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Episode53 "栞と新団員”

「準備はいいか?」


プリギュアの早朝、宿の前にてバルトロメウスは団員に確認を取る。既に時は花嫁襲撃から二日が立ち傷もある程度癒えていた。


「えぇ、それよりも気になることがあるのだけれど....そこに立つ男は誰かしら?セレナさんとレシさんが警戒をしているという事は、その男には注意すべき何かがある事を意味するわ。」


リディアは口を開きバルトロメウスの隣に立つ男、カライスの方へと視線を向け話しを続ける。


「あぁ、こいつは新たな団員だ。「「は!?」」どうした?何か不都合でもあるのか?」


セレナとレシは声を上げ反対をする。


「バルトロメウス、君は....その男を知らないのか?その男は有翼の英雄カライスだ。我々が君達と合流する前に交戦した東国の兵士だ。」


「そう....そいつの....仲間に....レヴァン...殺された...」


バルトロメウスは眉間に皺を寄せカライスを睨む。今朝、宿前で待ち合わをしていたらこの男が現れたのだ。そしてヘーラクレスからの新しい補充員であることを伝えられた。それに加え、前前日に助けて貰った恩義もあり信頼に当たる人物ではないかと感じていた。


「えぇ、そして我が兄、テーゼースはヘーラクレス殿の命令によりメレアグロスに殺されました。私は.....いえ、私の事は認めて貰わなくて構いません。私は唯、貴女方の旅に同伴し協力する様にと命が下っただけです。」


「そんな事で....旅の同伴...認めると...思う?」


「あぁ、いつ命を狙われるかも分かったものじゃあない。」


魔力の渦をレシの周りから感じ始める。だがリディアはレシの前へと出る。


「レシさん、止めなさい。この街の住人を巻き込むつもりかしら?セレナさんも槍を納めなさい。」


レシは魔力を抑えるが警戒を解かないでいた。リディアはどうにかしなさいとバルトロメウスに視線を送らせると頭を抑えて二人へと説明を始めた。


「聞け、レシ、セレナ。あの花嫁(ニュンぺー)どもと戦った後にオレ達が意識を失ったのは分かるだろう。その後、誰がオレ達を安全区まで運んだか分かるか?.....この男、カライスがオレ達の身を城門前まで運んだのだ。オレ達を殺したくばその場で殺されていただろう、だがこの男はしなかった。この意味が分かるな?」


「...それは.....」


「真か...!?」


二人は驚きの表情を見せていた。


「あら、貴女が運んだものだとばかり思っていたわ。感謝するわ、片翼の人。」


リディアはそっけなくカライスへと礼を言う。


「む、カライスで構いませんよ。」


片翼と言う言葉に嫌悪感を出すカライスに笑みを浮かべるリディア。


「....あの場で、私達を助けて貰ったことには感謝するが、貴様を仲間だとはまだ認めんよ。だが、けっして裏切るような事はするな。私からは以上だ。」


「.......「レシ」.....分かってる....貴方が、もし....変な動きを少しでも見せれば.....レシが...貴方を.....殺すっ!.....」


何とか上手くいったことに胸を撫で下ろすバルトロメウス。


(ジョンがいれば、この殺気に満ちた空間の場をかき乱すのだがな。いない者の事を言ってもしょうがないか。)


「さて、北東へと向かうぞ。」


プリギュア街門を抜け薄い水面の上を歩く一行は後ろから声をかけられる。


「あのぉ〜まってくださぃ〜!」


レーダーと呼ばれる元アタランテーの部下だがその名で呼ばれているところをあまり見たことがない。


「レートー殿、どうしたのですか?」


セレナが息を切らし息を吐いているレートーの背中を擦りながら聞く。


「もぅ、レーダーだと何度も言っているではありませんかぁ!」


この人の口調は激情すると悪くなるが通常時はいつも敬語なのだ。


「ははは、いやぁ、レー卜ー殿の方が呼びやすくて、つい。」


「それで、どうしたのかしら、レー卜ー(・・・・)さん?昨日にお別れの挨拶は済ませたものだと思ったのだけれど。」


「絶対ワザとですよねぇ.....いえ、キュベレー様から渡して欲しいと頼まれたものがありましてですね。それを渡すのを忘れていたので届けに来たのです。」


レー卜ーはバルトロメウスへと駆け寄り一つの栞を手渡す。


「あの、もし仮に貴方方が瀬名様とお先にお会えになった場合に備えてこれを渡せと.....」


疎通の魔術が刻まれた栞、それもとても強固な神威を纏わせた強力な物だった。


「これで仮にキュベレー様が先に見つけたとしても貴方方に瀬名様の安否をお伝えすることが可能です。逆も然りなのでどうかなくさないよう気をつけて下さい!それでは良い旅を!」


