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Episode35 "北西へ"

ヒュラースの顎へと拳を叩きつけキュベレーの立つゴーレムの肩部へと着地する瀬名。


「正しく王道!!これぞヒロインを窮地から助け出した主人公の気持ちかぁ!くぅ〜」


顔に手を当てながら髪をかき上げ余韻に浸る。すると、ほっぺを後ろからつねられる。


「ひたい、ひたいよお、アルセイド!」


瀬名の肩に抱きつく形でついてきたアルセイドはキュベレーのヒロイン扱いにご立腹のようだった。


「アルセイドがセナと一緒っ!だから、私がヒロイン!」ギュ


頰を膨らませながらより一層抱きしめる力を強める。


「じょ、ジョンぅ!!」ガバ


結構離れた位置にいたキュベレーはいつの間にやら瀬名の前へと現れ、顔を胸へと埋めた。


「はあ、落ち着くぇ。神気が回復するぅ」ぐりぐりぺろ


頭を擦りつけてから首元をひと舐めするキュベレー。犬のようでちょっとくすぐったいと思う瀬名だったが背中から溢れでる殺気で眼を覚ます。


「貴方誰?殺すよ?」


どうやら此処を統治する大地母神だとは知らないようだ。


「はぇ?小汚あなぃ手で触れなんしぃ。消されたぁなければぁ、失せるぇ?」


火花を散らしているとゴーレムが突如傾き前方へと倒れていく。


「ちょっ倒れ!?死ぬ!!「大丈夫、アルセイドが守る」「妾ぇ!」


両者は瀬名の体の前後にしがみつき口論を競わせていた。しかも落下の最中、現在進行形で。


「いやいや、二人ともどいてくれぇ!!死ぬって!!」


すると、キュベレーはニヤリと口元を釣り上げアルセイドの姿を見ると眼を細めて笑った。


「行くえ、ジョンぅ「はい?」


視界が一瞬黒くなると地上に立っていた。此処からは先ほどまで立っていた筈のゴーレムの姿が見えどうやら右足を壊されたようだった。既にゴーレムは地へと沈み形を失う。


「ん?」


(でもなんでおれ此処に?....さっきまで?え?)


右手の違和感を見るとキュベレーが手を握り此方を見ていた。


「はぁ、妾の為にぃ、ああ、此処まで来たぇ?」


甘い吐息を吐きながらエロエロヴォイスで話すキュベレーに思わず可愛らしさと息子がおはようをしかけたが、


(おれの目的はヒュラースだ。)


もちろんホモ的な意味では無く純粋に彼の弱点を知っていると言う理由から。


「え〜と、ヒュラ「妾の為にぃ、此処まで来たぇ?」


「あの「妾の」


「....「為にぃ」


「はい」


「ああ、早う彼奴らを倒して永遠に愛ぉ、注ぎ合うぇ」


瞳の奥がハートになっている気がするが、気のせいだろう。


「あれ、アルセイドは?」


背中の違和感が消えた事で疑問に思ったが杞憂だった。


「セナ、メっだよ!アルセイドから離れたら」ギュ


背中にアルセイドの重みが再び戻る。


「はぇ?何故、そちがぁ、いるぇ?」


ハイライトが消え失せなんか蔦のようなものが鋭い刃物の様な形状を取り背中にぶら下がるアルセイドを囲んだ。一本だけではなく無数に。


「.......」


アルセイドはキュベレーを見下す様に視線を向けるだけだった。


「ぐぬぬ」


キュベレーはぷるぷると震え出し握る手にも力が入る。いや、マジで痛いから!!煽り耐性があまり良くないんだからアルセイド止めてぇ!


(ん?キュベレーの瞳の色が桜色から翠色に)


「綺麗......」


言葉が漏れた。


「はぅ//」


蔦がしぼんだ様に地面へと戻り握る手を離し腕へと手を絡めてきた。アルセイドはより抱きしめる力に力を入れる。


(これがハーレムって奴なのか....だが)


瀬名は頰を紅く染め下を俯いてしまった。イケメンとは言え童貞にはハーレムはキツイのだ。そして思うのであったこの二人とこのまま行けば必ず何かしらの危険と不幸が瀬名へと降り注ぐと。


「見つけたよ!!」


ハーレムを謳歌している中、顔に傷を負ったヒュラースが姿を現した。


「ヒュラース」


アルセイドが口を開いたがヒュラースは無視をして話を続ける。


「ぼ、僕の顔にき、傷をつけた....ヘラクレス様に褒めらた僕の顔を!!君が誰だか知らないけど殺す、それも簡単には殺さないよ、四肢を捥いでから少しずつ斬り刻んでやる、勿論ナーイアデスの聖水を使ってね。長く永く痛みを与えながっ」


ヒュラースは台詞を止め自分の異常に気づく。先程までは球体が六ほど浮かんでいた筈なのだが今は二つしかない。


「........使えぬニュンペーどもが、」


契約が切れたのだ。ヒュラースは一つの球体を残し、一つを剣の形へと変え瀬名達へと迫る。


「あの、このままだと突き刺さるのですが!?」


未だに離れようとしない二人に声をかけるが未だに自分を抱きしめ続けている。


「契約が切れてぇ馬鹿程あった魔力がぁ今では半分以下ぇ。」


キュベレーの瞳が翠へと再び変わり蔦がヒュラースを拘束するがもう一つの球体が光の矢へと形状を変え放出される。その矢は拘束を解きヒュラースは解放されると態勢を立て直すしために一歩下がる。


「僕はこんな所で死ぬ訳には行かない!」


再度、ヒュラースは瀬名めがけ飛び出す。剣が瀬名の眼前、目から数センチの距離まで迫る、が動きが寸前で止まった。


(速くて何が起きたのか分からんけど助かった......)


