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Episode88 "圧勝と英雄"

「君は...........冥精かい?」


アテーナは冷や汗を流しつつランパスに問いかける。


「わっちかや?見れば分かろう。正真正銘前後左右何処からどう見ても冥精じゃろ。」


小馬鹿にする様にアテーナへと答えるランパス。


(有りえない.......全てのニュンペーは姿を消したと言われる絶滅神種、其れに唯の二ュンペーがこの様な強大な神気を纏う筈がない。)


「もう一度聞くよ、君は何者だい、」


ランパスはため息を吐き瀬名の腕へと引っ付く。


「物分かりの悪い奴じゃの。なぁジョン、問答は飽きた。さっさと彼奴らを殺し、旅の続きをせんかや?」


ネーレイスやアルセイドの捜索へと戻ろうと言うランパス。もちろんバルトロメウス達が此処にいなければ其の儘捜索の旅に戻っていただろう。しかし、運良く遭遇出来たのだ。そうそうほっとく訳には行かない。


「なぁ、アンタら、去ってくれないか?」


瀬名はアテーナ達に対し、申し出をする。


「まるで上から目線だね、君。いくら強い波動を感じようが僕は君を必ず倒してみせるよ。」


金髪のイケメン(ペルセウス)がアテーナの前に立ち剣を構える。


「俺たちは戦いたくない、お互いに血を流したくないだろう?」


隣では殺そう殺そうと呟くランパス。


「流すのは君達だけだ。」


しかし申し出は容易く断られるようだ。


「はぁ、とことんやる気みたいだぞ、彼奴ら。」


「ふふ、ならばこその戦じゃな。」


ランパスより授けられたレイピアを顕現させ己の肉体に最大の強化を流し込んでいく。


(油断はしない、一刀の元に切り伏せる。)


「行くぞッ!」


全速力の疾走。瀬名はペルセウスへと向かいランパスはアテーナの方へと向かった。


「来ますか.............."氷よッ"」


ペルセウスは剣を強く握りしめると剣に施されている水色の宝玉が光をあげた。そしてその瞬間に瀬名の周囲一帯が氷結と化す。しかし瀬名は跳躍で其れを避け、最大加速による一撃を振りかぶる。


「ぐっ!?」


ペルセウスは間一発の所で攻撃を受け止め剣を振り払う。


(今の一撃を受け止めるのかっ、)


瀬名は焦りを感じる。自分の持つ最大最速の攻撃を受け止められたのだ。しかし、ランパスとの繋がりが寄り濃くなるのを肉体を通じて感じる。


(........闇の力がオレに浸透していく)


そして大地を蹴り再びペルセウスへと剣を振るい続ける。ペルセウスはその攻撃を何とか流すが、それが限界であった。反撃の一手を許さない程の速度、そしてどす黒い深淵に似た覇気が圧倒するのだ。


(くっ、この者、強いっ!)


剣技は雑だ。そして何よりも誰かに師事して貰った訳ではないのは分かる。しかしペルセウスは知っている。目の前の白髪の男(瀬名)は実戦により昇華した剣技を用いている事を。


(何よりも厄介なのは、剣撃が繰り出され度に攻撃の速度、そして膂力が上がっている事だっ)


ランパスとの繋がりにより半神に近い存在になった瀬名は既に人間の力を超えている。そして数多の戦闘による経験が後押しする様に彼を強くしているのだ。しかしパスを繋げてからの戦闘が初めてであることで、十全の力を出せずにいた。


「くっ、一度距離を取らせていただきます!!」


剣を大地へと突き刺し足場を崩すペルセウス。そして後退すると剣を上空へと掲げた。


“雷よっ”


天候が暗くなりバチバチと轟音が鳴り響く。


「おいおい、ありかよ、」


瀬名は急ぎペルセウスを追撃し雷が振り注ぐ前にかたをつけようとする。しかしペルセウスは距離を必死に保ち、瀬名を近づかせないようにしていた。


“ジョンよ、詠唱を唱えよ。さすればわっちの製造した魔剣は其方に答える。”


瀬名はランパスによる詠唱を聞き取り、レイピアへと魔力と神力を回した。


“光を断ち、世界を覆え”


レイピアから莫大な闇が流れ出る。一帯の谷を闇で覆い視界が暗くなる。何も見えない闇の海。魔界。振り払おうとも何が何処にあるのかも不明だった。


(凄い事になったな、)


瀬名は唖然とした表情で周りを見る。ペルセウスはその場に倒れもがいているのだ。視界は暗い筈なのに何故か自分には鮮明に見える。上空の悪天候もペルセウスが倒れた事により元の晴天へと戻った。


「.....取り敢えずこいつの剣は厄介だ。」


瀬名は剣をペルセウスから離し、もがき苦しむ姿を静観する。


(確か相手のトラウマ延々と見させるだっけ、この空間...........ん?待てよ、)


