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Episode70 "冥府へと"

「なっ!?」


恐怖と言う寒気がエウリュアレーを襲う。だが反対にキュベレーはニンマリと笑みを浮かべていた。


「その圧ぅそなたぁ、本来の力であればぁ、オリュンポスと同等かぁ、それ以上ぇ?」


そう歓喜をした表情で問うキュベレーに対しカリュブディスはあっけらかんとした表情であくびをしながら口を再度開けた。


「まずい、石化の魔眼(オスプリオ)ッ!」


石化の魔眼を穴から覗くカリュブディスへと放つと視界に見えた全てが即座に石化をする。勿論、カリュブディスの上半身は石化しその場から動かなくなるが石化をしていない下半身がごそごそと動いていた。


「どうなって.....これはっ!?」


二人は穴から這い上がると繭から無限と出るカリュブディスの姿があった。既に数は百を越え、その場を埋め尽くす。下半身は唐突に動き出したのではなくカリュブディスの一体が食していたのだ。


「此処は危険ぇ、」


キュベレーは即座にエウリュアレーへと視線を送りこの場の離脱をこころ見るが。


「「ニガサナイ.....タベテ...イイデショ?」」


一人一人のカリュブディスの本来の姿を形どる消化器官は異物の食と言う名の排除へと移行する。


「くっ、此処で死ぬわけにはっ!」


曲剣をもうひと振り顕現させ、臨戦態勢に入るエウリュアレー。だが、キュベレーは余裕を持って前へと出る。


「この場ぁ全てぉ、破壊して外界に出るぇ。」


ニンマリと笑うと彼女を中心に数え切れぬ程の大樹が出現しカリュブディス、共にエウリュアレーさえも呑み込み破壊していく。肉壁は容易くブチ抜かれ外の景色へと繋がった。


「はぁ、やぁあと血なまぐさい空気からぁ解放されたぇ。」


深呼吸をしながら大樹の頂上にて眼下に広がる大海、そして、広大なカリュブディスの姿を捉える。簡潔に外見を説明するならばカリュブディスは巨大蛸なのだ。クラーケンと言う言葉の方が親しみやすいだろう。


「.....能面、貴様、我事..」


肩を抑えながら大樹を捉え嘆くエウリュアレー。


「さぁエウリュアレーよぉ、此処まで上があて来んかぇ?此処からは其方の出番ぇ。」


パチンと指鳴りを鳴らすとエウリュアレーの身はキュベレーの隣へと立っていた。


「そう怖い顔をしなさんすぅ。妾とてカリュブディスの腹の中では権能の制御が効かなんだ。妾は大地母神故にぃあの大樹どもは妾に傷を付ける様な真似をしなかっただけぇ。」


キュベレーはエウリュアレーへと手の平を見せる。


「.....種?」


手の平には一粒の種が乗っていた。


「此れは妾が原初に学んだ初歩的な植術よぉ。唯、植える。さすれば成長をし芽を咲かせる。奴の腹に入る際に数百粒程、落としたが、くくく、ジョン風に言うのならばぁ、ナイスタイミングと言う奴ぇ。」


頭を抱え片目を瞑るエウリュアレーはキュベレーへと視線を一度向けるとため息を吐き大海にて蠢く無数の触手群へと視線を向ける。


「さあて、ソチがぁする事は分かるぇ?確かある逸話ではぁ、ソチの姉妹であるメデューサの首を持ちし勇者ペルセウスは偶然エチオピアそのものを呑み込まんとする海物、確かぁポセイドーンの飼っていた化けくじらだったかぇ?を大海ごと石と化せたとかぁ?」


煽る様に言うキュベレーにイラつきを感じつつも相槌を返すエウリュアレー。


「我はメデューサ程、魔眼の効力は高くはない。正確にはまだ、その領域に達っしていない。」


「ならばぁ今ぁ、その領域に達っさぬかえ?其方は今のままではアテーナどころか脳筋阿呆のぉアレースにさえ勝てぬぇ?」


その言葉に打たれたのか厶っと表情を引き締めやる気顔になるエウリュアレー。アレースと言う神は戦神と言う異名を持つが事実、勝利よりも敗北が多い。余談だが、英雄ヘーラクレースには半殺しの目に遭わされている。


「良かろうぉ!ゴルゴンの底力を貴様に見せてやろうぞ!」


波を打ち渦を創る巨大な触手群、そして海底には自分の数万倍以上の大きさを放つであろう巨大蛸の姿がある。大樹は本体である蛸の頭上から幾数も貫かれ存在し、その一本に二人は立っている。


