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Episode52 "カライス"

いくつもの剣群が立てられた丘墓にてメレアグロスとヴァシリスは黙祷をする。


「早過ぎるなぁ、死ぬには早過ぎる。まだ此奴は三十の時も生きていない若造だ。真っ直ぐな奴ほど先に死んじまう。」


ヴァシリスは立てられた一振りの剣へと酒を流しその余りを自分の口へと流し込む。


「実力はありましたよ。ただ、強者との経験があまりにも少ない。彼自身もそれを自覚の上で'自壊の双手'を使ったのでしょう。仲間へとテーゼース君の刃が向かないように、と。」


メレアグロスは冷静にそう分析すると沈みかけの太陽が照らす淡いオレンジ色の空を見上げる。


「さて、行きましょうか。」


何時もの態度とは打って変わって冷静なメレアグロスにヴァシリスも顔を引き締める。


「ああ、東国にな。」


二人は置いていた二頭の馬を呼び寄せ自分の馬へと乗り込み東国へと目指すのだった。




一方、同じ頃カライスは巨大な訓練場にいた。


「あんた有翼の英雄だろう?何でそんな英雄様が東国の味方なんかしてるんだい?」


エフィはカライスの対面へと立ち聞く。


「....」


「そうかい、話したくないかい。まぁ、いいけどねぇ。唯、あんたには一つ言っておかなきゃあならんことがある。仲間を裏切る事だけはしないでくんな。」


エフェは真剣な顔つきでカライスの瞳を捉える。だがカライスは鼻で笑った。


「既に裏切り行為をしている私に何を....」


ヘーラクレスに言われた通りに行動しているカライスにとって既に自国、すなわち東国を裏切り西国の手出すけをしようとしているのだ。そんな男に裏切りをするななどとカライスにとっては皮肉にしか聞こえなかった。


「はは、違いないねぇ。まぁ、私が言えるのはこんくらいだ。そして、その鎧の上からでも構わんからさっきアンタにやった西国の軍服の上着、着て行きな。」


エフィと共に訓練所まで歩いて来るときに彼女の部下から手渡された黒の軍服の上着をカライスは着込む。翼は出し入れが可能で今は身体の中へとしまっている。ちなみにカライスはメレアグロスに左翼を槍で貫かれた事により右翼しか使えないのだ。


「さてと、あんたら準備は出来てるんだろうねぇ?「「「はい!(アネ)さん!!!」」」団長と呼べと何度言えば分かる馬鹿ども!」


訓練場には百人の魔術に秀でた者達が集結していた。そして彼等はエフィの事を姉さんと呼び怒鳴られる。だが彼等は怒鳴られた事により嬉しそうな表情を見せお互いに笑い合っていた。


(....仲間、ですか.....)


カライスは過去の冒険を思い出し何処か寂しげな表情を見せた。


「そんじゃあ、アンタをアイツ等の所に送るから魔法陣に乗んな。」


カライスは魔法陣へと進み周りの兵達が同時に魔術詠唱を開始して行く。


「「「円環の輪_人指しの煌_連なり繋がるわ人類の理_繋ぎ満たせ_求め届けよ_奇跡を円陣へと_軌跡を彼方へと_求め届けるは双結の終点_転移層人結(メターバシアマギア)」」」


カライスが踏む魔法陣は光を帯びカライスを包み込んで行く。カライスは静かに目を瞑り転移に備える。


「セレナにあったら伝えてくんな、私は元気だってねぇ。」


エフィのその言葉を最後に魔法陣に立つカライスの姿が消え去った。


「無愛想な男だ.....さて、終わった事だし勤務に戻るとしますかねぇ、あんたらも早く仕事に戻んな!」


エフィ含める集まった兵達は解散し元の仕事現場へと戻って行った。



「..........」



カライスは無事、転送に成功したようで陸に足をつける。


「此処は......何処だ?」


カライスは巨大なキノコが生える森林の中へと転移したようで自分が何処に居るのか不明だった。


「っ.....」


人の気配を感じすぐさま木の影へと身を隠す。


(....東国の者でしょうか?.....)


木影から顔を覗かせると先へと森林の奥へと進む男の姿が見えた。


(脅し情報を、っ!?)


身を乗り出しその男の背後へと近づこうとするが圧倒的な殺意が漏れ出していることに気づきすぐさま身を隠し尾行することにする。するとその男は口を開き独り言を呟いた。


「.....面白い事をしていますね、僕の花嫁達は.....」


(........花嫁....)


気配を消しながら彼の姿を追っていたが姿が突如として消える。そして彼が話した花嫁と言う言葉にヒュラースの顔が頭を過った。


(あの男は、もしや.....ヒュラース....さん?)


そう思いその場を駆け出し消えた男の影を追うが足場がないことに気づき足を止める。下の地上からはかなりの距離がある崖で片翼の翼を羽ばたかせ降りようとする刹那、爆音が此方から見える街から鳴り響きカライスは驚愕する。


「な!?いったい!?」


崖の先にはいくつもの天宮、空に浮く大地が地上へと沈んでいる。そして至る所からは煙、炎が出ており正に戦火のまっただ中だと言うことが容易に分かった。


「此処に飛ばされた、ということはバルトロメウスと言う男が率いる団はあの中にいると言う事でしょう。行くべき、でしょうか.....いえ、行かなければならない。私は.....」


カライスは片翼の翼を広げ地上へと降りる。降りた際に地上に張る薄い水面の水飛沫を上げ新たに着た黒衣の上着を濡らすがカライスは気にせず街へと向かった。


「戦争....いや、違う?」


街に入れば無残な兵達の死骸を目の当たりにするが通常とは違う死に方にカライスは疑問を持つ。切り傷は確かにあるがどれも惨い物なのだ。身体の半分が弾け飛んだもの、外傷がないのに死んでいる者達まで。


