Episode51 "新境地"
中編始まります。
話は遡りメレアグロス一行が王都へと帰還した頃_
「転移は完了したよーだねぇ〜」
メレアグロスは王都への帰還に成功した事に笑みを浮かべる。元来ならばそのまま王城内部へと侵入したかったのだが転移魔法を阻害する魔術が西国全域に張られているいる為、限られた場所、すなわち団長以上の役職に就く者のみに転移可能な領域の場を設けられているのだ。
「転移魔術を自身の身で受けるのは毎度の事ながら肝を冷やすわい。」
西国への許可なくして転移魔法を行使すれば牢獄への強制転移、又は運悪ければ北南のいずれかに飛ばされるのだ。
「ヴァシリスさ〜ん、重いんで手伝ってくだいー」
ヴァシリスはメレアグロスを無視して先に行こうとするがメレアグロスにより止められる。するとメレアグロスが抱える男の内の一人が喚きだした。
「くっ、下ろしなさい!」
カライスはメレアグロスに抱えられている事に反抗する。逆に兄であるテーゼースは黙って受け入れていた。
「うるさいなぁー少し黙っててよ_眠れ」
魔術を掛け眠らされるカレイス。
「は〜い、ヴァシリスさ〜んキャッチ!」
両翼の兄弟を抱えるメレアグロスは地面に未だ倒れるアムピオーンを蹴り上げヴァシリスへと投げつける。
「うぉ、「はーい、よく出来ましたー!」......無茶をしおって、年寄りを労らんかいってんだ。」
「ならヴァシリスさんはボクを労らなくちゃあいけませんねぇー」
ヴァシリスは苦虫を噛む潰したような表情をとり黙って歩き出す。事実、メレアグロスはヴァシリスよりも遥かに年上なのだ。
「いやぁーそれにしても僕たち目立ちますねぇー、この翼が原因なんでしょうかねぇ〜ヴァシリスさん?」
「今すぐその槍をしまえ、こんな人の目の多い場で翼をもぐつもりか?「えぇ、そうですけどぉ〜。手羽先にしましょうか?」はぁ、血の気の多い奴じゃのぉ。馬鹿な事言っとらんではよぉヘーラクレースの旦那に面見せに行くぞ。」
ヴァシリスはメレアグロスの行動に首を横に振り止めるように言う。
「さてさてぇ、つきますたよぉーお城に〜。入りましょうゼ!」
メレアグロスはウキウキする様にジャンプをする。両肩に抱えられるテーゼースとカライスはジャンプをされた影響で苦しそうな表情を浮かべていた。
「「止まれ!!これより先は王城であるぞ!」」
すると城門前を警備する兵達がメレアグロス達の存在に気づき呼び止める。
「あらまぁ〜メンドくさいですねぇ?」
メレアグロスはため息を吐きヴァシリスへと視線を向ける。ヴァシリスはその視線を無視しその兵へと声をかけた。
「ヘーラクレースの旦那に会いに来たと伝えてくれんか?ヴァシリス=ヴェインとメレアグロスが帰還したと伝えてくれれば許可は下りる筈だ。」
その名を耳にしてか兵は顔を青くし謝罪をして来たのでそれを止めさせ連絡へと向かわせた。それから数分としない内に城門を守る兵士は戻って来て城門を開放した。その後、その兵士はヴァシリス一行達を王の間まで案内する。
「若いの、此処まで良い。」
ヴァシリスは兵を退かせ、王の間へと入室する。美しい装飾と共にステンドグラスから伝わる無数の彩色が間を照らし出していた。そして奥には王座にて腰を下ろす大英雄、ヘーラクレースの姿があった。
「予定よりも早い帰還だな、メレアグロス。」
メレアグロスへと鋭い眼光を飛ばすヘーラクレ―スに苦笑いを浮かべるメレアグロス。
「いやぁ〜、面白い者達を見つけてしまいましてねぇ〜、よいっしょ〜と」
ヘーラクレ―スの眼前へと両翼の英雄達を投げ捨てる。その衝撃でカライスの催眠は解け眼を覚ました。
「へ、ヘーラクレース....殿.....」
「.......」
ヘーラクレ―スは冷たい眼光で見下し両翼の英雄達は冷や汗を流しながら唾を飲み込む。そしてヘーラクレ―スは口を開きメレアグロスへと命じた。
