Episode46 "下層への糸口"
ガガガッ!と音が鳴り響きながら走り出した瀬名の元へ骸車輪の一体が車輪をぐるぐる回しながら突撃してくる。それを瀬名は手に持つレイピアを縦に持ち両手でその突撃を防ぐ。レイピアにぶつかりながらも回転をしている骸車輪との間に火花が散り瀬名は強化を両腕へと流し跳ね返した。
「逃がさねえ!」
跳ね返した骸骨へと跳躍しレイピアでの一撃を決める。瀬名はすかさず骸車輪を足場に空中で回転し、着地地点にいる骸骨へとレイピアを振り落とし突きを入れる。二体の骸骨は塵と化し空中へと四散していく。
(危機的状況なのは確かなんだけど、高揚感が身体中を駆け巡る。)
戦いにもならない死闘ばかりに瀬名は身を投じていたが補助無しに敵を屠る事が出来て瀬名は高揚していた。
「アア」「アア」「アア」「アア」「アア」
脳へと死した骸の怨念が再び響いてくる。
(.......言葉が減ってる?)
瀬名は疑問を感じていた。怨念とは言え先程までは執念、願望、欲望が渦巻くように脳へと伝わって来ていたのに対し今は言葉ではなく呻き声しか聞こえなくないのだ。
「本当に訳がわかんねぇ事だらけだな、」
呻き声が鳴り響きつつも襲い掛かる骸骨達の群れ達をいなしていく。
「はぁ、はぁ、キリが無い.....ちっ」
既に百を越える骸達は斬り伏せただろうが無限に湧くように骸骨達は地から這い上がる。息も上がり始め、残りの魔力も少ない。
(前言撤回.....こいつらを切りながらあの青暗いとこ目指す。それを悟らせたらきっとさっきみたいに波になって襲って来るだろう、なら)
骸車輪へと意識を向け何とか誘い出そうと歩兵の骸骨共を斬り伏せながら近づいていく。
「ふっ!っ!!どぉらぁ!!!」
骸車輪へと近づく事で車輪が音を立て始める。地にある骨骨と削り合り砕きながらも瀬名へと迫っていく。
(よし、今だ!!)
骸車輪の突進を横に躱しレイピアを車輪と同化している骸骨部へと突き刺し軌道を変え青暗い場へと車輪を進ませる。瀬名は車輪の回転に巻き込まれないよう骸骨部へと足を乗せていた。
(勘だけど、たぶんレイピア抜いたら砂に還るなぁ。気おつけなければ。)
骸車輪は前に立ちはだかる骸骨共の群れを砕きながら進んでいくが徐々に車輪の部位が破損をしていっているのを確認する。
(ふざけんな、脆すぎんだろ!)
すると突如骸骨共の群れの中から現れた骸車輪二体により左右を挟まれようとしていた。
「クソッ!!」
レイピアを引き抜き残骸へと身を投じ両鋏の餌食になる事を何とか回避する。両端から挟まれた骸車輪は砂となり塵のように空気へと散っていった。
「くっ、どけ!!」
起き上がろうと身体を動かそうとするのだが背後から重心がかけられている事に気づき振り向くと骸骨の一体がしがみつくように抱きついていたのだ。
「アア」
首を噛みつこうと口を開けるが瀬名は肘へ強化を流し骸骨の助骨部を砕く。骸骨は体勢を崩し地へと倒れると瀬名のレイピアの一撃により地へと還って言った。周りを見渡すが無限とも思える骸骨共の群れが今か今かと瀬名に襲い来るが瀬名は攻撃を躱し反撃を喰らわせながら青暗く輝く目的の先へと目指す。
「はぁ....はぁ」
荒い息遣いとなり汗が頰を伝う。瀬名はかれこれ一時間を越える間、常に戦闘に身を置いているのだ。強化を使えるようになったとは言え戦闘とは無縁の現代育ち、過度の集中力の消費、そして戦闘での傷が瀬名の精神をすり減らしていく。
(あと、数メートル行けば!)