瀬名は後ろを振りふくとバルトロメウスやレシ達もその場にうずくまりうめき声を上げているのだ。


「くっ、おい、バルトロメウス、目を覚ませ!」


ぱしんと頰を叩くと意識が戻るバルトロメウス。


「此処は.......そうだ、ジョンよ、貴様、何をした?」


瀬名の肩を掴み真剣な表情で自分を見るバルトロメウスに瀬名は苦笑をしながら此れまでの経緯を手短に説明した。もちろん、レシ達の意識を起こしながらである。


「それでは貴様は冥精と繋がっていると言うのだな。」


「そう言う事になる。あぁ、それと説明し忘れたんだけど、此処にくるまでになんか弓を使うおっさんが襲って来たんだけどさ、「真か!」


バルトロメウスは食い入る様に身を乗り出す。


「バルトロメウス..........うるさい」


目を擦りながら文句を言うレシ。


「それであの男は何をしたのかしら?もちろんヒュドラの毒の確保でしょうけど、貴方達を見逃す訳がないわ。」


リディアは傷を負った身体を無理やり起こし自分の元へとやってくる。


「ランパスが殺した。」


「..........ランパス?」


「あぁ、俺の相棒であり命の恩人だ。」


「其れを言うのであれば私ではなくて?」


「お前は俺を殺そうとしてから治しただろうが!」


「ふふ、久しぶりね。」


すごい汗を流しながらもにこやかに笑うリディア。このコント見たいなやりとりが彼女は気に入っているのだろう。


「あぁ、久しぶりだな。腕、大丈夫か?」


アルセイセイドやネーレイスが入れば直ぐに再生をしてあげられるのだが、ランパスには精神汚染や概念的な権能しか持ち合わせていない。


「えぇ、今はまだ死んでいないわ。」


血は止めたのだろう。しかし、傷口は痛々しくリディアの顔色もあまり優れてはいなかった。其れに翼が生えている人はかなりの重症だ。


"ランパス、今、何処にいる?"


直ぐにでも治療の為に移動がしたい。それにはランパスの協力が必要不可欠。


"すまぬな、ジョン、今は取り込み中かや。"


しかしランパスは余裕がないと言った声色で返答が返された。


(..........ランパス?)



しかし声色とは逆に現場では余裕の表情を見せていた。


「其方がまさかオリュンポスの一神、アテーナとはな。」


アテーナは口から血を吐き出す。腕にはアイギスが装備されており、瀬名の放った闇を一部だが払ったのだ。


「ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ合わせるアイギス、だが、その程度の玩具でわっちらを止められようと思うなよ、小娘。」


ギガントマキアーを制したアテーナへ対し挑発をしながら頰を吊り上げ笑う。


「君の力は異常だ、何をしたんだい?」


槍と防具が徐々に顕現され装備されていくアテーナ。しかし其れを止めるでもなく唯笑って見るランパスはアテーナの足を見た。


「何処を、見て.........」


右足が消失しているのだ。アテーナは身体を前に倒し顔面を強打する。


(何が起きてっ.......)


アテーナの顎を引き唇を動かす。


「終わりに「待って!」


だが瀬名は其れを止め、アテーナを庇うのだ。ランパスはムッとした表情で瀬名を睨みつける。


「此処で殺してしまったら、こいつらの目的が分からないだろう?」


もっとも止めてくれと自分に頼んだのはバルトロメウス達だが。


(別に俺的には殺してくれても構わないけど、一応、彼奴らは俺の仲間だからさ、)


お願いと念話で頼むとランパスは唇を前へと突き出した。


「接吻をしてくれと言うのであれば」ちゅ


唇を優しくつけ抱きしめる。ランパスは心底嬉しそうに抱き返した。


(何かプレイボーイみたいでやだな、)


(プレイボーイじゃろ?)


(人の思考を覗かないでください。其れに俺は童貞だ)


(直ぐになくなる。)


(...........)


(わっちが貰い受けるからのぉ)


(何も言ってないのですが!?)


思考内で話し合う二人。アテーナからすれば二人は見つめ合っている様にしか見えなかった。


「君も半神なのかい?」


「俺のことか?」


瀬名は振り向き倒れるアテーナへと顔を近づける。


「君........あまり僕に近づかないでくれるかな//」


頰を染め顔を伏せるアテーナ。


「君は神を惹きつける色香と言うのか、魅惑が凄いんだ。頼むからあっちに行ってくれ。」


そう言えば以前、キュベレーもそんな事を言っていたな。


「ジョン、浮気は許さない、ダメ、絶対。」


ややカタコト気味に肉を摘んでくるランパスに苦笑が出る。


「さて、バルトロメウス達が君の側近のペルセウスって人を連れてくるから自白の用意をして置くんだな。」


「..............うん//」


目を逸らし湯気が頭が出るアテーナ。ランパスは自分をジト目で見てくるが、こいつが勝手に魅惑だか色香にはまっているだけだろう。


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