表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/99

Episode56 "強力関係"

「一難去ってまた一難とは良く言った物だな。やっと追いついたぜ、」


霧を大剣で引き裂き視界をクリアにする。大穴を開けて姿を現したのはこの層に辿り着いて間も無く命を助けて貰った人物だった。


「アンタは.....ネストール!」


「よう、久しぶりかって言ってもさっき会ったばかりだけどな。」


鼻に親指を当て払うと大剣を腰に戻した。


「すまねぇ、自分でも情けないのは承知なんだがさっきの借りを今返しちゃあくんねぇか?」


借りと言うのは崖から落ちた際に助けられた事を指して言っているのだろう。


「流石にあの中にずっといたんじゃあ加護があっても死んじまうぜ。」


頭を掻きながら苦笑いを浮かべるネストールに何処か親近感が湧くが前の層で危うく殺されかけた事もあり容易く味方をする訳にはいかない。


「アンタ、何で俺をあの場で助けた?あの街を出る前に俺たちを殺そうとしただろう。それに、アンタはアルセイドに殺された筈だ.......何故、生きてる。」


「オレが殺された?はは、何の冗談だ。オレが目を覚まして街へ出りゃテーセウスやオデュセウスの気配もねぇ、そんでおめぇらの所に行ったが行方不明と来た。街の奴らも自分を見るなり泣き出して話に何ねぇから街に張り巡らしといたオレの魔術で確認したらおめぇら含めて街の外に出た痕跡を見つけてな急いで追って来た訳だ。」


ネストールは弁舌にその口を滑らせる。瀬名はその話を聞き嘘を見分ける花嫁(ニュンペー)へと視線を向けるとアルセイドが首を縦に振った。


「セナ、此奴はアルセイドが殺した奴と姿形は似てるけど全然違う。」


それを聞き瀬名は手を顎に置き考える。


(あの二人と行動をしていないと言う事は此奴は見限られたか、それとも何かしらの理由で街へと置いて来たのか。街の守護........待て、あの街の防衛は如何した!?聖獣は倒しけど牛頭の残党が確実にいる筈だ。)


階層の頭を消したとは言え牛頭の残党が消える訳でもない。そしてオデュッセウスとテーセウスが消えネストールも後を追って来たと言う事はあの街は無防備になる事を意味する。


「ネストール、アンタ、あの街の防衛は如何したんだ?」


「あぁ、それなら心配はないぜ。女将とその弟子達が居るからなぁ。」


「女将......さん?それって俺達が止まった宿の女将さんの事か?」


瀬名は驚いた表情を見せるとネストールは笑いながら説明を始めた。


「あぁ、本当は誰にも言っちゃあなんねぇだがあの人は一女神だ。」


アルセイドとネーレイスがネストールの前へと出て胸ぐらを掴み上げるとネストールは困った顔で自分を見て来たので二人を落ち着かせた。


「唯の人間だと思った.....」


「わ、私も、です。だ、だれ、ですか?」


この二人にも正体を悟らせぬ女神とは誰なのか瀬名も気になるが名を聞いたところでギリシャ神話の神々に詳しくない瀬名は自分の知識無さを心の中で悔やんだ。


「「死の女神」、「女魔術師の保護者」、「霊の先導者」、「ラミアーの母」、「死者達の王女」、「無敵の女王」と色々な呼び名はあるがこれだけ聞きゃあ、流石に分かんだろ。」


「......女神ヘカテー」


アルセイドがボソりと呟くとネーレイスは首を斜めに曲げ考える仕草を取る。


「何で、女神ヘカテーさんは、この塔から、出ないんでしょうか?」


素朴な質問にネストールは笑う。


「あの人にも人情って物があるのさ。」


アルセイド達は理解が出来ないと言う表情を取っていた。恐らく弟子達の事を思い共にある事を選んだのだろう。


「嬢ちゃんらも半神か神だろう?なのにこの塔から出てないって事は同じって事さ。」


ネストールが自分へとアルセイド達から視線を移すとアルセイド達は何かを理解をしたようで自分の手を握って来た。


「.......え〜と、取り敢えず、女神ヘカテーって誰?」


女神ヘカテーが凄い存在だと言う事は雰囲気を察すれば大方分かる。そして数々の二つ名がその女神の強さを表しているのだろう。だが、説明をされなければ分からない。


「しょうがないなぁ。アルセイドがお話してあげるから、来て。」


何処からともなくソファを取り出したアルセイドは腰掛け瀬名を横へと来るよう手招きする。


(.........大穴もいつの間にか修復してるし。)


アルセイドへと足を進ませながら大穴へと目を移すと破壊される以前のように修復されていた。そしてアルセイドが出したソファへと腰掛けようとすると何故かネーレイスの膝の上に座っていた。意図的にではなくいつの間にか自分の座ろうとした場所にいたのだ。


「ネーレイス、何時もいつも、セナとの時間を邪魔して........」


アルセイドは怒るようにネーレイスを睨みつけるが、ネーレイスはそれを無視し自分をガッチリとホールドした。表情はアルセイドとは逆に御満悦の様だ。


「役得♫役得♫役得です♫ふふふん♫ふふぶっ!?」


鼻歌を歌いながら背中に顔を当てスリスリするネーレイスにアルセイドはブチ切れビンタをかましソファから叩き落とす。瀬名も一緒に吹き飛びそうになるがアルセイドが腕をしっかりと掴んでくれていたお陰で吹き飛ばなくて済んだ。