「全ての神気、魔力を我が魔眼に捧げる.........石化の魔眼(オスプリオ)ッ!」


エウリュアレーの髪が逆立ち全ての毛先が蛇の頭部を形取るとその眼光からも鋭い光を放っし眼下に広がる全て、見えるもの全てを石化させた。此処ら一体の海は陸と化し触手群などは山の様に盛り上がった。エウリュアレは全ての魔力を使いきった事で意識を失い大樹から堕ちようとしたが寸前のところ、キュベレーが支える。


「良くぞ、やってくれたぇ。さて、次は妾の番ぇ。」


蔦をコントロールしエウリュアレを落とさないよう結ぶ。そして両手を広げキュベレーは叫んだ。


「大地の恵み、此処にあらん!天地創造が如く此処に一つの命を刻む!」


石化した大地全ての箇所から草木、花などが誕生し綺麗に成長していく。だが、そんな一部分から一つの大爆音が鳴り響くと同時にカリュブディスと思わしき個体が複数とその花木、草などを平らげていく。あまつさえ、石化をしたであろう海でさえも食しようと言うのだ。


「欲しいぇ......だがぁ........ジョン」


喉から手が出る程にカリュブディスと言う戦力を我が物としたいが、此処でリスクを犯し瀬名との邂逅を無に帰す事はそれ以上に出来ない。


「...........くっ」


覚悟を決め両手を前へと出し力強く叩く。するとカリュブディスが暴れているであろう一体が崩れ深海、奈落の底へと落とす。そしてそれを追撃をする様に土砂を持って奥底へと無数のカリュブディスである個体を地底へと押し進む。


「ステンノー同様の封印をカリュブディスに対し行使する。」


崩れた箇所を四方から囲む様に魔法陣が現れ呪文を唱えて行くキュベレー。


「我が身に宿りし権能、神化の具現、大いなる大地の輝き照らすは我らが光、その一片の曇りあれば神罰を下さん、無限に続く終わりなき螺旋階段、その最果てにてその身を清め生へと昇華するのだ、“栄枯休咎(えいこきゅうきゅう)”」


詠唱を終えると同時にカリュブディスの個体達が落とされたであろう奈落から光の柱が天を貫き大空へと四散すると穴自体が何事もなかったかの様に元の形へと戻っていた。


「さてぇ、塔へと戻る為のぉ道.......を」


エウリュアレーを抱え塔へと帰還する為の行路を模索しようとした刹那、二人は視界がままならぬ闇の中へといた。


「此処は......」


神に闇は不要。人であれば視認する事も叶わぬ程のどす黒い闇の中、キュベレーはこの世界の正体を理解した。


「冥界.....だと。」


現在、ギリシア、世界を支配下に置くであろうオリュンポスと並ぶ権威を持つハーデスの住処、冥界だ。


「馬鹿な、何故、妾らは此処におる?」


例え神と言えど、冥界と言う世界は如何なる物でさえも冥府を司る神に対し権能を働く事が出来ないのだ。カリュブディスの腹の中とは似て非なる物。だがより強固で災厄な物である。


「神でさえ、寄り付かぬこの大地に......権能は使える、だが冥府の者に見つかりでもしてみるぇ、妾らは玩具にされるぇ。」


キュベレーは焦る。そして、すぐさま、冥府を上がる為に走るが抜け道が見つからない。死者達がゾンビの様に生者を見つけたと言わんばかりに襲い来るが大地の権能で全てをなぎ払う。


「くっ埒があかぬぇ!」


すると足元が盛りあがり巨大なワームが呑み込まんとキュベレー達を襲うが大地そのものをその巨大ワームへと縫い付け固定する事で危機を逃れる。


(本来であれば、此処は死者の霊の行く着く場所。死者は亡霊となってはいるが....地上とあまり変わらない暮らしをしている筈ぇ。何故、此処まで魂はぁ荒ぶっている....)


キュベレーは鞭をエウリュアレーを抱える反対の手に出し、冥府の怪異、生物に応戦しながら先へと進む。

此処ら一体は廃墟と化しており世紀末と言う言葉が相応しい程に腐っていた。空は闇が支配し赤き雷が鳴り止まない。キュベレーは近場である廃墟の一つへと侵入し、大地による防御壁をその廃墟に展開する。


「此れで、暫くは休む事が出来るぇ。」


神とは言え、疲れるのは必然。休息は必要だ。冥府の空気と言う物は地上に君臨する神々にとって余りいい影響を及ばさない。魂が少しずつと此方へとひっぱられるのだ。要約するに長居すると冥府から出られなくなる。


