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Episode4 "運命"

「オレにBLの気はない」


上に乗しかかる男は意味が分らない言葉を使う。BLと言う言葉の真意、意味を自分の知識から探し出すが思い付かず考えても無駄かと思い横に転がる自槍へと手を伸ばす。


「お前は何者だ、東国の追手か?」


「東国?」


男は見た事もない軍服を着ているが西国の物ではない。何も無い空間から飛び出して来たのは空間転移の類なのは確かなのだろうが目的が不明な以上、警戒しなければならない。


「東国が国の名前なのか?」


「東国を知らぬ者など......貴様、」


男の表情は何を言っているんだこいつは?と馬鹿にした表情で自分を見て来た。


「ふざけているのか?」


苛つきを感じ握っていた槍の矛先を男の首筋へと瞬時に当てる。


「もう一度問う、何者だ?答えないのであらばその首を貰い受ける。」


握る槍に力が入り男の首筋から血が流れる。


「お、オレは日本と言う国の出身だ!オレも何でこんな場所に居るのか本当に知らないんだ!」


瀬名は必死に嘘偽りのない真実を訴える。一歩でも間違えた事を言えば確実に首を切り裂かれるのはバルトロメウスの瞳を見れば素人である瀬名にも分かる程に殺伐とした空気が流れていたのだ。


「頼むこの槍を退けてくれ、首が痛いんだ。」


「嘘を言っているわけでは無いようだが、それよりも先に」ドン! 


「うっ!?」


バルトロメウスは右足を使い瀬名の後頭部を強く蹴り上げる。そして瀬名の頭が前に倒れ近づいたと同時に槍を握っている拳で頬を殴りつける。


ズシャアアアアアアァ バシャン!!


瀬名の身体は左方面の草花を削り湖へと身体を沈めた。


「ぐがあああああああ!!!!殺す気かぁ!!」


右頬を赤く腫らせ湖から勢いよく顔を出す瀬名。


「まずはオレの上からどいてもらおうか、オレに男色の趣味はないからな。」


「オレも無いわ!!」


そもそも退いてほしいなら口で言えよと思う瀬名であった。


「クッソ、服がびしょ濡れだよ!」


瀬名は濡れた髪を靡かせ愚痴を言う。町娘ならその綺麗な容姿を見ただけで恋慕するだろう。


(死んだと思ったら意味わかんない空間に飛ばされて影に飲まれて出て来たらこのキチガイコスプレ野郎に殴られるわで最悪だ!)


瀬名は上着を脱ぎ水を絞りとり槍を持つ男の方へと歩いて行く。バルトロメウスはと言うと離れていた馬を回収し衝突により散っていた物資を整理していた。


「おいアンタ、」


取り敢えず現状確認の為この槍男へと話しをしなければ進めれない。


「来たか。」


「オレは東国って国の出身ではないことを先に言っておく。」


(確かに日本は東に位置するけど固有名詞が東国って訳ではないからなぁ......それに、ボク、トウゴク出身だお!何て言ったらさっきの槍で殺される可能性もある訳だし......)


「すまないが、此処がどこなのかわからないんだ。一応聞くけど東国ってのはアジアのことを指してそう呼んでいるのか?」


「アジア....聞いたこのない名称だ。大陸は四国に分かれているのはわかるだろ?」


「?」


疑問の表情を浮かべる瀬名を見てバルトロメウスは驚いた表情を取る。


「日本などと言う国をオレは聞いた事は無いがそれは北か南の辺境に位置する小国の名なのかもな。」


瀬名は思考をフル回転させその北や南と呼ばれる国についつ該当するワードを知識から検索すると一つの答えが導きだされた。


「.........そうか、此処は異世界なのか。」


そう、可能性が一番高いのが異世界なのだ。だが確証がまだ足りない。


「すまない、北や南と言う国には多分だが該当しないと思う。」


異世界物は大概自分の出自を隠すと言うよりも主人公がバカだから説明をしきれない点が多い。だが瀬名はそこらの凡作共とは違いルールを破るのだ。


「どうやらオレはお前らで言う異世界から来たようだ。」


大概の場合、東国の辺境から来たとか言うBS(ブルシット)な言い訳をすると異世界人は信じるのが異世界モノの鉄板だが先ほどの話しを聞く限りだと目の前に立つ男はその国と敵対する国の出身なのだ。そして先ほどの発言からこの男は嘘を見分ける何かしらの方法を持っている。即ち嘘を吐けば自身の死に直結すると仮定する。


「異世界だと......?ふ、世迷言を。」


バルトロメウスは鼻で笑うがそのリアクションは瀬名にとっては予測済みだった。


「本当の事だ、これを見ろ。」


自分のポケッ卜からスマートフォンを取り出し自慢する様に見せ付ける。


(ふぅ、良かったぁ。防水カバーの性能がこんな場所で試されるなんて、)


