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Episode67 "カリュブディス"

「おぅ、見てみよ、堕蛇ぃ、くく、人の乗る箱舟が渦に呑み込まれよおぞぉ。」


海面をエウリュアレーの権能により石化し前を進む二人は遥か先に見える1隻の船が巨大な渦に呑まれる様を見る。


「カリュブディス.....メッシーナ海峡に置いて災厄と呼ばれるもう一方の片割れだな。ソナタはアレすらも同盟の関係に引き入れると言うのか?アレに自我はない。だだ、其処にある獲物に貪りつくだけの獣ぞ。」


エウリュアレーは結論だけを口に出すがキュベレーはにっと口を曲げその大海の大渦を指差す。


「彼処へと行くぇ、堕蛇ぃ。あれ程の猛威を振るう獣ぉ、買うてみとぅなぁあたわ。それにソチも知っておろう。アレは海神ポセイドーンと原初神の一人ガイアの娘ぇ。」


ギリシア神話に登場する神々の多くはガイアの血筋に連なり、また人類もその血を引いているとされている。そしてその血を色濃く受け継ぐ者の一人がカリュブディスでもある。


「強大なぁ力を身に宿すと共にぃ起源は暴食にあったぇ。だが、その暴食がぁ仇となりぃゲーリュオーンの牛を盗んで食べてしまった。」


「罪には罰を、か。」


エウリュアレーは同情の眼差しをカリュブディスの起こす渦へと向けていた。


「そうぇ、例え、それが神とて罪を犯したのならば償わなければならぬぇ。」


「.....そうか。」


遠い眼で殺意を膨らませるエウリュアレー。その瞳にはこの広大な大海の一部に潜むポセイドーン、そして憎きアテーナが映っていた。


「ソチも知いてはおろうがぁ、ゼウスに罰を受け怪物の姿になぁたカリュブディスは獣の本能に抗えず自我が崩壊した。そしてぇメッシーナ海峡にて根を下ろした事により船乗りを襲うようになぁたと。」


徐々に大海に潜む大渦へと近づいていく二人。


「ソチは救いたくはないかぇ?」


キュベレーの言わんとしている事は分かっている。キュベレーはエウリュアレーへ対しステンノーの存在を重ねさせようとしているのだ。


「説得を試すのは構わん....だが、この領域の脱出に時間が掛かると言うのならば我は貴様ごと石化をする。」


エウリュアレーは冷たくそう口にするとキュベレーは笑い大海の渦へと手を入れる。


「妾は北南を支配する大地母神キュベレーである!」


そう宣言したと同時に渦は収まり嵐のような大粒の雨は止んだ。荒ぶる波ですらも止み一時の静寂が訪れる。だが石化した筈の海面は徐々に海へと浸かっていく事に疑問を感じキュベレーへと叫ぶエウリュアレー。


「能面!!下だ!!」


キュベレーの瞳が瞬時に翠色となり沈み掛けである石化した海面から巨大木の群集を成長させ足場をその巨木の先へと移すが、同時に当たり一帯全てを呑み込む巨大な大穴が大海に出現しその大穴へと二人の女神は堕ちていく。






「起きぬ......能面.....戯け.....しておる!」


キュベレーは頬に痛みを感じ目を覚ますと往復でビンタをするエウリュアレーの姿があった。すぐさま平手打ちをする手を掴みその場を立ち上がる。


「い、い、痛いではないかぇー!この堕蛇ぃー!」


立ち上がったキュベレーはエウリュアレーへと視線を下げると赤く腫れる両頬を抑え叫び付ける。


「ふぅ、生きていたか。此処で死なれては困る。主に我の復讐の為にだが。」


キュベレー本人の心配ではなくあくまでも自身の未来における復讐において必要な人物であるからだ。


「さて、我らは此処へと流れ着いた訳だが......此処は」


「......カリュブディスの腹の中ぇ....くっ!ソチは知っておろうが!かつて神聖を帯びていた者が獣と化したおりにけっしてしてはならぬ過ちを!」


キュベレーは叫ぶ様に怒鳴り声を上げ肉壁を叩きつける。


「古の理か.....まさか自身がその一部を経験出来るとはな。」


「堕蛇ぃ、妾らは今ぁ、絶対絶命何ぇ!何をそんな呑気な「馬鹿め、落ち着きを取り戻さなければ、見える道も見えなくなる。考えるんだ。」.....ソチの言い分には一理あるぇ、だがこの神の成れの果ての腹には権能の無効と言う愚かな理が常時発動されておる!獣と対峙をする際には必ず食される前に対峙をするのが常と言うのが神々の決まりぇ。」


