Episode68 "囚われの乙女"
明けましておめでとうございます!
投稿に時間がかかってしまったorz
「......さてぇ、ソナタにはたくさんと訪ねたい事があるぇ、スキュラー。」
スキュラーは首を縦に振りキュベレーに続く様に腰を降ろした。
「貴方達が私に聞きたい事と言うのは何故、私がカリュブディスの腹の中にいる....と言う事でしょう?」
スキュラーが苦笑いをしながら目を瞑り語り始める。
「簡単な事です。私はいつかグラウコスが私の元に訪れてくれるのではないかと思い心だけでも清らかであろうとカリュブディスの渦により呑み込まれた人の子を幾度も幾度も助け出していたわ。数世紀と言う年を私は待ち続けた。でも、彼は私を助けには来なかった。」
エウリュアレはスキュラーの前に立ち肩へと手を置く。
「お主は遺憾であったろうな。」
自身にも似て非なる経験をしたスキュラーに思うところがあるのかエウリュアレーは感慨深くスキュラーへと視線を向ける。
「だが、ソナタはぁ人の子をを助けていたのだろうぅ?何故、伝記などでは怪物として恐れられておるぇ?」
キュベレーのその発言にスキュラーは苦渋の表情を浮かべつつも決意を決め説明をした。
「貴方たちが知るスキュラーと言うメッシーナ海峡の怪物の片割れは確かに存在をしていた。」
「その発言からするにお主ではない、という事か?」
「いえ、正確には怪物としての側面を世界に排出したのは近年でしょうね。私はここ数十年、意識を閉ざしていたわ。最後に覚えていた事はグラウコスへの憎悪、憎しみが爆発的に本能へと問いかけたこと、そしてその本能を抵抗する間も無く受け入れてしまったと言う事だけ。」
自虐する様に言うスキュラーの表情は何処か冷めた物だった。
「........目を覚ましたかと思えば私はカリュブディスのお腹の中にいたわ。意識を閉ざして居たはずなのに私の記憶は鮮明に残っていた。私はどうやらカリュブディスと同じく本能に従い人を攫い喰らっていた。まさに怪物、邪道に堕ちたも同然ね。」
カリュブディスの肉壁を触れながら鋭い眼光で自身の醜悪さを口にした。
「カリュブディスに囚われた事は主神によりひかれた運命、神罰なのかも知れないわね。」
乾いた声でそう口に出すと下半身の犬達が主を心配する様に鳴き声を出す。エウリュアレーはその姿を目にし過去の自分、そして姉の姿を投写していた。
(運命....神罰....確かに我も似たような感情をあの宮にいた頃は感じていた。だが、それはお主を前へとは進ませぬ。)
「スキュラーよ、お主の過去の行いは褒められた事ではない。だが反対にお主が清く努めようとした真実は変わらぬ。だからこそ、此処を抜け出しお主は生きなければならぬ。」
「抜け出した所でどうなるの?私の行いは既に悪として世界に広がってる。陸に上がろうと英雄達が自分の武勲の為に退治しにくるのが目に見えているわ。」
居場所は此処にしかないと言わんばかりの物言いにキュベレーは静かに笑みを浮かべた。
「ならばぁ、妾の城ぉ、プリギュアへと来るへぇ。ソナタの身体を獣へと変えた魔女も道中にひっ捉えてから連れ帰ってもいいぇ。あぁ、ソナタが求める者はグラウコスであったな。ならばその首を我が私兵にとらせソナタの眼前に差し出そうぞぉ?」
甘い蜜のような言葉に唾を呑み込むスキュラー。だが唇を噛みそれを拒絶しようとするがキュベレーは先手を打った。
「もっともソナタが承諾しなくとも妾らはカリュブディスの核へと向かうへぇ。破壊した衝撃でカリュブディスと共に海の藻屑と化すもよしぃ、妾らと協力してぇ此処を脱出するも良しぇ。」
選択の道を絞られたスキュラーは唖然とし口を開ける。その反応に満足したのかキュベレーは背を向け先へと歩き出す。
「のぉ、能面。我らが行く道はそっちではないぞ。」
神気を封じられる空間ゆえに上手く神による感知能力が発動せず、キュベレーは羞恥心を感じ顔を赤くしながエウリュアレーへと向き直り睨みつける。