「何だこれは?」


バルトロメウスは警戒度を高める。


「最初に聞くがこの世界では魔法は使えるのか?」


「魔術のことか?あぁ、全ての民が扱える筈だ。」


「逆にオレの世界では魔術は使えないんだ。だから生活では困る。なら化学文明を伸ばせばいいと考えた人類はいろいろな発明をするんだ。そしてこれが文明の一つの叡智と言っても過言ではない携帯って言う便利な道具なんだ。」


なるべく慎重に言葉を選び説明をする瀬名に未だ疑いの視線を向けるバルトロメウス。


「仮に貴様の戯言が真実だとしてもオレは」パシャ


疑うのなら使うまでだとカメラの機能を使うとバルトロメウスの姿は瀬名の前から消える。そしてシャキンと鉄の揺れる音が瀬名の顔の真横から聞こえて来た。槍の刀身が顔すれすれに置かれていたのだ。


「無駄な真似をするな。貴様はその‘機創’を使い攻撃を仕掛けようとした。粛清させて貰うぞ東国の兵よ!」


「まてまて待て待てぇ!画面を見てくれ!!」


スマホのスクリーンを背後にいる槍の男に対し見せる。


「オレの姿が!?貴様、まさか呪術を!」


(嘘だろ!?こいつ!!)


瀬名は焦る。バルトロメウスの言い分も確かに一理はある。いきなり未知数の物を目の前で見せられれば誰だって驚くと。


「違う、これは投写機だ!その場の景色をこの機械を使い保存する。これは呪術なんて危険な物には使わない!鑑賞のみに使うものだ!!疑うならアンタがこれを持てばいい!!」


こうするしか方法は浮かばなかった。これで駄目なら瀬名はお終いだろうと考える。


「む、そうか。ならその異形の機創をよこせ。」


「っ、わかった。」


携帯をバルトロメウスに渡すとバルトロメウスは受け取った。


「ふん」ガシャ


「あ、ああ、あ、アンタ何て事してくれんだよおおおおお!!!」


バルトロメウスは受け取った携帯を素手でカチ割ったのだ。


「お前がこの機創を使い余計な真似をされたのではたまらんからな。」


「いやいやいや、ふざけんな!弁償しろこの片目隠し野郎!!」


瀬名は胸ぐらを掴み涙目になりながら訴える。


(何だよこれぇ、普通、美少女に召喚されるとか自衛隊的な介入がデフォだろ?なのに飛ばされ方は雑だわ男にぶつかり携帯破壊されるわで不幸続きなんですけど、)


「離せ、オレにそっちの趣味は無い。」


済ました顔で瀬名にバルトロメウスは言う。


「何時まで引っ張ってんだよその話!」


キレぎみにツッコミを入れる瀬名。


(命を救ってくれた事には感謝するが神様、もっとマシな奴の処に飛ばしてもらいたかったよ、)


「もういい、弁償は良いから町までその馬で送ってくれよ。」


こう言う場合はこの男から遠ざかり情報収集をした上でこれからの人生について計画して行かなければならない。その為には何処でも良いから町に送って貰わなければ話が進まないのだ。


「すまないが、それは出来ない。」


携帯を破壊され一張羅までもがびしょ濡れ、そして頰には殴りで生じた傷。これらの事が起きて謝罪は無し。唯一の願いすらもこの槍男は蹴った。


「おい、マジでふざけんなよ!アンタに持ち物破壊されて服もびしょ濡れ?分かるかオレの今の気持ちが?」


「知らん。」


このクソ片目隠し野郎ぅ.....久しぶりにキレち待ったぜ、屋上に行こうか?とは言えずその場に立ち尽くすしかない瀬名。


「じゃあ、せめて町の方角を教え「知らん。」


うん、流石の僕もそろそろ我慢の限界に達しそうだよ。もう一刻も早くこいつから離れたい。てかそうしよう。


「一人で行くよ、馬鹿野郎!」


そう言い残し湖の先を目指し歩こうとすると無数の人影が草原のかなり先の方から姿を現した。


(これは好都合だ。あの人影の方に向かって助けを求めよう!)


「おーーーーい!おーーーーい!!待ってくれぇーーーーー!!」


あちらに向かいながら声を出し此方の存在をアピールする。バルトロメウスは瀬名からそこまで離れていない為、その声に気づき冷や汗を流した。


「馬鹿が、何をしている!!」


バルトロメウスは叫びながら数十メートル先にいる瀬名に対し止めるよう呼びかけるが。


「オレは此処っ!?」ぶシュッ


瀬名の右肩に矢が着弾する。着弾した位置から血を流し一瞬麻痺していた痛覚が一気に押し寄せる。


(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)


「んだよ......これ。」


肩に刺さる矢を見て一瞬立ち眩みがするがそれを抑え片膝をつく。甲冑を着込んだ兵達が此方へと迫ってくる。


(立って逃げないとっ....)


