Episode58 "キマイラとスフィンクス"
古代都市や遺跡跡と言う場所はよく映画などの舞台となる。圧倒的知名度を誇る冒険物の代表作インディー○ョンズなどが例だろう。そしてこう言った映画に確実にと言っていい程に出るのは冒険者を脅かす化物だ。
「「グルルルルルッ」」
古び朽ちているこの廃棄場にも似た巨大な古代都市の門を潜ったと同時に錆びついていた筈の門は一人でに閉められ獣達が姿を現し始めた。
(二体だけ、それにさっきの霧の中で見る触手よりは弱そうだ。)
瀬名は獣の姿を捉え触手の危険度よりも下だと判断する。二対の獣達はゆっくりと近づいてくる。
「セナ、気をつけろよ。彼奴らは見た目以上に危険だ。俺の戦士としての感が、いや将としての観察から通常の魔物ではないと推測できる。」
ネストールは大剣を引き抜き構える。その行動を見て瀬名もネーレイスから渡された新たなレイピアを鞘から抜き警戒度を高めた。
「セナ、今回はアルセイドとネーレイス、戦わないから「え!?わ、私はジョンく」ネーレイスは黙って。もし仮にアルセイド達がテュポーンと対峙する時が来たらアルセイド達にはあまり余裕が無くなる。そして、確実にそこの近づいてくる混合種やさっきの触手、蛇の残骸のような者達が戦っている最中に瀬名を襲うと思う。」
瀬名はアルセイドの発言を聞き理解をする。ネーレイスもその言葉を聞き口を閉じてしまった。
「ある程度の経験を身につけておけってことね。分かった。オレの勇姿を見ててくれよな!」
アルセイドは自身に対し過保護ではあるがしっかりとこう言う場面で自身についての事を真面目に考えてくれている事に感謝を感じながら何処か気持ちを昂ぶらせていた。
(確かに死ぬのは怖いし力をつけなきゃ死ぬ。でも今はそれよりも、貰ったレイピアを早く使いたい!)
「で、ですが、ち、近づい来ているのって、き、キマイラじゃあ、な、ないんですか?獅子の頭に雄山羊の体、大蛇の尻尾の姿をしていますし、口から火炎を吐いて、も、もし、ジョ、ジョン君に、も、もしもの事があれば、」
ネーレイスはおろおろと心配した表情でアルセイドと瀬名を交互に見る。
「大丈夫、キマイラの蛇に噛まれてもアルセイド達で解毒出来るし、炎を吐いて避けきれないと判断したのならネーレイスが前に出て相殺すればいい。それに....」
アルセイドはチラリと瀬名の握るレイピアへと視線を向けるとネーレイスはその動作に気づき静かにアルセイドの意見に同意した。
「奴ら、来なさった。嬢ちゃんらの意見に従うならオレは右をやる、セナは左を頼んだぜ!」
ネストールは大剣を担ぎ右方のキマイラに向け走り出した。瀬名もそれに続き左方のキマイラへと向け走り出そうとするが身体が反射的にその場からバックステップをする。
「っ!?」
駆け出そうとした場所には大きな爪痕が残りその荒々しい傷跡の上に混獣の足が乗っていた。涎がぽたぽたと垂れ肉に飢えた獣の様に瀬名をジロリと見るキマイラ。
(危なかった....動きがかなり早いな、....強化を無意識に使っているのか?)
そう考えているとキマイラは早い速度で突進をして来たので横回転を決め突きを一突き決めようとするが雄山羊の体から突如として山羊の頭が現れ突きを決めようとした手に角が当たり肩まで切り裂かれ血を吹き出す。
「ぐっ、」
瀬名はすかさず距離を取りもう片方の手でレイピアを握り直す。すると傷口の周りにはレイピアから突如現れた水が傷口を覆い痛みが引いていく。
(そう言う能力か.....)