「テーゼースを殺せ、メレアグロス。」
ヘーラクレースはメレアグロスへとテーゼ―スの殺害を命じる。眼を覚ましたカライスは反抗しようと身体を動かそうとするがメレアグロスに頭部を踏まれ動きを封じられた。
「暴れないでねぇ〜カライスくぅ〜ん。んんンンっ、君はそこで僕がぁ君のぉ兄ぃ、テーゼースを殺す所を見ていればいいんだよぉ〜。ほらほら見ててー、僕が手を下に下げれば、ほら?この通りテーゼ―ス君は蜂の巣の様に身体に穴を開けて死ぬんだぜぇ?」
メレアグロスは足先を器用に使いカレイスの顔を隣に倒れるテーゼースのほうへと向けさせる。そして、メレアグロスは手先に魔力を溜め空中へと翳すと数十本の槍がテーゼースの上空に現れメレアグロスは手を下に下げる。すると同時にその槍たちは雨の様に瀕死のテーゼースへと突き刺さりテーゼースの息の根を止めた。
「ああああああああああああああああ!!!!!メレアグロススススススゥゥ!!!!!!!!」
カライスは叫ぶ。そして魔力を爆発させメレアグロスをのかせようとするがヘーラクレ―スの権能により魔力を散らされた。
「ヘーラ.....クレース...殿....」
見下す様に冷たい視線がカライスへと向く。
「私は貴殿らが行なったアルゴタウナイでの行為を許せずにいる。」
ヘーラクレ―スは重い腰を持ち上げメレアグロスが踏むカライスの元へと歩いて行く。
「私は怒りを感じているのだ。貴殿らが私だけを置き去りに旅路へと戻ったのならば許せよう....だが貴殿らは我が親愛なる従者ヒュラース共にその行方を追う同士ポリュペーモスをも置き去りにし出航した。」
カライスの殺意は徐々に薄れていく。
「貴殿が仮に復讐をするのであれば、復讐の相手はメレアグロスではなく私だ。肉親を殺された痛み、共有することが出来ただろう。貴殿らが行った行為は正しく同じ事だ。」
ヘーラクレースは沈むカライスをよそにメレアグロスへと視線を向け足を離すように命令する。
「甘いなぁ〜ヘーラクレースちゃんはぁ〜。今、殺した方が楽なのにね。ねぇ、ヴァシリスさぁん?」
アンピオーンを下ろし壁に寄りかかるヴァシリスはふんっと鼻を鳴らした。
「アンピオーン殿.....悲しき男よぉ」
ヘーラクレ―スは倒れるアンピオーンに気づきそう口にした。
「竪琴の音色は心地良い物だった.....しかし、アポローン様とアルテミス様に子を殺され、妻のニオベーは石に変えられ失意の中、自殺をはかったものだとばかり思ってはいたが....強き漢よ。」
ヘーラクレースは衛生兵を呼びアンピオーンを治療所へと運ばせる。
「それでぇ〜戻って来た理由何だけどぉー」
メレアグロスは意地悪い笑みを浮かべヘーラクレ―スへと告げる。
「アルゴタウナイの生き残りの人達がどぉ〜やら東国に複数所属しているようなんだよねぇ〜?ねぇ、カライスくぅ〜ん?ヒュラースくん、生きてるんでしょ?」
カライスは眉に皺を寄せメレアグロスを睨みつけるとヘーラクレースはカライスの髪を掴み上げ持ち上げる。
「それは、」
カライスを投げ捨て王座へと再び腰掛ける。
「メレアグロス、ヴァシリス...貴殿らは東国へと潜入しアルゴタウナイの同士達を西国に連行するのだ。此方の要求を聞かぬのであれば切り捨ててしまって構わん。」
「ま、待ってくれ、ヘーラクレスの旦那ぁ、儂は地より海の方が本領を発揮出来る。その為にこの地へと再び戻ってきたのじゃが。」
ヴァシリスは新たな任務について不平を言う。
「案ずるなヴァシリス。其方には知恵と経験がある。そこのじゃじゃ馬を制するには其方のような聡明な人員が必要なのだ。其方の機転には期待をしている。」
「じゃじゃ馬って、ボクだって言う事くらい聞くのにねぇ〜ヴァシリスさぁん。て、あれ、聞いてる?はぁ、もー酷いなぁ〜。」
メレアグロスを放置しヘーラクレースへと視線を向けていた。
(儂は団の調整役に入れたと言う訳か....)