「邪魔者はいなくなった。セナ、よしよし。」


何故か膝枕をされる瀬名の姿を壁に背を当て笑うネストール。


「ははは、お前らは何処にいてもそんなん何だな!まぁ、此処にいりゃあの霧の影響も無さそうだし嬢ちゃんも甘やかしてないで女将、いや女神ヘカテーについて話してやんな!」


「命令をするな、寿命永き人間。アルセイドはいつでもお前をこの結界の外に放り出す事が出来る。それとも以前のお前に模した人形の様に頭を捥いで此処の装飾品にしてあげてもいいんだよ。」


にったりと微笑む姿は神と言うよりも悪魔に近い怖さを出していた。瀬名は手をアルセイドの顔元まで近づけデコピンをする。アルセイドはデコピンをされた場所をさすりながら心底嬉しそうな表情で天使の笑顔を瀬名へと向けた。


「こーら、ダメだろ〜そう言う事言っちゃ。アルセイドは本当は優しい子なんだからもっと可愛い笑顔を見せなきゃ「やっ」やって「セナの前でしか笑わない」もったいない「なくない」強情だな「セナも」


「「ぷっ、あははは」」


二人はそんなたわいのない会話を繰り返しお互いに笑った。その姿をネストールは何処か微笑ましく眺めるのだった。


「セナ、簡単に言うとね、ヘカテーはオリュンポスの神々と連になれる程の強力な神様なんだよ。ギガントマキアーってちょっと昔にあった神々の戦でヘカテーは単騎でギガースが一人クリュティオスを倒したんだよ。」


「ギガースって巨人であってるよね?」


「うん。そして眷属として、女神エリーニュス、冥精、エンプーサ、モルモーとかの魔物を従えてるの。って言っても冥精はランパスが全部取り込んだからもう眷属じゃあ無いけどね。それに夜と魔術、月の女神としてアルテミスやセレーネーと同一視、混合もされるけど実質的に実力が上なのはヘカテー。でも月が最も星に近づいたり満月が出てる時はアルテミスが上になる。「ちなみにアルセイドは?」花嫁(ニュンペー)はギリシアにて最強。」


何処の◯向一族何ですかねぇ。


「つー訳で街の心配は要らない訳よ。嬢ちゃんの説明の通りあの女神さんが入れば安泰だ。自慢気に結界を張ったのは俺だってオデュセウスが言ってたがアレは殆ど女将さんらのお陰だ。あの街、空間でさえ弟子達や眷属共が創ったもんだしなぁ。だがその事を知ってるのは俺達と女将さん連中だけだ。街の奴らは全部俺らがした事になってる。」


謙虚な事だと考える瀬名は一人の女性が頭を掠めた。


「と言う事はメライナさんも女将さんの弟子って事か?」


「メライナ?あぁ、メーデイアか。最近、名を変えましたって言ってたなぁ。テーセウスと仲があんまし良く無いから話さないがあの女はかなりアレだよ。」


遠い目をしながら言うネストールに瀬名は同情した。大方、テーセウスと彼女の仲裁でも思い出したのだろう。余談だがメーデイアが逃避行の際訪れたアテーナイでアイゲウス王は喜んで迎え、メーデイアと結婚した。しかし、メーデイアはテーセウスを毒殺しようとして失敗し、テーセウスによって追放されたのだ。その時の因縁が原因で二人はかなり仲が悪い。


(かなり興味深い話だな、まぁ、あの場所へは多分二度と戻らないだろうけど。)


「まぁ、命の貸し借りはこれでチャラって事だ。当分、世話になるぜぇ。」


瀬名は命を救われたのだしいいかとアルセイドの方へと顔を向けるとグルルっと威嚇をする様にネストールを睨んでいた。


「わ、私を放置するなんて、なんて、こ、こ、こ、興奮が収まりません!」


ネーレイスがやっと起き上がり瀬名の横へと腰掛ける。


「ネーレイスちゃんって可愛いのに残念だなぁ。」


「か、可愛い!?ふふ、ふひ」


(いっつも思うけどネーレイスちゃんって自分の都合の良い所しか聞かない気がするなぁ。いや、アルセイドもだけどね。)


瀬名はアルセイドの膝もとから顔を上げ立ち上がる。


「ネストール、またアンタが裏切ったら今度こそアルセイド達が殺すから無駄な事はやめとけよ。」


ネストールの元へと近づき右手を差し出す。


「人任せか、セナ?そもそもオレは裏切っちゃあいねぇ。お前らといりゃあオデュセウス共と必ず会う筈だからそれまでの間、よろしく頼む。そっちの嬢ちゃん達もなぁー!」


差し出された瀬名の手を握り協力関係が成立する。一方アルセイド達はネストールの挨拶を無視して色々な物資を出し寛ぎ始めていた。


「ははは、楽しくなりそうだ。」


ネストールは寛ぎ始める二人を見て皮肉を言いながら笑った。


「あぁ、全くだ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