Episode74 "冥精との契約"
「まったく、わっちの眠りを妨げようて、一体何処の誰やと眼を開ければアルセイドの匂いのつく屍が倒れておるではないかや。」
オデュッセウスの炎が丘の頂上に聳え立つ王座をも包み込んだ筈なのだが座は傷一つ付かづ、その座へと座る乙女にも何の影響も施していなかった。
「どれ........ほう、まだ微かに灯しびを残すか。ふふん、存外しぶといねーこの人もー!」
王座を立ち、炎に焼ける屍寸前の男を前に表情をころころと変えながらちょんちょんと触る乙女。
「ヒュ.............」
すると焼死体同然の男は僅かな嗚咽音を出すと既に見えぬであろう眼で乙女を捉えた。彼の前には一振りのレイピアが大地に突き刺さり乙女が引き抜こうとするが触れた瞬間に灰となり空気へと消えていった。
(この剣がギリギリの所で命を繋ぎとめたのかなぁ〜?)
そしてその残滓を感じ取り乙女は疑問の表情を取る。
「この神気は......ネーレイスかえ?」
乙女は屍同然である人の子に触れネーレイスの残滓を感じとり丘から見える遥か先の洞窟を見据える。
「あぁ、そう言う事でありんすか。しかし、わっちを迎えに来たと言う訳ではない事に寂しさを感じるのじゃが。」
倒れる身体を起き上がらせ互の額を当て、記憶を覗き込む。
「ふふ、やはり花嫁は惚れやすくていけないねー?でもでもネーレイスやアルセイドが惚れる理由も分かるけどなぁー。記憶を覗き観た感じゃあ確かに美しいけど、わっちは実物を見ない限りは落とせないぞー」
なんちゃって花魁言葉ではなく人格が変わった様に話す乙女。
「ならば、治すかや?」
焼死体同然の男をぐるぐると周りながら自問自答をする。
「えー!でも、わっちら冥精はネーレイスちゃんやアルセイドちゃんみたいに即時回復系の権能は持ってないよー。人を闇に落とす権能なら、たくさん持ってるけどねー!」
大きな赤い月を見上げくすくすと笑うと唐突に表情を改め言葉を溢す。
「いや、一つある......」
すると乙女、冥精は口を大きく広げ反論をした。
「それはナーレイスちゃんがヒューラスと取り交わした契約と同義の〝産物゛だよ!唯の人の子が耐えられる筈が無いよ!ヒュラースだって私達が住んでいた泉に永く住んでいたからこそ出来た物ッ....それにアレの契約を行えば、わっち、ランパスはこの男と永遠に...........縛られるんだよ?」
冥精ランパスはにっと笑みを浮かべ笑う。
「くく、それは僥倖。男にうつつを抜かしわっちをないがしろにしていたのじゃ。それにあ奴らもこの男を大切にする余り無理な契約の執行をしてないではないかや?ならば、今こそが好機! わっちらは今より一蓮一択となり、あやつらにあっと言わせてやるのじゃ。」
契約の内容、それはランパスと瀬名への生命のパスを繋ぐことで瀬名の命を取り留める物だ。代償として瀬名はランパスから離れられず離れようと試みたとしても先程と同じ様に焼死体同然の姿になる。そしてランパスも同様、距離が離れる程、自身の権能が停滞していく事を意味するのだ。
「でも記憶を見る限りだとわっち、アルセイドとネーレイスに........殺さるんじゃあないのかや.......」
ランパスは無言になり一度考えるとうんっと頷き瀬名の胸へと手を当てる。
「決めたんだね?」
「あぁ、此処で此奴を見殺してみよ、より一層に酷く殺されるでありんす。」
「ふふ、そうだねー」
魔力の渦が両者の心臓へと繋がり眩しい程の粒子が暗き冥府を丘から照らし出す。
「あぁ.....美味しそうな.....素材が....」
どす黒くも色気のある話方をする怪物の祖、エキドナ。
「.......効かないね、貴方、もしかして盲目なの?」
幻術の権能を即座に使いエキドナを始末しようとしたのだがエキドナは何事も無いように繭に包まる巨大な卵に触れ首を傾げる。
「うんうん、違うね。アルセイドと同じで、頭のネジがいっぱい取れちゃってるね、ふふ。」
アルセイドは妖艶な笑みを浮かべると周りに数千の光の槍が出現し一勢にエキドナへと放出される。全てが幻想、されど現実。それこそがアルセイドの誇る最強権能。
「アルセイドの権能は理性がある者にとっては避けられない。でも時折、こいつみたいに頭の中がぐちゃぐちゃで理性を持たない獣が出てくる。そう言う奴には偽りを具現化して現実を思い知らせてやるの.....ふふふ」
両腕を上げ更に天から剣を雨あられに放出する。エキドナの城は完全に崩壊し、土埃が辺りを支配した。
(なんと言う武力.....)
キュベレーは眼を見開き辺りの惨状を確認する。そして、キュベレーは冷や汗を流しながらも口元が緩んでいた。
(何としても欲しい......プリギュアの主戦力、いや、あの蛇以上のっ.......!?)
キュベレーはあの猛攻の中、既にエキドナは生きている筈がないと踏んでいたが、事実は正反対だった。土埃が腫れると強大な、城よりも巨大な何かがエキドナを包む様に守っていたのだ。
「テュポーン様ぁ......あぁ.....テュポーン様ぁ」
エキドナは幼児の様に自身の周りを包み込むように存在する体躯に触れ喜びを顔にする。辺りは深淵に支配され天空でさえも魔人の支配下と入る。骸骨の頭部に巨大な触手が肩から何万本も蠢く。仮に人がこの場にいたのなら確実に浄化をしていたどろう程の神気、瘴気がこの空洞を支配した。
「セナがいなくて良かった」
アルセイドは済ました顔でそう言うと、キュベレーを下がらせテュポーン同様に神気の一部開放をしていく。強大な本流がアルセイドを包み込み空洞其の物が森となる。そして、その森は枯れては成長し枯れては成長しを繰り返しより一層にアルセイドの異常性を体現していた。
おっかしいなぁ?何でサブの作品の方が好評なんでしょうかねぇ、、