「いったん、此奴がぁ、目を覚ます.....までの....間.....」


その場にエウリュアレーを降ろし自身も横へと腰掛けると連戦からの疲れか瞼が鉛の様に重く眠りへとつくキュベレー。






「お〜い、キュベレー様?」


肩を揺らされるキュベレー。もう少し眠りへと付いていたいがその声の聞き馴染みやすさからか何処か心が落ち着く。自分にとって愛しく独占をしたいもの。世界の覇権よりも手に入れたい、そんな存在。尊く、手を伸ばしたくて手から離れてしまう気まぐれな猫。


「起きろ、大地母神。」ゲシ


横になる自身の脇腹に蹴りを入れられ痛みからか目を完全に覚まし勢いよく立ち上がる。


「何をするぇ!」


怒鳴り声を上げ蹴り上げた人物に天罰を下してやろうと視線を前へと向けると逢いたいと願う人物がいた。キュベレーは心臓を高鳴らせ、涙目になる。神自身が一人の男の為に英雄譚と同義の旅路を起こしたのだ。


「ジョンぅ!」


熱い包容をする為に瀬名へと飛び出すが虚空へとぶつかった。何故ならアルセイドが瀬名を引っぱり自分が抱きしめたからだ。


「.....おい、羽虫ぃ。」


ギロリと睨み付けるがアルセイドはその視線を無視し瀬名を舐める様に自分の身体を絡める。キュベレーはキぃぃぃ!っと両腕を上げ瀬名を無理矢理アルセイドから引き剥がすと自身の胸へと瀬名を押し付けた。


「はぁ、ジョンの匂いがぁ、はぁ、この時を永遠に、過ごしたいぇ。」


息子を愛するが如く頭を優しく撫でるとつむじへと接吻をする。


「し、死にゅ!」


瀬名は顔を赤くしながらキュベレーの両肩を掴み拘束から逃れる。


「羨ましいですぅ。」


「何で殺しちゃダメなんだろ?寝てる時が抵抗が無くて簡単だったのにね?」


ネーレイスは指を加え自分もキュベレー同様、瀬名へと包容したいと考えていた。一方、アルセイドの方は寝ている隙に二人の首を刎ねようとしたのだが、瀬名に怒られ現在もやさぐれながら自粛していた。エウリュアレーは神気と魔力をフルに使い切っている反動かまだ目を覚ましていなかった。


「それで、何で、キュベレーさまがこんな所にいるんですか?」


瀬名は単純に聞くがキュベレーは当たり前だと言わんばかりに宣言する。


「妻夫となる其方をぉ、助けに来るのは妻の役目ぇ!」


ムフンと胸を張り堂々とそう答えるキュベレーのストレートな発言に頬を染める瀬名。瀬名の弱点は面と好意を言葉に言われる事だ。


「そ、そうですかぁ//」


「セナっ!」


脇腹をアルセイドに抓られ痛いっと漏らす瀬名。そしてアルセイドはキュベレーへと視線を移し告げる。


「お前も此処が冥府だって事は分かっていると思う。此処は冥府でもかなり辺境に位置する場所らしい。」


「“らしい”か。それはぁ、真かぇ?」


「うん、それと此処ら一体はどうやらエキドナの巣らしいよ。」


「情報をペラペラと話すではないかぇ、何が目的ぇ?」


本来、敵同士なのだがアルセイドがよく口が滑る事に疑問を覚えるキュベレー。一方、ネーレイスは自分の存在感の薄さにしくしくと涙をわざとらしく流していると瀬名が頭を撫でてくれていた。


「言いたくはない......けど瀬名の為だから言う。アルセイド達だけじゃあ瀬名を護りきれない可能性があるから協力しよ。」


キュベレーは驚いた表情を出すが、すぐに表情を改めアルセイドへと問う。


「それ程までの者がこの塔に存在していると言う事かぇ?」


「まだ、存在してない。でも、限りなく近い内に復活する。お前達が来た事でエキドナは焦っいる筈。」


「.....まさか!?」


「そう、そのまさか。」


キュベレーはエキドナが何を復活させようとしているのかを理解し冷や汗を流す。


「だから、とっととエキドナを潰しに行こう?....ネーレイス、そこの蛇に魔力をたんまりと分けて上げて。上限を越えるくらい上げれば目を覚ますでしょ?」


ネーレイスは何で私がしないと行けないんですかぁ!と言うが瀬名がお願いすると喜んで魔力を上限以上エウリュアレーへと注ぎこんでくれた。


「はっ!」


エウリュアレーは目を覚まし自身に流れる膨大な魔力に驚く。そして、アルセイドはキュベレーが張ったであろう大地の防御壁を隠れる廃墟と共に弾き飛ばし告げる。


挿絵(By みてみん)


「神話の戦争を始めよう」


投稿までに時間が経ってしまい申し訳ない。もう一つの作品の方に時間が掛かってしまいました。ですが、安心してください。これからは此方に集中するので是非ともこれかも愛読、よろしくお願いします。

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