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Episode76 "塔の崩壊"

「はぁ.....はぁ.....」


ネストールは息を切らせながらも瀬名とオデュセウス達が戦闘を行なっていた骸の丘へと辿りつく。


(さっきの爆炎の魔力はオデュセウスの物だ......クソ、誰もいやがりやしねぇ!)


スフィンクスの階層から冥府へと辿り着き、一人休む間もなく戦い続け何とか此処まで来れた。


「くそ、あの嬢ちゃん達、簡単に裏切りやがって.....っても裏切りよりも唯、オレが一緒に行動してただけだから、あの嬢ちゃん達に罪はねぇけどな......はは」


苦笑いをしつつ数多の屍が杭に刺され晒されている丘の頂上へと足を進めて行く。魔力の残滓を幾つか感じるが頂上からは更に濃く深い闇を感じた。


(この気配は間違いなく、あの嬢ちゃん達だ。流石に此処から先は一人で死ぬ。)


満身創痍と言ってもいい状態のネストールは大剣を何とか引きずりながらも瀬名のおこぼれを貰おうと身体に鞭を入れていた。


「ふむ、どうやらまた一人、人の来訪者のようじゃ。」


ネストールは朦朧とする視線を上げると自分はどうやら頂上に近い位置まで来ていた事を知る。そして深く濃い闇の正体が目の前へと存在する女性の物だと理解する。


「瀬名、セナ、ジョン、我が半身、どうする?殺すかや?......おぉ、そうであったな....そなたはまだ目が覚めてはおらなんだ。ふふ、わっちもつい、舞い上がってしまったでありんす。」


骸の丘の頂上にて存在する王座へと腰掛け、眠る瀬名を自身の膝に乗せ赤子の様に撫でる冥精。


(嬢ちゃん達じゃぁ......ない?それにあれは.......セナか?)


ネストールは大剣を握り締め構える。


「あんた、その男に何をしている?」


瀬名の外面は焼きただれ重症なのは確認出来る。ネストールは警戒の視線を冥精へとそう問う。


「はて?この男とはセナの事かや?」


松明がポンっと三っつ程出現すると冥精の座る王座をくるくると空中で回転し始めた。ネストールは危険を感じ、距離をすかさず取る。


「ふふ、怖がっているのか。人間は実に警戒深いのぉ...........まぁ、よい、貴様はセナの敵か味方かや?」


つまらなそうに欠伸をしながらネストールへと問う冥精ランパス。


「オレは..........瀬名の味方だ」


大剣を地へと下ろし両手を挙げる。満身創痍の自分では手も足も出ず殺される未来しか見えないと本能が感じる。いや、例え十全であろうと目の前にいる得体の知れない生き物はお嬢ちゃん達と同等に近い力を有しているに違いない。


「お前からは他者を利用しようとする、人間特有の臭さと言う物が感じられる。」


眼を細めネストールを裁定するように言うランパス。


「何を言ッ!?」ザシュ


空中でゆっくりと回っていた筈の松明の一つが細い紅蓮色の槍へと姿を変えネストールの左太腿を貫く。


「跪け、人間が。」


冷めた視線を向けつつ笑うランパス。ネストールは痛みの表情を見せながらも歴戦の勇者なのか、痛みの声を押し込めランパスを睨みつける。


「オレが.....はぁ......利用する.....だと?」


「あぁ、その眼、人の戦で時折見る将特有の戦略眼でありんす。だが、分からんな、何故、この男を利用しようとする?容姿か?それとも頭脳か?頭は阿呆ではないが、人を導く者としての才はこの男にはないぞ?」


「導く者としての才がなくても......惹きつける者としての才は他を抜いてんのは見てわかんだろ..」


足を抑えながら大剣を杖代わりに立ち上がる。


「あぁ、確かにこの者に着いて行きたいと申す者は必ずこの先に出てくるであろう。だが、それを先導するのはお前ではない。わっちと盟約を交わしたこの男を貴様の好きに動かす道理はなかろう。この先、セナに降りかかる危険はわっちが取り除く。殺されたくなくばとくと失せよ、人間。」


ネストールはランパスの意図を理解する。


(この女も.....あの嬢ちゃん達と同じか)


ネストールはくすりと小さく笑う。


「あぁ、だが、セナは一応、短時間ではあるが共に戦かった、同士だ。せめてそいつが起きた時にオレの台詞をっ.....」


ネストールが話を続けようとした瞬間、ネストールの身体からは光の粒子が舞い始めた。それはランパス、瀬名同様にだ。


「いったい何が....」


光は更に輝きを増し視界が白くなると自身は雪面広がる古風な街の中心に戻っていた。


「オレは、何で、此処に?」


住人達はネストールの存在に気づき皆、近づいてくる。


「ネストール様!ご無事でっ!」


涙ぐむ住民達をよそにネストールは思考していた。


(オレは、冥府に居た筈.....っ!?)


思考するが答えが得られず空を見上げると、何と空が崩壊しているのが見えるのだ。このままでは住民もろとも街が押しつぶされる。


(それを意味するのは、塔の崩壊っ)


ネストールはすぐさま、女将の元へと目指そうとするが遅い。既に空は堕ち街を包み込んだ。




「ふむ、わっちも何故、このような場所にいるかは不明じゃが、地上に戻る事は出来たかや?」


ランパスは瀬名をお姫様だっこをしながらもスフィンクスが開いたであろう冥府の門の前へと立っていた。


「だが、この世界は......壊れつつある、か。」


塔の崩壊をスフィンクスの塔の最上から確認するとランパスは自身の周りに円形(黒色)の結界を張り塔の崩壊の衝撃に備える。


「まぁ、何とかなるじゃろ」


その言葉を最後に空はスフィンクスの塔を破壊しながら堕ちた。


次話から新章ですよ!

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