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Episode69 "怪物の神臓"

ドクン、ドクン、ドクン


心臓の音が衝撃波の様に肉壁へと伝わり空間そのもの揺らす。怪物となり果てた古の神の一人、カリュブディスの神核が此処に有りと存在感を放つ中、その中心部へと足を進ませる三神の影。


「人の身であれば、この場に立つなど不可能であろうな。衝撃が身を粉砕しこの肉壁に混じり合うのは間違いなかろう。ジョンが此処に迷い込まず良かった。」


エウリュアレーはそう口にすると神核へと通じるであろう強固な肉壁で出来た扉へと手を当てる。そして触れた箇所から徐々に石化をして行き、左手に曲剣を顕現させその石化した部位を突く。突いたと同時に扉は粉砕し強大な繭が姿を現す。


「ほぉ、これがぁ。」


キュベレーはその強大な存在感と威圧を放つ繭を捉え興味深く視線をぶつける。繭の隙間からは黄金色の色が心臓の音を奏でる様に外界に放たれては中へと収束するを繰り返していた。


「貴方が、カリュブディスなのね。心臓部へは幾度と侵入を試みたけど貴方の意志なのか偶然なのかたどり着く事が叶わなかったわ。だけど、今回は違う。」


スキュラーは胸に手を置き繭を見上げると手を繭へと掲げる。


「私が言えた柄じゃぁないけど、この負の連鎖を此処で止めるわ!」


下半身の狂犬達が牙を尖らせいっせいに繭へと駆け出す。


「「(アァ、タリナイィ、タリナイィ、オナカガスイテ、タリナイヨォ)」」


小さき呻き声のような声が聞こえると駆け出した筈の狂犬達が突如と抉れた様に消滅する。スキュラーは突如として起きたその現象に一瞬硬直したが痛みが遅れて身体へと伝わり痛みの声を響かせる。


「「「うがあああああああああああああああああああああああああっっつ!!!!!!!」」」


下半身である六の犬の内、三が消えその場へと腰を降ろし手を地へとつけるスキュラー。エウリュアレーは即座に指先を切り倒れるスキュラーの顎を上げ、一滴飲ませる。


「呑め、スキュラー。」


スキュラーの口へと一滴入るとその場へとスキュラーは転がり苦しみの声を上げる。だが数秒立つと痛みが引き何事もなかったかの様に抉れた下半身の一部は再生をしていた。


「我が敬愛する妹の権能、いや、獣の姿へと成り果て得た寵愛なのか......我が血は二つの効力を持つ。一つは死者を蘇らせる、そして二つ目は"死゛を与える事だ。」


淡々と説明をするエウリュアレーにスキュラーは息を整え立ち上がる。


「ありがとう......助かったわ。」


忌々しい物を見る様にスキュラーはカリュブディスが内包されているだろう繭を直視する。


「どうやらぁ、あの繭から一定の範囲にはぁ、敵を捕食すると言ぅ本能が本体であるカリュブディスを突き動かしているようぇ。」


「ならばどうする、繭へとは近づけぬぞ。「たわけかぇ?ソチには魔眼があろうがぁ。」


魔眼と口にした途端、繭を包囲する様に直ちに肉壁が幾中も張られ繭そのものを覆い隠してしまった。


「さて、お主の作戦も途切れたがどうする?」


肉壁をバンバンと叩きながらエウリュアレーがキュベレーを嗤う。


「堕蛇ぃ!ソチがもう少し頭を使っていたのなら即座に仕留めきれていたであろうが!」


怒鳴るキュベレーをよそにエウリュアレーは肉壁へと曲剣を突き刺し魔眼の効力を肉壁へと流していた。肉壁は突き刺さった曲剣を軸に石化を開始し一枚目の肉壁が石の様に砕ける。


「さて、此れで文句はなかろう。と言っても、カリュブディスも存外バカではない。ほれ見ろ、即座に肉壁が再生していくぞ。」


曲剣を再生最中である肉壁へと向け笑う。だがその再生をしているであろう根元を完全に石化をさせた。


「我だけでは疲れる。ソナタら妾がこの中心である肉壁の破壊をしている最中再生工程にある肉壁の破壊をお願い出来るか?」


「任せて!」


スキュラーは元気よく返事を返すと下半身である犬達も主であるスキュラ同様、元気よく遠吠えを響かせた。





「お腹がすいたよぉ〜。もっと食べたいよぉ〜。」


「許して、許して、許して、許して、許して。」


「ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。ゲーリュオーンのお牛、美味しいね。」


「でも、足りない、足りない、足りない、足りない、もっと食べたいよ、何で食べちゃあダメなの?何で?何で?何で?何で?何で?何で?」


「お母さん、何処?お母さん、何処?お母さん、何処?お母さんがお母さんがお母さんがお母さんが.......カリュブディスはガイアの娘、ポセイドーンの娘......何で.....何でカリュブディスは......お腹がすいてるだけなんだよ......お腹がすいたぁ........お腹がすいたなぁ......何でお腹いっぱいに......食べたい.......喰らいたい....頂きたい....」