ヴァシリスは眼を瞑り考える。
「良し、分かった。引き受けよう。だが、儂が死した場合は国からの助金を儂の家庭に入れてはくれまいか?」
ヴァシリスは眼を開き更に過酷な戦地へと行くことに同意する。
「....承諾する。」
ヘーラクレースは頬に手を当てながらヴァシリスの要求を承諾する。するとタイミングよく新団長に昇格したばかりのエフィ=ザッカリアが王の間へと現れる。
「お呼びかい、アタイを?.......こっちもアンタの所為で忙しんだ、急いでくんな。」
姉御肌を感じさせるエフィは槍にて突き刺さるテーゼースの遺体に一瞥向けると状況を察し要求を聞いた。
「そこで膝をつく男をバルトロメウス達の元へと送ってはくれまいか?」
「ぶふっ!?」
メレアグロスは吹き出し、面白そうに笑い出す。
「ホントにいつも面白い事を考えつくなぁ〜」
「どう言う....つもりですか?」
カライスは震える声で聞くが何も答えない。
「も〜う、本当に君はにぶちんちんだなぁ〜。テーゼース君の方を生かした方が絶対に良かったとおもうんだよねぇ「メレアグロスゥ....!!」そうカリカリしないでよ~、はぁ、だから君嫌われるんだよぉ?まぁ何はともあれ君単体だと雑魚すぎるから旅で力つけて来いって訳さぁ?ヘーラクレスちゃんに復讐出来るだけの力をもしかしたら(笑)つけれるかもでしょぉ〜?」
煽りながら話すメレアグロスに怒りは沸くが黙って聞くカライス。
「テーゼースくんが無き今、君を最前線に送ってもフォローする奴がいないから君すぐ死んじゃうんだよねぇ?だったら一流の戦士達で固まるバルトロメウス君達の団の所で一緒に経験を積んだ方がいいでしょ?それくらい分かってよねぇ〜。」
「くっ....」
カライスは苦虫を噛み潰したように悔しい表情をとり頭を下げる。
(これも宿命....因果応報と言う奴か....)
カライスは立ち上がりヘーラクレスへと宣言する。
「ヘーラクレス殿.....私は必ず貴方を....殺して見せます。」
ヘーラクレスはその覚悟を受け止めカライスは背を向けた。
「大きく出たものだ......エフィ=ザッカリア、その者をバルトロメウスの元へと送り届けよ。」
「承知したよ。アンタ、私に着いて来な。」
エフィはカライスを引き連れ王の間を後にする。
「んじゃぁそろそろ儂らも行くとするかのぉ、メレアグロス。レヴァンを弔わねばな。」
「うん、そうだねぇ。」
ヴァシリスは先に王の間を後にする。メレアグロスは残りヘーラクレスを見上げる。
「君、何か隠してるでしょ?」
メレアグロスは眼を細める様に開けヘーラクレスを見る。
「.....」
「まぁいいけど、相変わらず寡黙なことだね君は。」
メレアグロスは背を向けヴァシリスの後を追った。その背中を鋭く見るヘーラクレスは何処か寂しそうな表情だった。




