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Episode83 "ピロクテーテース"

「吾輩を見ている者がいるな?姿を現したら如何なんだ。」


ピロクテーテースが声を大きくしながら監視塔へと身体を向ける。


「弓兵である吾輩から姿を隠し通せると思うな。」


巨大な弓を構え、監視塔へと一矢放つ為に部下達を下がらせる。


「蒼穹の弓よ、我が魔力を吸い敵を貫かん。」


指を離すと人をも越える長さの大矢が監視塔目指し放たれた。大矢は数秒も経たずに着弾し、監視塔を破壊する。


「随分なご挨拶だな、ピロクテーテース?」


セレナは突如としてピロクテーテースの前へと現れる。そしてそれに続くようにバルトロメウス達も廃墟と化した建物群の中から姿を現し始めた。


「...........貴公達であったか。それにカライスもいるな、くく。」


弓を下ろしセレナ達へと向き直るピロクテーテース。


「何故、貴方が此処にいる。それに何故、逃げる住人達を殺したのですか。」


ピロクテーテースは鼻を鳴らしカライスの問に答える。


「我が友ヘーラクレースの頼みだ。住人達を殺す事に何も思わない訳がなかろう。.....だが友の言葉を信じるのも吾輩の努め。意味もなくこの様な事を指示をする筈もなし。多方、オリュンポスの神々から命が出たのだろうさ。」


リディアはセレナの隣へと立つと剣を抜きピロクテーテースへと向ける。


「罪も無き人を殺していい理由にはならないわ。」


「オリュンポスに組する以上、此れ以上の醜態を世に広められる訳にはいかんのだ。だからこそッ!」


「うぶッ!?」


少年の心臓が見えぬ何かに貫かれその場へと倒れる。


「オリュンポス神同士の戦争を見られたからには殺さなければならない。」


リディアは怒りで駆け出しそうになるが、セレナがリディアの肩を掴み首を横に振った。


「よせ、リディア。お主ではこの者には勝てぬ。」


くっと苦い顔をすると剣を鞘へと戻しそっぽを向くリディア。


「アンタはそれだけの理由で北の大地へと踏み入れたのか?」


「いや、貴公らと同じく北の最果てよ。女神アテーナが怪しげな行動に出ているとの報告がオリュンポスから下ったそうだ。早急にヒュドラの毒を回収しなければオリュンポス同士の戦争が始まる。いや、既に始まっているのだったな。」


ピロクテーテースは背を向ける。


「女神アレーナ、そして勇者ペルセウスはオリュンポス神が一人、アレースを殺害した。」


その言葉を残すとピロクテーテースは部下たちを引き連れ歩き去ってしまった。


「.......巨大な戦争が人同士で起きている今、神同士がぶつかれば更なる犠牲が増える、か。」


バルトロメウスが空を見上げそう言葉に出す。そして眼を瞑り団員達へと向き直ると指示を送った。


「西国への被害を最小に抑えるには奴らかオレ達のどちらかがアテーナ神よりも早く回収しなければならない、急ぐぞ。」


バルトロメウス達は強化を身体へと掛け北へと目指し走り出すのだった。





「ランパス、この道で本当にあってるのか?」


瀬名はうなだれながらランパスの後を追う。気分は悪く、足は限界に近い。森を進んだ先は樹海であり死の匂いがプンプンと漂っているのだ。


「ジョンよ、頑張りんす。それでも男児かや?それともわっちに運ばれたいが為にそう申しておるのか?可愛い奴め。」


だがランパスは瀬名とは真逆で生き生きとしていた。彼女が冥府神の一人なのか、それとも別の理由なのかは分からないがランパスは瀬名が行きたいと言った北の最果てへと目指し歩いてくれていた。


「うわっ!?何するんだよ!?」


「姫様を守るのは王子様のお努めだよー?も〜、最初からこうすれば良かったねぇー!」


いきなり自分をお姫様だっこするランパスに瀬名は暴れる。だが自分を掴む腕力が強すぎて降りる事が出来ない。瀬名は諦めた様に腕をランパスの首へと回す事にする。するとランパスはその行動に気分が高揚したのかスキップで薄暗い樹海を歩くのだった。


〝グオオオオオオオォォォォォォ”


暫くランパスによるスキップで移動していると樹海の中を獣の叫びの様な物が木霊するのが聞こえて来る。首を吊る屍が数多に見受けられる為、余計に恐怖を感じる。不安を感じた瀬名はランパスの顔を覗き込む。だがランパスは周りには興味もくれず頬を緩ませ現状況を楽しんでいた。しかも鼻歌も歌いながら。


「わっちジョン〜♫森の中〜♫お散歩〜♫楽しい〜♫楽しい〜♫楽しいなぁ〜♫」


音程がズレている気はするが可愛いな、おい!


「「グルルガッ!!」」


すると突然、四方から自分達へと襲い掛かるように何者かが飛び掛かってきた。瀬名はすぐさま全身へと強化を掛け戦闘体勢に入るがランパスの拘束から抜け出せない。


「なッ!?ランパス!!」


だがランパスは気にせず笑顔を見せながら前進する。瀬名はすぐさまランパスを守る為に抱きつきなるべく襲撃者の攻撃が自分へと向くようにするが.....


「くくく、あははははっは♡もぅ♡どうしたと言うのだ、ジョン♡愛おしい行動をしおって♡」


自分を愛出るように抱きしめ返すランパス。瀬名は敵の攻撃を覚悟する様に眼を瞑るが痛みを感じない。


「ちゅ♡ふふふ、わっちと接吻をしたかったかや?」


痛みではなく唇へと柔らかい感触が伝わる。そして眼を開けると襲いかかって来たであろう敵の姿がない。


「へ?あれ、敵は?」


瀬名は疑問の表情を浮かべる。ランパスはその表情を見ると愛おしく感じ頬を瀬名の頬へと擦り付ける。瀬名は照れながら距離を取ろうとするが力が強く離れられない。


〝わっちらの営みを邪魔するな。わっちを冥府に連なる女神と知っての狼藉ならばこの樹海其の物を深淵へと屠るぞ”


ランパスは権能を使い樹海其の物へと語り掛ける。その声は瀬名には聞こえず、表情にも出ていなかった。


「あれ、獣とかゾンビみたいな声が止まった......」


瀬名は眉間に皺を寄せ怪訝な表情を浮かべる。ランパスは笑みを浮かべスキップを再開するのだった。


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