Episode77 "ジョンとランパス"
夢を見た
闇の中で孤独に涙を流す少女
流す涙は闇と共に消え鳴き声でさえも闇へと消えて行く
暗く何もないその世界
拷問以上に苦しく永き時だろう
永き時を闇の中でただじっと座り待ち続けた
この世界が滅びれば自ずとこの闇も晴れ自由の身になるだろうと
言うのは簡単だが、孤独を一人で過ごすのは.....とても寂しく冷たいものだ
「こんなところで何をしているの?」
闇の中に人差しの光が現れ森精の女の子は闇にいる女の子へと手を差し伸べた
「.........」
瀬名は眼を覚ます。自分の瞳からは嬉しさから涙が溢れていた。
(あの子は......救われたんだ)
すると自分を見下ろす白銀の髪をした少女がにっこりと微笑み自分の頭を撫でてくれた。母性を感じさせるその行為に自分は再び瞼が降りそうになるが、
「ふぁ!?まって、オレは確かオデュセウスにっ!」
その場を立ち上がり辺りを見渡すと綺麗な泉と森林が広がる場所にいた。
「ふふ、まっこと面白き男児じゃな。何、感情豊かなのは良き事じゃ。」
白銀の少女は立ち上がり泉を眺める。
(この子......何処かで)
何処かで見たことがある。それも最近に。そう感じた。
(........もしかして...)
あの夢の少女....
「何やらわっちの記憶の断片を見たようじゃな。まぁしょうがなき事じゃ。何せわっちらは運命共同体、どちらか死ねばもう片方も死ぬ。そう言う盟約を結んだ。記憶が流れるのもしょうがなき事じゃ。」
瀬名は眼を見開き彼女を見る。そして近づき彼女の肩を掴み叫ぶ。
「何でそんな事をしたんだ!」
「勿論、ジョン、ソチの命を救う為でありんす。」
「違う!オレが言いたいのは何で見ず知らずの俺なんかの事を救ったんだって言ってるんだ!」
冥精の瞳をしっかりと捉え真意を確認しようとする瀬名。ランパスは疑問めいた表情で瀬名を見ていた。
「何を怒る、ジョン?命は救われたではないか?」
「確かに命を救ってくれた事には感謝する......でも、俺なんかの為に自分の命を天秤に乗せる事はして欲しくはなかった。君は女の子で、未来がある...幸せな家庭を持つとか..あぁ!分かんないけど!」
「くく、傲慢じゃな。人が神を女扱いするとはとんだ無礼者じゃ。じゃが、わっちの心配をしてくれている事は理解出来る。ならばジョン、わっちのこれからの未来を輝かせて見よ!」
ランパスは瀬名の頬へと手を当て静かに口づけをする。
「.....何か、それって告白みたいだな。」
「告白じゃ。わっちを幸せにしろと言うておるんじゃ!」
瀬名は笑いランパスも笑う。そして今一度、ランパスが嬉しそうに瀬名に向け口づけをした。
(あぁ幸せじゃあ......ジョンと触れ合うだけで全てが満たされて行くこの感触....わっちの孤独を埋めてくれる。)
ランパスは嬉しさの余りぴょんぴょんとその場で跳ねガッツポーズをした。瀬名はそんな彼女を可愛いなと内心感じた。
「ふふ、アルセイドとネーレイスには悪いけどージョンはぁ貰っちゃうねぇー!」
(恩をアダで返す形になってしまった事は詫びよう、アルセイド....じゃが、ジョンは何処か、わっちと同じ.......)
瀬名は一人ブツブツと動き回るランパスを見ながら此処が塔の中の空間なのかを考えていた。
「.....そう言えば、君の事は何て呼べばいいんだ?」
「ランパスじゃ!わっちの事はランパスでも愛しの娘でも好きに呼ぶがいい!」
にこりと笑うと手を広げもう一度、ハグをしようと言う動作をとる。瀬名は優しく笑いながら彼女へとハグをした。
何故だか分からないが彼女からは親近感を覚えていた。あの夢の話が心にずっと引っかかる。そしてあの時、彼女が感じたあの孤独は自分にも当てはまる感情なのだ。それを目の前にいるランパスは今も尚抱えている事は確かだろう。
(少しでも彼女の不安を取り除けるのなら....オレは何だってする。)
命を救われたからと言う理由も勿論あるがこの子の心は泣いている。もし仮に自分が彼女の支えに慣れるのならば命を救われた償いとして彼女の側にいようと誓おう。
「どうした、わっちの顔をそんなに見つめて.......照れるでありんす//」
頬を染めるランパス。彼女に釣られ自分の耳も紅くなるのを感じる。
「そ、そういえば、此処は新しい階層なの?」
「階層?此処は塔の外、そしてあの塔はご覧の通りじゃ。」
瀬名はランパスが指した方向へと走り森林を抜けて行くと足場がない崖へと直面した。そして視線を眼下へと移すと塔は無残な姿となり、瓦礫の山と化していた。
「いったいどうなって.....それにアルセイドとネーレイスちゃんは!?」
ランパスの元へと戻ろうと後ろを振りむくとランパスが近距離にいた。瀬名は驚き足を踏み外し崖の下へと落ちようとした所、ランパスにより救われる。
「まったく、とんだ死にたがりじゃな、ジョンは。」
くく、と笑うとランパスは瀬名を自身の胸へと押し寄せ頭を撫でる。
「ランパス.....アルセイドとネーレイスちゃんは」
「なに、あ奴らは死なんよ。多方、塔の崩壊の影響で彼方へと転移をされたか瓦礫の下に埋まってるだけじゃ。」
瀬名はランパスから身体を離し、瓦礫のある場所へと向かおうとするが
「ジョン、行ってはならぬ。」
ランパスにより止められる。
「ランパスが瓦礫に埋まってるって言っただろ!なら、早く助けないと!」
途端、ランパスはその場で馬鹿見たいに笑い始めた。
「あの程度の瓦礫の山であの二人が死ぬわけなかろ。ふふ、それに仮に埋もれていたとしても即座にあの二人ならば瓦礫全てを破壊して出てくるじゃろ?」
「た、確かに.....」
瀬名は顎に手を当て二人の心配をする。
「ネーレイスの方は.....かなり離れた南の方にいるようじゃな?じゃが、アルセイドの気配がない....と言う事は冥府に残っていると言う事じゃな。」
ランパスの周りに松明が三っつ程ぷかぷかと浮かび炎が燃え上がっていた。
「ジョン、そちには行くべき場所があるのだろう?ならば、自ずとあの者らも着いてくる。心配をする必要はありんせん。」
瀬名の腕へとランパスはひっつきそう言う。
(確かに....あの二人ならオレの所に戻って来そうではある....此処はランパスの言う通り目的地である北を目指した方が良さそうだ。)
瀬名は瓦礫を一瞥した後、横にひっつくランパスへと視線を合わる。
「ランパス、おれは此れから北を目指したいんだが、着いて来てくれるか?」
ランパスは静かに微笑み頷くと二人は北を目指し歩き始めた。