青暗く照らす正体と言うのは階段を照らす蒼き灯火だった。その階段は長く下へと続き先はさらに暗く強化をかけた肉眼でも見えづらくなっていた。
「はぁ、はぁ、しつこい」
骸骨達との戦闘に慣れた瀬名は極力身体を動かさず必要最低限の動きで道を切り開いていく。骸骨単体では動きは遅く対処は簡単だ、従って警戒するは骸車輪のみ。そして骸骨共は自分が宙へと跳躍しない限り波になろうとはしなかった為、行動パターンを把握すれば意外にも簡単に行くものだと瀬名は感じていた。
「やっと、あと一歩で、」
足を階段の近くへと歩ませようとすると骸車輪が左右後の三方向から骸骨共を引きながらも瀬名へと襲いかかって来た。瀬名は体勢を立て直す為に階段へと足を踏み入れる。だが、
「.........!?」
寸前のところで骸車輪は塵へと還したのだ。他の骸骨共もこちらへと迫り来るが塵へと還っていった。
(.......此処から先は境界線って事か)
階段から先の位置には骸骨達は入れないようになっていた。数体が塵となると骸骨の群れは機械の様に身体を崩し元いた地へと戻って行った。景色は最初に足を踏み入れた時の様に骸の残骸で埋め尽くされた世界へと戻る。瀬名は一息つき階段を何段か降りていく。
「何とか、生き延びる事が出来た。」
階段へと腰掛け横へと身体を倒す瀬名。
「少し、疲れた....な」
緊張の糸が解けたのか瀬名は瞼を閉じ一時の静寂に身を委ねるように眠りへとつく。
「セナ?」
時は少し遡り瀬名ジョンと逸れた頃、アルセイドも同様一人となっていた。
「「グルウウウ」」
アルセイドの目の前には瀬名の代わりに牛頭が涎を垂らしながら下衆た笑みを浮かべていた。アルセイドはその牛頭の横を何事もなく通り過ぎ歩いていく。
「セナ、何処?」
仮盟約と言えジョンの位置までは魔術を施した転移で移動できる筈なのだが発動しない事に苛立ちを覚える。
「「グウウウウウウウアアア」」
自分が相手にされていない事に気付いたのか牛頭は迷宮路の壁を破壊しながら斧をアルセイドに向け横切りする。
「貴方、邪魔、アルセイドは忙しい、分からないの?」
小指で斧の斬撃を受け止めるアルセイド。牛頭は斧を引き抜こうとするが抜けない事に焦りを感じるがそれは杞憂と化す。何せ両腕が消失しているのだから。
「「グウウウウ」」
あまりの痛みに牛頭は涎を撒き散らしながら女々しい雄叫びを上げるがアルセイドの瞳に曇りはない。野生の本能が牛頭に目の前の敵には絶対に勝てないと悟らせる。
「弱き者に暴虐を重ね、強き者に頭を下げる。人、動物、虫、全ての生命は愚かで矮小だね。ほら、また尻尾を振って逃げてるだもんね?」
牛頭はアルセイドに背を向け逃げるように走り出そうとしたのだが身体が言う事を聞かなかった。両腕からは血が噴き出し治療を受けなければ数分で死に至るだろう。
「「グウウウウウウウアアア」」
「生きたい?なら選んで。セナが何処にいるのかを答えてくれれば助けてあげる。」
アルセイドは金縛りに合う牛頭の前に立ち妖艶に笑いながら異形の物にそう問う。牛頭は直ぐに瞳の色を変え生へとしがみつくように媚びた目線をアルセイドへと送った。
「そう、良かった。"しばらく"は生かしてあげる。」
金縛りが解け膝が地に着く牛頭。アルセイドが見下していると頭を垂らし服従の姿勢をとる。
パチン「治してあげたよ?早くセナの所に連れてって」
指を鳴らすと牛頭の腕は再構築され再生された。そして牛頭は立ち上がるとアルセイドについて来るようにと視線で伝えると歩き出す。するとアルセイドは牛頭の肩へと移動し座った。
「急いで、アルセイド、我慢が出来ないから」
アルセイドは足をバタバタさせ牛頭の胸部を叩くが叩いた箇所は抉れ血が出るほどに強力な物だった。
その頃ネーレイスは_
「ジョン君!......?」
妄想に耽っていたネーレイスは現状を理解していなかった。
「ど、何処に、いったんですかぁ?ふふ、アルセイドちゃん、だ、ダメですよ?こんな悪戯は、ジョン君は私のへぶしっ!」
顔面を強打されネーレイスは壁を貫通し暗く大きな箱庭へと身を叩きつける。神の肌に傷は入らないが意図的に痛みを感じる事は出来る。最早ネーレイスにとって打撃を受けたと言う事実だけでも喜び悶えるのだ。
「ああ//わ、私の、か、身体に、い、痛みが、か、快楽が広がっていくぅ//」
ネーレイスは悶えながら地面を左右へと行き来しているとある事に気付く。
「ふふ、家畜さん達が沢山?」
賢者タイムなのか嫌にはっきりと言葉を話すネーレイス。ネーレイスの周りには埋め尽くす程の牛頭の群れが倒れるネーレイスの方へと視線を下げていた。
「あ、そうだ!ジョン君に靴、下着をプレゼント、し、しましょう//」
牛頭を見定めるようにそう申すネーレイスは彼等の皮を素材に瀬名へとプレゼントを贈ろうと考えていた。牛頭達はその海精の言葉をトリガーに一斉に犯し食そうと手を伸ばしていく。
「ふふ、あら、ふふ、あらまぁ?」
服を千切られ四肢を食されて尚も余裕を崩さないネーレイス。
「ジョン君の記憶で見たドージンシと言う書物には獣陵辱物と言うものが存在しているようですが、私は、ふふ、やっぱり、純愛物が、ふひ、いいえ、逆レ○プ物が、い、一番ですねぇ、そして逆レ○プをしていた筈なのにいつの間にかジョン君が主導権を握っていると考えると、はぁはぁ// 」
ネーレイスは完全に四肢がもげ下着は肌掛けた状態となっていた。そうにも関わらず話し続けるネーレイスに牛頭達は違和感を感じるが事を成す為に百は超えるであろう牛頭の群れは犯す為の準備を開始する。がその準備は無駄に終わった。
「ああ、ああ、陵辱は心地がいい、ふふ、家畜さん達は、痛みと共に溺れて貰い、貰い、貰いマス」
四肢の捥げたネーレイスは水液と化し地へと浸っていく。牛頭達は皆驚愕し周りを見渡すが何処にもいない事に焦りを感じる。
「「ああ、水死体、と言うのは、もっとも鮮度が良く、加工がしやすいのですよぉ」」
狂った時計のように痛みについて延々に語る声が箱庭を包む。すると牛頭達の立つ地からは無数の水色透明のイソギンチャクが出現し一頭一頭の足へと触手が絡まっていく。
「「「「グウウウウウウウアア」」」
牛頭達は痺れ出しその場で直立をする。すると一本一本のイソギンチャクからは大量の海水が流れ出たのだ。箱庭は一分も経たぬうちに海中と化し牛頭の化物達は少しづつ息を絶っていく。ネーレイスはそんな悶え苦しむ異形の物達を海上の上へと立ち頰を染め興奮するが如く傍観するのだった。




