔法:光線Lv.1 を習得しました≫


剣技と魔法が二つずつ。 種類の他にレベルがあるってことは、スキル数自体はそこまで多くないのかも。


とりあえず試してみよう。


◇ ◇ ◇


それから、二刀流(専用の武器があるわけではなく片手剣を二本持つだけだった)、両手剣のチュートリアルと、カテゴリー内でも一部用途の違う特殊な武器があること、片手剣装備の時は盾を持つことができることの説明を受け、チュートリアルのラストとして好きな武器で目の前のモンスター(多分ゴブリン)3匹と一戦するらしい。


≪このセクションでは、あなたのHPは無限に設定されていますので、倒されることはありません≫

≪撃破タイム、撃破方法、被ダメージによって、ゲーム内に引き継ぎ可能なギフトスキルを入手できますので、出来るだけダメージを受けず、素早く敵を撃破してください≫


戦闘結果が優秀なほど強力なスキルがもらえるらしいので、少し本気を出す必要がありそう。 武器は……、片手剣もいいけど、二刀流にしようかな。 折角のゲームだし、リアルで使いにくい武器だって楽しめるでしょ。


≪二刀流が選択されました≫

≪では、カウント終了後に、戦闘を開始してください≫

≪3≫

≪2≫

≪1≫

≪スタート≫


合図と同時に踏みこむ。 さっきのお試し時間で、今のところ魔法より殴った方が強いのが分かってたから躊躇はしない。


「シッ!」


身体の速度を乗せて右腕で一閃。 これで一匹。 止まった私に左右から二匹同時に飛び込んできたので、地面を蹴って強引に左に移動、無防備に降りてきたこちら側の一匹に、振り向きながら左で一撃、振り切った剣に合わせて重心を動かしながら、コマのように回転、裏拳を打ち込む要領で最後。


「ふー」


ゴブリンの首から上が勢いで飛ばされながら光の粒子になって消えていく。 ノーダメージで終われたので少し安心した。 この程度の相手なら剣技なしでも威力は足りたけど、今後を考えると少し不安。 やっぱり小回りの利く片手剣にすべきだったのかも。


≪お疲れ様でした≫

≪あなたの戦闘データから、次の習得ギフト候補が生成されましたので、習得するものを一つ選択してください≫


あれ、ギフトって選べるんだ。


△ △ △

☆ 剛力の双剣士(二刀流の攻撃力アップ:大)

☆ 瞬速の双剣士(二刀流剣技の攻撃速度アップ:中、剣技デメリット軽減:中)

☆ 見切の双剣士(二刀流のクリティカル率アップ:大)

☆ 無音の双剣士(二刀流のファーストヒット威力アップ:極大)

☆ 軽業師(慣性補正を軽減:大)

▽ ▽ ▽


五つも。 剛力と見切と無音は全員一撃で仕留めたからかな。 魔法系のギフトは使ってないから当然なし。 瞬速はなんでとれるのか分からないけど剣技あまり使う予定ないしいいや。 軽業は、良くも悪くも働きそうでちょっと怖いから取らないでおこう。


さて、どれにしようかな?


◇ ◇ ◇


しばらく悩んで、『見切の双剣士』を選ぶことに。 チュートリアル曰く、クリティカルは威力が1.5倍くらいに補正されるらしいので、クリティカル型のスキルで固めていけば単純に火力上げるよりも対ボス火力が伸びるはず。 対雑魚火力なんて大した意味はないと思うし。


≪ギフトスキル:見切の双剣士 を習得しました≫

≪これにてチュートリアルは終了となります≫

≪それでは、クロス・メビウス・オンラインの世界をお楽しみください≫


やっとゲームが始められる。 周囲の光景が切り替わり、冒険が、始まる。

登場したギフトの取得条件は

剛力:敵2体以上を一撃で撃破

瞬速:敵全滅タイムが30秒以下

見切:敵1体以上を弱点(首など)を攻撃し一撃で撃破

無音:敵の攻撃動作開始前に一撃をヒットさせる

軽業:敵の攻撃をすべて回避して撃破

となっていました

この他のスキルや下位互換スキルがPSによって決められ、複数該当の場合は選ぶことができます

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