急ぎ足で身体をプリギュアへと向け鶉に変身すると街へ向け飛びさってしまった。その光景に一同は口を開かせていた。






丁度同じ頃、瀬名達は未だに先の光を目指し通路を歩いていた。


「いや、歩き過ぎぃ!辿りつかないよ!ゴールが見えてるのに全然あっちに近づいてないし!」


「オンブしてあげましょうか?ふふ」


目元に隈がある花嫁、ネーレイスは腰を下ろしちょんちょんと自分の背中をタップする。


(果たして女の子に背負わされていいものだろうか?男子としてのプライドは保てるのだろうか?そもそもプライド何てあるのだろうか?....うん)


「.....ないです!」


わーいとネーレイスの背中に乗り込みネーレイスの首元に腕を絡める。


「ぁぁ、ぁ、ぃぃ、ジョン君のぉ、感触がぁ、ぁぁ、完食でしゅぅ」


ハァハァと息を荒げるネーレイスにドン引きの表情を見せる瀬名。そしてその横に歩く森精アルセイドはジト目で二人の姿を見ていた。


「ずるい....アルセイドも、やりたい。」


アルセイドは瀬名の裾をひっぱりねだるがアルセイドの身長を見て瀬名は無理ではないかと考える。


「だ、ダメです!わ、私が今、じょ、ジョン君を、ぐへへ、感じてってあれ?どうしたんですかジョン君、いきなり下りてしまわれて?「変態」ぐふっ!ぁぁ、ぃぃでしゅねぇ、えへへ、もっと罵倒を、ふふ、吐いて下さって構いませよぉ。」


瀬名は身の危険を感じネーレイスの背中から身を下ろす。そして変態と小声で聞こえない様に言ったつもりだったのだがどうやら聞こえたようで鼻血を出して興奮し出した。


「アルセイドが身長ないのは分かる.....「なら幻覚、幻術、催眠を使うのは反則だよぉ」ぅぅ、ならせ「精神系の攻撃でオレの思考を弄るのはあまり好きじゃないなぁ」ずるい、ずるい、ずるいぃぃぃ!アルセイドもセナを甘やかしたり、甘やかせたり、甘えたりしたいのにぃ!」


頬を膨らませながら怒られても可愛いだけだと心の中で思う瀬名。


「分かった.....じゃぁ、そこのドMに変態って言ったみたいに、アルセイドにも変態って言って!」


その斜め上のリクエストに瀬名は口を開け唖然とする。


(.........何がどう分かったんですかねぇ?)


瀬名は自己的にそれは言いたくないと思いアルセイドへと言おうとするが。


「いや、それは「やって!」でも、だっ「やりなさい!」アルセイドは「やれ」はい.....」


脅しには勝てなかったよぉ(女騎士調教完了後風)と項垂れる瀬名であった。


「はぁ、しょうがないか。」


自分でも馬鹿な事をしようとしてるのは分かるけど是非もなし。


「ん、来て?」


キョトンと首を傾けるアルセイド。瀬名はアルセイドの近くにより耳元で呟く。


「アルセイドの.....変態」


イケメンボイス120%を使い呟く。恐る恐るアルセイドの顔を覗き込むとものすごく赤面をしていた。眼をぐるぐると回しながら鼻血を垂らすその姿に瀬名は苦笑をしてしまう。


「ネーレイスの気持ち....凄い分かる.....かも....変態でも....いいかな?」


「でしょ!アルセイドちゃん!むふん!」


鼻血を裾で拭きネーレイスと熱い握手をし意気投合をする二人。


(変態が.....増えた....)


もうイヤだ、と溜息を吐く瀬名であった。


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