パニックになり膝をつけ頭を抑えるキュベレーにエウリュアレーは嗤った。


「馬鹿め、弱音なぞ吐きよって。其方ら正規の神々と妾を一括りにされては困る。」


黄金色の瞳が輝きを放ち権能の健在を見せつける。


「堕蛇ぃ!くく、くははは!妾は信じていたぇ!勝った、勝ったぇ!」


ぱあぁと表情に光が戻り高らかに嗤うキュベレー。


「....能面.....」


哀れみの表情でキュベレー見るエウリュアレーだった。


「そも貴様とて神気を完全解放さえすれば権能の一つくらいならば使用が可能になるのではないか?」


そこいらの一神ならば完全解放をしたとしても権能は封じられるがキュベレーはオリュンポスに並び立つ事も出来る神なのだ。そして一説では大地の女神レアーと同一視される。レアーの父はウーラノス、母はガイアであり原初の神々の間に出来た子なのだ。これが真実ならばそれはオリュンポスの力をとうに越えている事を意味していた。


「阿呆かぇ?そんな事をして理にあらがってみよ、妾はアレースの丘にかけられ処断されるぇ。」


妙な所で現実的なキュベレーに頭が痛くなるエウリュアレー。そして頭からレアー同一説を消し先へと進む為に立ち上がる。その一瞬、キュベレーは何処か悲しい表情を浮かべるがすぐに払い、いつもどおりの笑みを貼り付けた。


「さて、この生臭い空間を早く脱っする為にも心臓部へと進もうぞ。」


キュベレーはそう告げると肉壁を石化しその部位を破壊する。そしてその先へと進もうとした瞬間、数多の触手が二人を襲おうとしたが。


「あら、人が生きているなんて珍.....貴方達、神ね。」


触手は六っつの犬牙により砕かれ最後の一つは手に握る剣により切り伏せられた。


挿絵(By みてみん)


「.......スキュラー」


キュベレーがその名を口にするとスキュラーは余りいい顔をしなかった。


「その名前は...嫌いよ。私は唯の一人の乙女。姿を変えられても私の心はニュンペーである事には変わらない。」


剣を消すと胸に手を当て静かにそう呟くスキュラー。下半身から下の犬達も主人であるスキュラーを心配する様にワンワンと鳴き声を上げる。


「何故、ソナタが此処におる?ソナタはカリュブディスと共にメッシーナ海峡にて双対を為す災厄として存在していただろ?」


エウリュアレーはスキュラーに対しそう問うと鼻で笑われ自分へと着いて来るようにと背を向け歩き出した。


「.....私が魔女キルケーにより呪われたのは知っているわね?醜い嫉妬よね。でも私は彼女を恨んでいないわ。彼女は曲がりなりにも芯を通したんですからね。」


唐突に一人語りが始まりキュベレーとエウリュアレーは目を見合わせる。


「でも、一番許せないのはグラウコス.....あの男を私は許さない。」


後ろを追い歩いていても感じられる憎悪、復讐心が伝わってくる。


「何故だ?奴は確か、ソナタに求愛をしたと聞いたが「えぇ、だからよ!あの男は魔女キルケーに助けを求めた。そして私はこんなっ、何よりも許せないのは何で助けにこなかったの!私の姿が醜いから?私に惚れたのは外見だけ?中身は昔と同じ一人の乙女なのに!酷いよっ....うぅ。」


涙を流し二人にうったえ掛けるスキュラー。


「.....ごめんなさい....人と...お話をするのが凄く...久しぶりで......」


「構わぬさ。我とて同じ境遇になれば同じ悲しみを感じていた筈だ。」


「........ありがとう。」


嬉しそうに涙を拭い案内された先にはカリュブディスが呑み込んだであろう家具や財宝、食材などが人が住める様に改良され生活感のある部屋だった。此処まで歩いて来た道には松明が所どころに掛けられており明るくなっていた。勿論壁などは肉壁なので心臓に連動して動いてはいるが。


「......さてぇ、ソナタにはたくさんと訪ねたい事があるぇ、スキュラー。」


椅子へと座り真っすぐとスキュラーの瞳を捉えるキュベレー。それに答えスキュラーは首を縦に振った。


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