キマイラは再び己を目指し迫るが瀬名は空中へと飛び上段からの攻撃を入れようとするが尾の蛇により肋付近に攻撃を受け吹き飛ばされる。
「ぐはっ、オールレンジかよ!」
肋付近を抑えつつ起き上がろうとすると眼前には獅子の牙が今か今かと瀬名へと迫ろうとしている。瀬名は瞬間的に足へと強化を流し込みキマイラの下半部へと潜りそれを避ける。そして避ける最中レイピアを後ろ右足部分へと突き刺すとキマイラの右足が綺麗に胴体から分かれた。そして下半部から出ると尾の蛇が噛み付こうと瀬名へと攻撃するがレイピアでその攻撃を防ぐ。
「「シイイイィ」」
レイピアに触れた蛇の牙は砕け悲鳴を上げた。キマイラは身を引き摺りながらも距離を瀬名から取り睨みつける。
「.....これは」
レイピアを凝視すると水飛沫を上げていた。
(そうか、神聖を帯びた高圧水流が剣に凝縮されているのか。)
キマイラへと視線を戻すと涎を垂らし先程よりも濃い明確な殺意を向けられる。
(このレイピア、かなりのギミックが隠されてる.....ありがと、ネーレイスちゃん。)
離れた場所で二人でティータイムをしているネーレイスへと視線を向け感謝の念を送るとレイピアは水飛沫を更に強くし瀬名の周りに水の防御壁を自分の意識とは関係なく創り出した。それと同時にその水壁にぶつかるキマイラの姿が現れる。
「おいおい、戦ってんのにぃ余所見かぁ?その加護付きなきゃ今頃冥府落ちだったぞ、」
もう片方の混獣と鍔迫り合いをしながら瀬名に対し喝を入れるネストール。そして大剣を力任せに振り上げ獅子の牙を叩き割りそのまま頭部の舌から上を斬りとばす。だが混獣はまだ地へとは倒れない。身体は獅子の肉体を棄て完全に雄山羊の姿になった。だが復活したはいいがキマイラの瞳には死への恐怖しか映っておらず直ぐさま背を向けネストールから逃げだす。
「おいおい、逃げるのか?...........まぁ、逃さねぇけど、よ!」」
既に尾の蛇は鍔迫り合いをする前に殺しており、残るは雄山羊のみの肉体であるキマイラは主人の元へと戻ろうとするが巨大な大剣が自身の背を貫き胴体に巨大な穴を開ける。腹からは大量の血が臓物と共に流れ出る。ネストールは逃げた獲物を逃さぬ様、大剣を槍の投擲にように射ったのだ。
「くっ、こいつ、しぶとい!!」
一方瀬名は、キマイラの噛み付きを避けながら攻撃を入れようとするがキマイラの必死による攻防で悪戦苦闘を強いられていた。
「「グルルルルル!」」
どうやら最後の足掻きで全体重を掛け瀬名へと飛びつこうする。
「レイピア.......」
ネーレイスから授けられたレイピアを強く握りしめ高圧水流を剣先に纏う様祈り飛びつこうとする混獣へ向け掲げる。
「「グルルルッ!ッグル、ググッ」」
レイピアはキマイラの頭部へと直撃しそのまま胴体を裂いて行く。そしてその巨体が地に落ちる頃には二つの肉塊と化し瀬名の両脇へと沈んだ。瀬名の身体は鮮血に塗られ端整な顔立ちもいくらかの血がこびり付いた。
「お、終わった.....」
緊張が解けたのか膝を地へとつけ深い息を吐く。そして瀬名はレイピアを鞘へと戻そうと立ち上がろうとするが背後から気配を感じとっさに振り向く、が一足遅かった。
「しまっ」
キマイラの尾、蛇が瀬名を飲み込まんと瀬名の頭部を巨大な口が覆ったのだ。だがその刹那、とても鋭く冷たい殺意がそのキマイラの尾である蛇の動きを止めた。
「消えろ_家畜にもなれない_‘廃棄物’が」
瀬名の視界が風船が割れた様に外の景色へと戻る。そして視線を下に倒すとアルセイドが立っていた。何処か不安が残るのか、アルセイドは瀬名のネクタイを掴み無理矢理唇を奪うとネクタイを離し話を始める。
「セナ、もっと用心警戒して。相手が勝利を確信した時が1番の隙になるから気をつけないとメ!だよ。ネーレイスのおバカがかっこつけてそのレイピアの能力、使い方を説明しなかったのは瀬名に負担になってたと思う。だけど、セナは頑張った。」
アルセイドは自分へと抱きつき褒める。その姿を目にしたネーレイスは口に茶菓子を含みながらも此方へと駆け寄り自分へとアルセイド同様抱きつく。だが二人は直ぐさま自分から離れ古代都市の奥先に建てられたタワーの様な最上階部を凝視した。
「.........見てる。」
「ふふ、見てます、観てます、視てますねぇ?」
邪悪な笑みを顔に貼る花嫁達。
「嬢ちゃん達どうした。なんか見えるのか?」
ネストールがアルセイド達が視る方向を見るが何も見えない事に疑問の表情を浮かべる。
(......彼処を目指せば良いって事ね。)
瀬名はアルセイド達が"観"ている何かが今層の鍵である事を理解する。
「誠に面白きかな。廃棄物を二匹放れば事を終えようと思えば生き残りよおた。母より授かりしこの古代都市、そう容易くはないぞ旅人らよ。」
古代都市の最上の位置に位置する数多の柱が並び建つ場からライオンの身体、美しい人間の女性の顔と乳房のある胸、鷲の翼を持つ怪物が瀬名達が立つ門前へと顔を向けていた。そしてその傍らには自身よりも巨大な二対の頭部をつけた巨犬が目を瞑り自分達へと迫る何者らかの違和感に眉間を曲げ全ての廃棄物達へと思念を送り指示を出すのだった。




