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Episode59 "内部と廃棄物"

「おいおい、斬っても斬っても湧いて出やがるぞ、こいつら!!」


ネストールがそう叫ぶが返答の余裕はなかった。瀬名達は戦闘の後、すぐさま古代都市の最上の高さであろう巨塔、敵城を目指し進むのだがキマイラ達が何処からともなく姿を現し襲いかかってくるのだ。


「くっ、レイピアの使い方だってまだよく分かってないのにっ!」


強化を使い最大限に感覚器官の底上げを行い連撃で来る攻撃を紙一重に避けながら反撃をするがあまりの数とタフネス差に瀬名は為すすべもなく困憊していた。


(さっきの戦闘のおかげで攻撃パターンが大体読める....けど、時間の問題だ。)


勿論、一重に避けるのは容易くなく幾つかの斬り傷も出来ている。レイピアの加護が無ければ瀬名は既に土へと還っていただろう。


(ネーレイスちゃんとアルセイドは降りかかる火の粉を振り払うだけ.....気合を入れろ、オレ!)


ネーレイスとアルセイドは瀬名だけを見つめながら自分達に襲い掛かるキマイラだけを駆逐していた。


「うるさい、獣臭い、邪魔。」


「もぅ、じょ、ジョン君が見えません、消えて下さい。」


神の圧だけで周りにいるキマイラ達を圧殺し瀬名の戦闘を恋をする乙女のように眺める二人。


「はあああああああぁぁ!!!」


瀬名は声を振り絞り一匹のキマイラへとレイピアを上段から振り落とすとレイピアの剣先から水飛沫が放出され鞭のように伸びた。瀬名は驚くがすぐに意識を戻しそのまま叩きつけるように振り下とすとキマイラは豆腐の様に真っ二つに切り裂かれた。


「凄い!」


瀬名は興奮を抑えきれず笑顔になると水鞭を横に振り自分の周りにいるキマイラ達を一掃する。その姿を見ていたアルセイドとネーレイスは鼻血を流しながら胸へと手を当てた。


「無邪気な、笑顔、可愛い。」


「うぅ、ジョン君の記憶から、か、借りた言葉を使えば、あの天使のような笑顔の事を、萌え、と言うのでしょうか?」


神圧で潰した亡骸達を気にする事も無く踏みつけ瀬名が戦闘をしている方へとアイドルの後を追うように付いて行く花嫁(ニュンペー)達。彼女達と対峙するキマイラ達はその姿に怯え、瀬名とネストールの方へと標的を変えるのであった。


「普通の異世界転移って何だっけ?はは、オレ、間違えて無双ゲーに転生したのかなぁ。」


レイピア、水鞭を広範囲に叩きつけながら一人ぶつぶつと呟くの瀬名。


(......まぁ、貞操観念が逆転する世界よりは)


「マシだろぉーけどなぁ!!」


剣先から鞭の形状を取っていたレイピアは元の姿へと戻る。そして瀬名は自身の最高速度で駆け出しキマイラを狩っていった。レイピアの刃は高圧水流が渦巻いており触れたと同時にキマイラの肉は綺麗に二つへと別れて切り裂かれる。


(流石に限界以上を出したらあの聖獣の時と同じになるっ、ならこの身体が持つ最大値でっ!)


瀬名は時折見せるキマイラの強化攻撃を受けながらも隙をつき大多数の獣の命を摘み取っていく。


「.....あいつ....オレも負けちゃいられねぇーか!」


ネストールは瀬名の戦いぶりに鼓舞され大剣を地面へと突き刺し周りの地盤が抉るように割られていく。するとキマイラ達は地盤が砕けた事により体勢を崩し、その隙を狙ったネストールによりキマイラ達の首は大剣の餌食となった。


「よし、ある程度の数を減らせる事が出来た。ズラかるぞ、セナ!」


ネストールは未だに戦闘を行うセナの襟首を掴みキマイラの顔を足場に古代都市にある建物の上へと飛び乗り、身を隠す事にした。アルセイドとネーレイスも二人を追い浮遊して建物の上へと降りる。


「取り敢えず、適当な建物の中へと身を隠し身体を休めるぞ。」


瀬名はそれに頷き古びた建物と建物の間を飛び距離をキマイラ達の群れから離す事にする。建物から下を見ると数多のキマイラ達が此方を見上げ牙を研ぎ澄ませていた。


(落ちたらひとたまりもないな、)


冷や汗を拭きネストールの後を追っているとネストールは一つの古びた廃墟を見つけそこに降りる。そして誰もいない事を確認するとネストールが魔術の詠唱を口にしようとするが止めた。