「血が........血肉がぁ.......欲しい......欲しい.....血が....血がぁ.......」


外界とは切り離された世界で一人の少女は狂う。貪欲な程に食を求め獣と成り果てて尚も食を求める。雷神による誅伐はさらに暴食を狂わせた。


精神は今や肉体の支配に無く、肉体は本能に従い暴食を繰り広げるのみ。


数多の英雄がこの怪物に為すすべもなく殺される。カリュブディスと言う怪物の祖となる神は原初の神と大海から生まれ堕ちた強き神なのだ。そんな物が本能のみで活動を開始すれば完全に止める事は不可能だろう。


だが例外はいくらか存在はする。その父であるポセイドンによりこの区域にて留めらられているのだ。そして自身よりも強大な怪物が深海に眠っている事も本能が理解していた。


従って行動範囲を自分から広げようと足掻くことはない。だが、彼女の暴食は収まらない。ただ、そこにある全てを呑み込むだけ。それはまるで装置の様に、虚しく、獣らしく。喰うの一点に全ての本能を捧げる彼女は殺されるまでその行動を止めないだろう。





「よし、これが最後の肉壁だ。二人は離れていろ。再生能力を持つ者は我だけだろう、先ほどの様に空間ごと喰らう奴の攻撃を次に喰らえば腕や脚だけでは済まんぞ。」


二人を下がらせ、最後の肉壁へと曲剣を突き刺す。そして刺した部位から徐々に石化が進んでいく。魔眼による効力を剣に乗せ斬った対象を石化をさせるエウリュアレー独自が編み出した技。


「ふッ!!」


エウリュアレーが石化した肉壁から曲剣を引き抜くと肉壁は破壊され崩れていく。それと同時に鋭い底知れぬ圧がエウリュアレーを襲うが。


「(石化の魔眼(オスプリオ))」


身体が、本能が自動的に魔眼を発動した。その圧と言う何かを石化したのだ。そしてその圧そのものは地へと沈みエウリュアレー達の眼前に大穴を開けた。


「身体が.....ステンノー....」


エウリュアレーは自身の内に残る姉の名残を感じ取る。


「....そうかぇ、これがぁ、カリュブディスの権能の正体の一部かぇ。」


キュベレーは理解したのか自分よりも後ろに控えるスキュラーの下半部へと視線を向け話しを続ける。


「蝕したい、食したい、喰らいたいと言う衝動を空間に侵食させる能力、権能。如何なる部位でさえ奴ならば喰いちぎる事が出来るえぇ。そこの堕蛇はぁ、空間そのものを石化させたがぁ、此れはちとまずいぇ。」


キュベレーは冷や汗を流し、先に見える繭を凝視する。


「石化は一つの対象に対して、暴食の権能は複数に展開が可能と言いたいのね。」


スキュラーはキュベレーの発言に答える様に解を答える。すると前方の繭から人の姿が羽化をする様に弾き出される。そしてその者は静かに言葉を話す。


「ご飯......食べていいの.....ねぇ.....」


瞳は虚ろで顔を上げ三人を舐める様に見つめる。すると欠伸をする様に大口を開けると数秒動かなくなった。


「あやつは何を........」


エウリュアレーがそう言葉を出したと同時にカリュブディスは大口を噛み締める様に閉じた。


挿絵(By みてみん)


バン!バン!バン!バン!バン!


蜘蛛の巣の様なこの空間に置いて複数の数え切れない大穴が噛みちぎられるように抉らた。その唐突な行動に驚きつつもエウリュアレーはすぐさまキュベレーとスキュラーの元へと飛び出し守る様に抱え込む。


「ぐっ!」


抱え避ける寸前、片足を抉られたエウリュアレー。苦悶の表情を浮かべるがすぐに消し未だ発動し続けるカリュブディスの権能を抱えたまま避け続ける。


「私なら何とかなるから放しなさい!」


スキュラーはエウリュアレーの拘束から抜け自身を六対の狂犬へと姿を変え人ならざる速度でカリュブディスの元へと駆け出す。


「早まるな、スキュラー!!」


エウリュアレーは叫ぶがスキュラーはそれを無視し、一人で先に攻撃を避けながら駆け続ける。


「あぁ、お腹がすいたなぁ......全部喰っちゃおうかなぁ.......がぶり」


面倒くさそうにカリュブディスは視線を左右にしながら言うと先程の適当に空間を抉る攻撃では無くその場の物全てを覆うように平らげた。


「先走りおって....」


二人は自分達を覆う前に先に出来ていた小穴へと足を滑らせカリュブディスの暴食を防いだ。だがスキュラーは避けると言う思考すらも出来ぬまま暴食の餌食となりカリュブディスの餌となった。


「見たかぇ、堕蛇ぃ!カリュブディス......欲しいのぉ」


スキュラーの死などどうでも言いと言う様にキュベレーは興奮しながらカリュブディスの運用方法を考えていた。


「....能面、貴様....そこまで腐って」


キュベレーへと文句を言おうと口を開いた瞬間、寒気が上から襲い二人は見上げると。


「「ミイツケタァ」」


カリュブディスが妖艶な笑みを浮かべ二人を眺めていた。


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