「これは権能、加護による上位者達の戦い!」


幾人かからの死体からは何らかの神性による外傷を感じカライスは冷や汗を流す。すると突然大きな叫び声がこの先を越えた城門の付近から聞こえて来た。


「見つけたぞ!!化け物め!!!」


カライスはすぐさまその場へと足を運ばせると数十人が突如として仲間割れを開始し最後の一人が幼き顔を持つ少女により殺されるのを目にした。


「アルセイド、君は一体」


城門近くの階段にて腰抜かす青年はその少女に向けそう訪ねた。カライスは建物の物陰からその様子を伺っていると少女はにっこりと笑いその青年の質問へと答えた。


花嫁達(ニュンペー)だよ」


カライスは死の匂いを感じその場から去る。だがカライスは気づいていなかったアルセイドが瀬名の元へと戻る際にカライスへと視線を一瞬向けていた事を。


「はぁ....はぁ.....何だ、あの化物は...何故、あの青年はあの重圧に耐えられる、あれは、人ではない..」


狭い通路へと駆け込みその場へと膝をつけ息を整える。


(此処にいては、私の命はない.....考えうる可能性としては神々の闘争の渦の中です...この街を離れなければなりませんが.....くっ、これも試練なのですか....ヘーラクレス殿...)


「何処にいるのですか、バルトロメウスと言う方は。」


カライスは立ち上がり慎重に街の中を進んで行く。気配は最大限に隠し人影が見えればすぐさま隠れた。しばらくするといくつもの場所から再度、爆発音などが鳴り響きカライスは街に響く爆発音の元を探す事にした。


「ん....何ですか?これは....」


カライスの立つ場が突如として光を失って行くのだ。いや、この周囲一体が闇に包まれているのだ。


「はっ!?此処は.....」


カライスは数時間前までいたヘーラクレスの居城、西国城の王の間へと立っていた。


「メレアグロス、テーゼースを殺せ。」


ヘーラクレスのよる兄の殺戮命令。メレアグロスは躊躇無く手を空中へとかざした。


「ヤメロオオオオォォォォォォ!!!!」


すぐさま剣を抜きメレアグロスへと切りかかるがメレアグロスの身体へは当たらずそのまま剣は通り過ぎた。


「ほらほら~見ててー僕が手を下に下げれば、ほら?この通りテーゼ―ス君は蜂の巣の様に身体に穴を開けて死ぬんだぜぇ?」


メレアグロスは邪悪な笑みを浮かべ踏みつけるもう一人の自分へと言葉をかけた。それを見てかカライスは落ち着きを取り戻し考える。


「これは....記憶を...見せられて、いる?」


カライスは握る剣へと力を入れ周りへと警戒する。


「あれれぇー?この子ぉーわっちの夢でも落ち着いてるよぉー」


空間は崩れ暗闇へと戻る。しかし前には暗闇にもかかわらず鮮明に見える一人の少女がソファに横たわっていた。


「何者ですか....貴方は...って貴方はランパス殿!?何故、このような場所に?」


「小僧、何故わっちの名を......もしや、わっちのファンか?「違います!」む、そう強く否定せんでもいいだろうに。」


「ランパス殿が此処にいるということはヒュラースさんも近くにいるのですね?「さぁ、わっちは知らん。」


東国にいた頃、ヒュラースの周りにはいつも三名の花嫁達がいるのだが、ヒュラース本人の談では六人と契約していると言う。そして他の三人は誰一人として目撃情報がなかったと言うことは先ほどの青年に話をかけていたのが三人のうちの一人だったのだろう。


「まぁ良い。其方はヒュラースの味方っぽいので権能を解いっ」


権能が解かれると同時にランパスは驚愕の表情を浮かべその場から消失した。


(いったい何が....)


カライスは安心したのかその場へと倒れこむ。もし仮にそのまま彼女と敵対していれば死んでいたのは此方側だった。


「黒衣の上着を纏っている者を探せば見つかる筈なのですが....相手があの方々となると既に....」


カライスはヒュラースの花嫁達が桁違いの強さを誇る事に畏怖していた。そしてバルトロメウス一団が此処で彼女らと戦闘を起こしていた場合、確実に死んでいるのではないかと考える。


「ん?何ですか.....この禍々しい魔の瘴気は!.......鎖!?」


突如として目の前の空間からヒビが入り無数の鎖が家々を貫き固定したのだ。そしてその割れ目から何人かの人間が放り出された後、黒衣の上着を纏った男が姿を現しその場へと倒れた。カライスはその姿を捉え近くへと寄る。男以外の団員は以前戦ったことのある女兵士達だった。


「貴方が、バルトロメウスですか?」


バルトロメウスはカライスを見上げ虚ろな目をしつつも答えた。


「あぁ、.....すまないが、此処の兵か?オレはいい、こいつらを安全な場所まで連れていってくれないか?」


バルトロメウスは気力を振り絞りカライスへと嘆願する。カライスはバルトロメウスだと言う事を確認出来た事により即座にその願いに頷いた。


「そう、か。感謝する.....」


その言葉を最後にバルトロメウスは意識を手放した。


「さて、女三人男一人をどう運びましょうか。」


その後、城門前に倒れるバルトロメウス達を発見したレートーにより回収される事になる。先に眼を覚ましたリディアはバルトロメウスが自分達を運んだ物と勘違いをするのであった。


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