「此処に結界を張る。.....いや、嬢ちゃんらの方が強力なの張れるか。」


ネストールはアルセイドを見てそう言うと首を傾げたので瀬名がお願いをする事にした。


「アルセイド、この建物全体に結界を張る事って出来る?」


「出来る....ん、今した。」


あまりの速さに驚くネストールだが瀬名は疲れでその場へと倒れこむ。


「じょ、ジョン君!」


ネーレイスは心配して抱きつくが興奮したように顔がダラけていた。多方、疲れた自分を見て興奮でもしていたのだろう。アルセイドへと顔を向けると静かに笑みを浮かべ首を縦に振ってくれた。その行いに安心したのか瞼が鉛の様に下ろされ静かに眠りの世界に入るのであった。


「おい、そこの人間。」


瀬名が眠ったのを確認するとアルセイドは口を開きネストールへと言葉を向けた。


「俺か?」


ネストールは腰を下ろし壁に背をつけ目を瞑っていたのだがアルセイドの気配が此方に向けられている事に気づき目を開ける。


「そう、実はアルセイド、結界張ってない。」


「は!?」


アルセイドの一言に驚きの表情を浮かべすぐさま大剣を構えた。


「今、解く。」


次にアルセイドはネストールへと手を翳しそう言葉にする。ネストールは何事かと口を開こうとするが立ちくらみが襲い膝をつけた。


「......これは」


立ちくらみが引き違和感に気づく。


「どう言う事だ、....この廃墟一体にキマイラ共の気配が感じるが襲って来ねぇ。.....まさか、」


「察っしがいい人間は好ましい。そう、アルセイドが操ってる。」


アルセイドは意地の悪い笑みを浮かべ壁を破壊し外のキマイラの姿達を見せた。ネストールは警戒を解かずその姿を眼に焼き付ける。包囲するキマイラは頭を垂れ指示を待っていたのだ。


「あんた、一体.......それにオレの感覚を麻痺させてたのは....」


無限に見えるキマイラの群れを背にアルセイドは手を広げネストールへと畏怖を与えた。


「お前はセナにとってのいい教材になる。裏切ってくれるなよ?」


クスっと笑いアルセイドはキマイラの方へと向き直りキマイラ達へと指示を送った。


「お前たちの主、いやぁ、“旧”主の首を取ってこい。」


瞳の深淵の奥には静かに真紅の眼光が覗かせていた。その指示を受けたキマイラ達は一同に巨大な塔へと向かって行く。外は曇りでいくつもの日の光が雲の間をすり抜け地上を照らしていた。


(........神.....いや、魔王だ....)


ネストールは唾を呑み込みその禍々しいアルセイドの背中を見つめるのであった。それから暫く経つと瀬名は意識を取り戻した。


「あ、ジョン君!」


ネーレイスは顔をぱあぁっと明るくし瀬名の目覚めを喜ぶ。


「ネーレイス?あ、あぁ、寝てたのか....ごめん、迷惑掛けた。」


「い、いえ、ぐふふ、寝顔を独り占め出来た訳ですし、ふふ。」


ネーレイスに膝枕をしてもらっている事に気づき身を起こす。だがネーレイスに強引に引っぱられ膝へと戻された。


「......あれ、他の二人は?」


この部屋にアルセイドとネストールの姿が無いことに気づくとネストールが入って来た。


「き、消えて下さい、どうぞ。」


ネーレイスはネストールへと嫌悪感丸出しで虫を払うようにシッシッと手を振る。


「ひでぇなぁ、嬢ちゃん。それよりも起きたか、セナ。」


「あぁ、ゴメン迷惑掛けた。「セナ!」アルセイド!?」


いきなり現れたアルセイドに抱きつかれネーレイスから引き剥がされる。


「次はネーレイスの番だから。」


頬をぷくっと膨らませ怒るアルセイドにドヤ顔を見せるネーレイス。


「ふふ、此度はいい思いが出来ました。ご馳走様です、ジョン君//」


唇へと手を当てそう言うネーレイスに色気を感じ赤面するがすぐにアルセイドに顔を向けさせられアルセイドの物だと抗議を叫ぶのであった。その姿を遠目で見るネストールは表情が固くなっていた。


(この女神(ニュンペー)達....行動原理がすべてこの男、セナを中心として回っているのか......神が此処まで人に尽くすなぞ本来はありえない。)


ネストールは背を向けその部屋を後にし廊下を歩きながら考える。


(強大な力.....勇者ペルセウスの様に神器を授かるのでも無くアキレウスやオレの様に不死や寿命を与えるでもない、神自らか御神体を下ろし人の為に動く.....)


ネストールは一部屋の窓際へと立ち、外の景色を眺め口元を手で抑え静かに笑う。


「......これはある意味天啓に等しいのかも知れないな。」


そう呟くとネストールはその部屋を後にし瀬名達の元へと戻るのであった。


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