「分かっておるわぁ。早うぉ案内せんか!堕蛇ぃ!」
その一連の行動を見てスキュラーは静かに笑い決意した。
「私も行くわ。貴方について行けば、私は静かに暮らせるのでしょう?」
エウリュアレーはその言葉を聞き安堵する。そしてキュベレーは待ってましたと言わんばかりの大きな抱擁をスキュラーにぶつける。
「良い!スキュラーよぉ、ソナタはこれより妾らの同志ぇ!」
それに足してキュベレーは注意事項を言葉に出す。
「それとぉ、スキュラーよ......ジョンには惚れてくれるなよ?アレは「我の物だ」........アレは「我の物だ」
自分の物だと言おうとした刹那エウリュアレーにより台詞を取られあまつさえも瀬名がエウリュアレー自身の物だと言うのだ。キュベレーはキィィィ!と怒りのポーズをとり威嚇するがエウリュアレーはそれを無視してスキュラーへと説明をする。
「ジョンと言うのは我らが本来、この塔へと訪れた理由なのだ。あやつは何処かにいる筈なのだが.......死する前に回収出来れば良いのだが心配だ。」
「それ程までに大事な人なのね......待って、貴方達、今、塔が何とかと言ったのだけどどう言う意味かしら?」
塔の一階層が海峡に繋がっている事を知らないスキュラーは困惑する。
「妾らは北西にある巨塔から此処へと飛ばされたぇ。幾人もの勇者がこの塔を攻略しようとする筈ぇ。だからこそ、それを想定してメッシーナ海峡へと一階層そのものを固定した。」
「ならば、如何すればこの空間を抜け出せると言うのだ!」
「そう、騒ぐでないぇ駄蛇ぃ。このメッシーナ海峡へと固定された空間を抜け出すのは簡単ぇ。英雄譚で散々と見た、獣狩りぇ。獣の心を潰す、さすれば此れ程の大禁呪なぞ保てうる筈がないぇ。」
三人は肉壁蠢くグロテスクな空間を進みながら話を繰り広げる。
「そもそもの話がぁソチが魔眼を使い大海ごとカリュブディスを石化をしていれば事は此れほどまで苦労をする結果にはならなかったぇ。」
「なっ!?」
愚痴をこぼすキュベレーにエウリュアレーが我の所為だと、と驚愕の表情を浮かべる。
「ふん、それ程博識なのにこのザマとは此方こそ貴様に失望するぞ。黒幕面ばかりしおっていざ前線へと出れば無能ではないか、貴様は。」
「何ぇ!!」
「何だ!!」
胸ぐらを掴み合い取っ組み合いを繰り広げようとする二人だがスキュラーに仲裁され一旦距離をとる。
「貴方達、本当にこれまで良く行動を共に出来たわね。」
ため息を吐きながらスキュラーは二人の間へと立ち先へと進む。時折、肉壁から出る触手のような異物が遅いかかってはくるが全て下半身の狂犬達が噛み殺すかエウリュアレーが魔眼を使い石化させていた。キュベレーはと言うと権能を封じられているが故か常に先頭ではエウリュアーの後ろへとひっついていた。
「正規の登録をしていると権能を封じられるって.....殺して下さいの免許証見たいよね?」
スキュラーが冗談混じりにそう口にするがエウリュアレーは顔を暗くしスキュラーへと説明をする。
「それはこういった状況ではそうだろう、だが、いざ我らが地上へと足を踏み出せば法は変わる。我らは正規から外れた神だ。そして正規から外れた神は英雄や武勇を求める神どものかっこうの餌となる。」
スキュラーは口を閉ざし肉壁へと手をつける。その姿を見てかキュベレーはスキュラーへと向け口を挟んだ。
「だからこそ、妾がいるぇ。妾自身が妾の物だと公言すれば他者は手出しを出来ぬぇ。」
自信満々にそう発言するキュベレー。その発言を聞き取り何処か安心したのか目を細め自身の手を見て握り締める。そして、二人を交互に見合わせると自分は大丈夫だと公言した。
「さて、此処が神核へと繋がる管よ。」
「確かに強き鼓動が五月蝿い程に伝わるな。」
心臓の音が大音量でキュベレー達の立つ場へとも伝わる。
「さて、行くぇ。」
三人の神気を纏いし者達は核へと足を進ませる。




