Episode3 "プロローグ3"
「何だこれ?」
手紙を手に取り中身を確認してみる事にする。
「えーと、校舎裏にて待つ。」
手紙にはそう書かかれているのみで一応封筒や手紙の裏側などを確認して見たが何も書かれてはいなかった。
(嫉妬してる男子生徒の復讐か?それとも.....)
手紙を下駄箱の横に置いてあるゴミ箱へ放り投げ、校舎裏へと足をのばすことにする。
(来たはいいが誰もいないんですけど。もう帰ろうかなぁ。)
校舎裏にたどり着いたがそこには人の姿はなく無駄足だった事にため息を吐く瀬名。
(よし、帰ろう!此処にいても時間の無駄そうだし、帰って撮り溜めたアニメの消化に入るか!)
校舎裏から移動しようと足を踏み出す瀬名だったが背後から声がかけられる。
「瀬名先輩!!」
声の方へと体を向けるとそこには後輩がいた。
「っ、なんだ?」
「えっ?あ、あの、えーとですね。」
慌てふためく後輩の姿を見て苦笑しそうになるが抑える。
「まさか、来てくれるとは思わなくって....」
確かにこの手紙の送り主が後輩であると知っていれば此処に来なかっただろう。予想では後輩のファン共に相見えて誤解を解く予定だったのだ。一部の行き過ぎたファンは自身が大学に行ってからでも嫌がらせをする勢いだったので先に釘を打ちたかったのだが。
(まさか、後輩本人とは。)
「.....早く要件を言え。」
「あっ、はい。」
目を閉じ自身の両手を握る後輩は何かを決意したように再度目を開け此方の瞳を捉える。
「先輩!わた、私は、前から、あなたのことがす、す」
_ああ、これは告白の流れだ
「すまない。」
彼女が言いきる前に告白を断り彼女の横を抜け校門へと目指そうとする。
「待って!!!!!」
背後からの大声に驚き体が一瞬跳ね上がる。体は前を向いたまま顔だけを横に向け後ろを確認すると後輩が膝を着き大粒の涙を流しながら自身の気持ちをぶつけて来た。
「何で、何でですか先輩!私は努力しました!この一年で学園一の美少女と呼ばれるまでに!どうして先輩はいつも私に冷たくするんですか!!私以上に先輩に釣り合う女はいませんよ!!私ならどんな事でもしてあげれる!もし先輩が此処で脱げとおっしゃるなら私は喜んで脱ぎます。だから、お願いです、私を、ウチを置いてかないでよぉ先輩.....」
泣き叫ぶ彼女を尻目に足を動かす。
「お前は変われた」
後輩はその言葉を聞き下を俯向く。その姿を横目で確認し歩く速度を上げる。この場から速やかに離れたいと言う衝動が強いからだ。
(役目は終えたんだ......)
そうあれは確か一年前、自分がまだ演劇部に所属していた時の話だ。当時二年生に上がったばかりのオレは後輩が出来た事により少し浮かれていた。この時もすでにサス系だったが後輩や部員仲間との交流は部活内ではしっかりと行っていた。そう部活中だけはコミュニケーションは取っていたのだ。劇と言うのは協力しなければ出来ないものだからだ。
部員(後輩)の中にはあまり演じる事を得意としない生徒達もいた。そこで三年の先輩方から2名の後輩の面倒を見るよう二年生の部員へと指示を出した。そこでオレが担当する事になったのが後輩である'春風奏'と'冬美雪'と言う2名の女子生徒の担当だ。今年の演劇部の新入生は女子の比率が以上に高く先輩方も驚いていた。何故だろう?