「っ!?動けねぇ!」


(ふざけんなよ!ビビって足が言うこと聞かねぇとか何処の駆け出し主人公だよ!)


数メートル先と言う距離に兵達は得物を握りしめ近づいて来る。


(動けよっ!足ぃ!!)


上を見上げると兵達は眼前にいた。瀬名は悔しみの表情を浮かべると目を閉じ死の運命を受け入れた。


ズシヤアアアアアアアン


だがいつまでたっても感じない痛みに瀬名は目を開けるとバルトロメウスが馬に乗り数名の兵士達を轢いていたのだ。


「能無しかお前は、とりあえず捕まれ!」


バルトロメウスは手を伸ばしそれに捕まると強靱な膂力により後部へと乗せられた。






「おーーーーい!おーーーーい!!待ってくれぇーーーーー!!」


前方から何者かの声が聞こえる。傷つき疲労した兵達に指示を出し遠視の魔術を使わせ確認を取る。


「前方に見慣れぬ軍服をっ、その後部には西国の上着を羽織る男もいる様です!!」


バルトロメウスの存在に気づいた兵は隊長に報告する。


「くっ、我らの撤退を予測し待ち伏せを行っていたか!」


「威嚇の為、あの無害そうな男へ矢を放て!伏兵がいるやもしれぬ、警戒も怠るな!」


「「はっ!!」」


前線の撤退から一睡もしていない兵達は隊長の指示に気合を入れ直し大きく返事を返す。そして矢は見事に着弾し数名の兵達へと指示を出した。


「そこの五名の者達は隊列を組み突貫せよ!!」


「「はっ!!」」


そして駆け出していった兵達は眼前の男の首を切断しようとした刹那もう一人の西国の羽織を纏う男により阻止された。


「どうやら奴らは見た通り2名だけのようだ。情報を西国に渡らぬよう絶対に奴らを逃すな!動ける者全員で殺しにかかれ!!」


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!






すごい事になっております。いやぁ最初はこの片目が無双するのかなと淡い期待を感じていたのですが数十メートル走った処で敵兵達に囲まれてしまいました。まさかねぇ相手方が槍を投擲してくるとは思わなかった。一本じゃなくて数十本ね。それがオレ達の乗る馬に当たっちゃって大惨事な訳ですよ。


「ぐぶっ.......やばい.....」


意識が遠のいてくる。可笑しいなぁ普通主人公補正で槍とか矢って当たんない物じゃあ無いんですかねぇ。


「おい、意識を持て!」


槍の男が必死にオレを庇いながら敵兵どもと斬り合ってる。あ、敵兵こっちにも来た。


「させるか!」


後ろから心臓を一突き。敵兵が地面に倒れる。自分はと言うと馬さんを背もたれに倒れ掛かっている。後背筋辺りには槍が突き刺さった状態で何とか根本以外はへし折った。朝日が上がったばかりなので周りは淡いオレンジ色で照らされている。血が飛び散っても景色と同化するので正直な話、幻想的に見えてしまった。


「くっ、数が多すぎる!」


バルトロメウスは思考していた。この名も知らぬ異界人を置き去りすれば逃走は可能だが連れて行かれれば逆に国に害を為す知識を与えてしまうのでは無いのかと。先ほどの'機創'のような物を仮に他にも所持していた場合は特に自軍の不利に繋がるかもしれないと考える。


(使うべきか.........いや、ダメだ。)


前後左右から同時に東兵達は斬りかかってくる。バルトロメウは小声で小さく詠唱を唱え宙へと逆さに浮きそれを避ける。


「小癪なっ」


逆さに浮いたと同時にそのまま上体を回転させ四つの首を飛ばした。


「矢を飛ばせ!」


敵の指揮官が命令を下すとバルトロメウスと瀬名の方へと矢が飛んでいく。


風よ(アネモス)!」


詠唱を省略した事により威力は半減するが矢の軌道をずらすことくらいは出来る。自身に迫る矢を無力化した後、足に風を纏い超速の速度で瀬名を矢から守る。


「おい、無事か...」ザスッ


矢が背にあたり痛みが顔に出るバルトロメウス。


「お前........」


瀬名は自分を庇い傷を負ったバルトロメウスへと心配の表情を見せる。そしてバルトロメウスは前へと向き直り背中で語った。


「生きるぞ......だから死ぬな。」


瀬名はそのバルトロメウスの姿を見て血を吐き出しながら意味深な笑みを浮かべて返答を返す。


「.........お前もな」


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