「オレがお前達の担当の二年、瀬名ジョンだ。好きに呼んでくれて構わないが、'さん'や'くん'は必ず付けろ。」
「はい。」
小さい声で返事を返す文学少女。目元は前髪で隠されていてよく見えない。とても整った顔をしておりこの子は舞台で化けるだろうと確信した。
「はーい!はいはい!」
こちらは今時の女子高校生らしく髪をやや茶髪に変えセミロングな髪型を靡かせる女性だ。顔はよくて中の上?くらいか。
「あ、ジョン君って彼女さんいるんですか!」
「...いない。」
ちょっと本気を出せば作ることなど容易いがこの高校時代では作らないと自分ルールに決めているんだ。
「えー、じゃあ今フリーって事ですか!やったー!」
今時少女は両腕を上げ万歳のポーズを取る。その横で文学少女も小さくガッツポーズを取った。
「じゃあ私、立候補しちゃおうかな?かな?なんちゃって?」
上目使いで自分を見てくる。
「バカを言ってないで練習をはじめるぞおまえら。」
軽く受け流し二人を発声練習させるため外へ連れ出そうとした時、文学少女がボソリと声を出した。
「よかった、」
「何か言ったか?」
「いえ、」
その発言を隣で聞いていた今時少女は恨めしく文学少女を見るのでだった。ある日の放課後、文学少女こと'春風奏'は今時少女こと'冬美雪'に屋上に呼び出される。一年生が入り半年を過ぎた頃だった。新入部員のほとんどの狙いは瀬名だったのは言うまでもないがこの二人は彼の担当に選ばれた事により他の誰よりもアドバンテージを持っていた。と言っても部活外では話しをかけても無視なのだが部活内では二人が瀬名と一番話す事が多いい。
「奏、アンタも瀬名先輩目当てで入ったのはわかるけど私に讓ってよ。」
雪が口を開く。
「....ウチは、ゴメンなさい。できない。」
下を俯きそう答える。
「そう....じゃあしょうがないね...これからは敵だ。覚えてるから.....アンタが最初の日私がジョン君に告白を冗談で流された時、小さい声で“よかった”って言ったの。後悔しないでよね、根暗さん。ふん」
そう言うと雪は奏の肩を押しのけ屋上を去る。
この日を境に雪は奏に対するイジメが開始された。雪は周りの友達に奏が身体を使って瀬名へ迫っていると言う噂を流し味方をつけていったのだ。もちろん暗いイメージを持つ奏はイジメの対象に成りやすく周りも便乗してイジメを行なった。イジメはエスカレー卜し奏をとうとう演劇部から追い出し瀬名とも会えなくなった。
「おい、奏!ジュースかって来いよ!」
「私のも!」
「オレのも頼むわ!」
奏はクラスの一部の生徒からパシリ同然の扱いを受けていた。
「...はぃ」
奏は小さな声で返事を返し駄賃を受け取る為雪の前で待つ。
「ん?早く買ってこいよ!」
「あの...お金は...」
雪は立ち上がり奏の腹に拳を打ち付けてきた。
「うぐっ...」
胃液が口から出そうになるがそれを抑え小さく謝る。
「ごめん...なさ...い」
そう言うと雪はフンっと鼻を鳴らし自分の席へ戻り友人と話しを再会する。奏はお腹を抑えながら廊下へ出て購買へと向かって行った。
「ちょっと雪〜あれは酷いんじゃな〜い?」
取り巻きの一人がヘラヘラしながら雪へと尋ねる。
「大丈夫だって〜あれくらいじゃあ死なないんだから。」
「それに腹パン入れた時の顔見た〜?マジ受けるっしょ!」
「確かに!」
アハハハハと醜い顔で笑い合う集団を尻目に周りの生徒は何とも言えぬ顔を作るのであった。
ピッ ゴドン
「これで最後っと、」
大量のジュースを買いそれを腕に乗せて教室へと向かう。一年の教室は二階にあるので階段を使わなければならないのだ。そして階段を登ろうとした刹那ドンっと人とぶつかるのを感じた。
「いたた、ごめんなさい。」
階段から下りて来た生徒と身体をぶつけたのだ。
「ああ、オレは大丈夫だ。」
久しぶりに聞く声に奏は驚く。
「瀬名...先輩?」
瞳から涙が溢れる。
「.....大丈夫か?」
ジュースの大半を拾い上げる瀬名。
「どこまで運べばいい?」
そう尋ねてきたが自分は今の状況を先輩にお見せすることは出来ないと思い手伝いを断ろうとしたが先輩は自分を睨んだ。
「黙れ...」
と言い自分の教室まで何も話す事もなく運んでくれた。教室の扉を開いた先輩は女子からの黄色い声を無視し雪の元へと向かって行く。
「あ〜瀬名先輩!私に会いに来てくれたんですかぁ~♥」
甘ったるい声を出しながら先輩に媚を売る様に話す。先輩は彼女の机にジュースを置き彼女の眼を捉えた。
「もう先輩どうしんですかぁ濡れちゃいますよぉそんなに見られたら♥(/ω\)イヤン」
その言葉を無視し彼女のネクタイを掴み一言告げる。周りは驚きで身体を動かせずにいた。
「オレの視界に二度と入るな、冬美。」
そう言うと教室の扉を開き廊下へと出てきた。廊下で待機していた自分へと近づき壁へと押しやられる。欲にいう壁ドンと言う奴だ。私は顔を紅くし先輩の顔を覗き見る。
「逃げるな、自信を持て奏。お前は輝ける。」
そう言うと自分から離れ三年の教室へと向かう為階段へと向かっていった。その後、教室へ入ると雪の取り巻き達は雪から離れ彼女自身の机を涙で濡らしていた。言うまでもなく彼女は翌日の日から学校に登校しなくなった。噂では転校しただの自殺しただのといろいろな噂が飛び交ったが事実は不明のままである。私こと春風奏は無事演劇部へと複期することが出来たが瀬名先輩は入替で退部したようだ。
その後は瀬名先輩の助言通り自信を持つ事に決め髪型をリニューアルしコンタクトに変えた事で以前よりも周りに注目を浴びるようになった。最近では親衛隊だのファンクラブだのが現れいつも瀬名先輩に近づこうとすると邪魔をしてくる。容姿を変えただけで誰も彼もが態度を改めて来て正直な話イラつきを覚える。特に瀬名先輩との接触を邪魔する奴らは本気で殺そうかと何度考えたことか。
先輩の卒業が近づき私は親衛隊とか言う気持ちの悪い男共を押しのけ過剰なスキンシップを取るようにしているが先輩は私を冷たくあしらい押しのけてしまう。先輩は頑なに自分の進路先を割ろうとしないので職員室に行き先輩の担任に彼の進路先を雑談を混じえ聞き出した。それからの私は部を止め勉強へと力を入れた。そう、大学在学中に悪い虫が先輩に付かないように。
_そして今日は卒業式_私は前進するため_先輩へと告白をする。
校門を出てバス停へと向かう瀬名。
「あぁ〜多分母さん先のバスに乗っちゃったなぁ。」
あぁ早く帰ってア二メの続きを見たい。それに母さんとしっかり話しをしなければ行けない。これからの関係について。勿論大学では一人暮らしは鉄板だから何としても許可を貰わなければ。と考えていると車道からバスの姿が現れる。あと数秒で着くだろうと瀬名は座って待つことにした。
「待って下さいぃ!!」
「春風.....」
学校からの坂を全速力で春風がこちらに走って来る。
「先ぱっ!?」
すると春風は足を挫き車道へと身体を飛ばした。瀬名は彼女が足を挫いたと同時に足を走らせていた。
「くっ、おらああああああっ!!!」
幸いな事に彼女から自分の位置はそう遠くは無く瀬名は身体を跳躍させ春風の身体を歩道へと投げ飛ばした。
(嘘..だろ..)
跳躍した身体は車道へと落ち目の前にはバスが迫っていた。走馬灯が駆け巡る。これまでのロクでもない記憶がスローモーションに。バスの運転手はブレーキをかけるがもう遅い。
そして、意識が途切れ_
_ない?
ん?と眼を開けると自身は高層ビルの屋上付近から落下していた。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
(何だこれ何だこれ何だこれ!!!!!!)
落下しているのだが一向に衝突する気配はない。疑問に思い周りを見渡すと紅い月がビル群を照らし付けビルの倒壊が始まっていくと同時に空にも穴があいたように崩れてく。
(空間が崩壊している....まさか、対界宝具!ってふざけてる場合じゃねぇー!)
ビルへと手を伸ばし怪我を覚悟で掴まろうとするがその高層ビルも倒壊を始めた。万策尽きたかと目を瞑ろうとすると空間の穴から黒い亀裂が入り瀬名へと迫り、近づいて来た。
「クソ!」
亀裂が瀬名へ触れると黒い深淵が溢れ瀬名へとまとわりつき穴へと引きずり込んだ。周りには何も無い、いや見えない。闇が広がるのみ。だが身体が前進へと引っぱられていることには間違いない。
「ここは地獄なのかな....?」
芥川龍之介の話しを思い出しそう言葉が漏れる瀬名。すると前方に小さな光が現れた事に気づく。
「ん、何だ....光が....近づいて!?うあああああああああああああ」
光が徐々に大きく広がり瀬名を包むと身を投げ出される感覚に襲われた。
バン!!バサササササ!!
何かにぶつかり身体を地面へ衝突させる。
「どけ」
(男の....声?)
顔を上げ周りを見渡すと木々や花草そして周りには湖があった。
「うぅ、此処は何処だ?」
朝日が眩しいと思い顔を下に下げると西洋の顔をした美青年が自身の下に倒れていた。その美青年は眉間に皺を寄せ苦悶の表情を浮かべていた。
周りは花園_下には男_.....うん_オレはこう告げた_
「オレにBLの気はない。」