いきなり現れた剣先を見て尋常じゃない程の冷や汗が出ていた。


「......ヒュラース」


アルセイドが肩から手を離しヒュラースの前へと立つ。


「アルセイド?」


瀬名は息を整えアルセイドへと呼びかける。


「殺すね、この男。」


どうやらヒュラースの動きが止まったのはアルセイドによるものだった様だ。


「い、良いのか?」


「なんで?」


「なんでって、仲間、だったんだろ?」


「セナ、殺そうとした。」


にっこりと笑うアルセイドに寒気を感じ何も言う事が出来なかった。


「待ちなさい、アルセイド!」


晴天が照らす大地から夕陽の照らす此方の大地へと一人の女が姿を現す。


「一体どう言うつもりですか?」


此方にも伝わってくる程の殺気に気を失いかけそうになるがキュベレーが前に出てオレに殺気が当たらない様にしてくれる。すると自分の手を掴みキュベレー自身を抱きしめるような形へと持っていく。


「あ、あの「良いぇ」


僕の答えはいいえですよキュベレーさん。


「その男とは契約を切った。」


アルセイドは冷たい口調でナーイアスへ告げる。


「!?何故ですか!私達はヒュラース様の妻、花嫁なのですよ!」


ナーイアスは叫ぶがアルセイドは眉一つ動かさない。


「この男は現実を未来を見ていない。共に入れば我らは滅ぶのみ。そして今も尚、こいつは私欲で動きアルセイド達を使っていた。」


「それは、私達がヒュラース様を愛し「ているのはナーイアス、貴方だけ。」


アルセイドは断言した。


「.......」


ナーイアスは顔面を鈍器で強打された様な痛みが襲う。ぐらっと後ろへとよろめき、なんとか倒れない様に踏みとどまる。


「ナーイアス....アルセイド達がついて来た理由は、貴方が心配だったからなんだよ。」


アルセイドがナーイアスへと近づき眼を合わせる。


「何をっ」


「アルセイド達はあの泉で、みんなで何時までも幸せに暮らせれば良かった。でも、あの男があの泉へと現れてからは貴方は変わった。貴方が如何してもと言うからアルセイド達は貴方を手伝って、あの男を拘束をしたし同属のニンフ達も取り込んだ。それが何度アルセイド達を死に追いやったか分かる?そして巨大過ぎる力はみんなの性格を曲げ、変えてしまった。」


ナーイアスはこれまでに一度として怒りを見せなかったアルセイドに畏怖する。アルセイドには夕陽が照らされ、ナーイアスには晴天の太陽が照らされていた。まるで彼女達を区別する様に。


「そして、今日起こってしまった。オレアード、ランパスの気配は消えた。ドリュアスはかなりの距離を飛ばされて契約が切れた様だけど。家族が欠けたんだ。ナーイアス、終わりにしよ。満足でしょ?」


声は小さいが怒りが痛い程に伝わって来る。


「私は....」


ナーイアスはそこから先を言葉に出来なかった。すると瀬名の背後の崖が崩れ木の階段が出来上がっていく。


「あら、これは?」


先程ゴーレムの膂力により飛ばされた筈のドリュアスが戻って来たのだ。


「なっ!?」


驚いた表情でドリュアスを見るキュベレー。


「立って、ナーイアス」バチン


ナーイアスを立ち上がらせビンタをして倒し、そしてもう一度立ち上がらせビンタをして倒すを繰り返していた。


「今、四人なんだよ。」パチン


「ぐす、うん」


ナーイアスはなきながらビンタを受ける。


「あ、アルセイドさん、これは?」


ドリュアスは登場時の余裕の表情を消しスカートを掴み彼女達の元へと足って行く。


「ナーイアスの躾」


横目でちらりとドリュアスを一瞥すると鋭くナーイアスの方へと視線を戻し躾を再度開始する。


「ぐぐぐ」ガチ


瀬名はアルセイドを怒らせない様にしようと心で誓うと前に立つヒュラースの姿に違和感を感じた。


「うがあああああ!!」


ヒュラースの身体からは芽が沢山生え身体が上下へと振動しているのだ。拘束に争う様にギチギチと身体が軋む音を響かせる。


「あ、あの〜アルセイドさ〜、ん!?」


ヒュラースの剣が根の様に伸び瀬名の肩を貫く。


「ジョン!!」


キュベレーは声を上げると怒りの矛先をヒュラースへと向け手をかざす。


「直ちに消え失せよぉ、下郎ぉ。」


冷たく突き放す様に告げると大地がヒュラースを削りながら土砂の様に襲っていく。


「ヒュラース様!アルセイド!どいて下さい!!」


立ちはだかる様にナーレイスの道を塞ぐ。


「セナを傷つけた、あの男は死すべき。」


「セナ?あそこににいる人間の事ですか!あんな下等な生き物なぞっ」


そう言葉に出したと同時にナーレイスの両手両足が消し飛ぶ。


「これは幻術じゃあないよ、ナーレイス。」


四肢を失ったナーレイスはすぐさま水面を自身の権能を使い癒しの水へと変え身体を回復させてヒュラースの元へと駆け出そうとしたがアルセイドに足をかけられ寛大にこける。


「下等な者、愚かな者が誰か教えてあげる。」


アルセイドの黒き瞳がさらに深まる。ドリュアスはまずいと思い両者の真ん中に立ち仲裁を始める。


「やめて下さいまし!私達は花嫁ですのよ!!「偽りの花嫁で満足、ドリュアス?」何を、」


「分かったらどいて「どきません」私はヒュラースとの契約を切った、貴方も邪魔をするのならアルセイドは本気で殺すよ?」


アルセイドの周りの地面が軋み火柱が幾つも吹き出し紅蓮の世界を作り上げる。


「本気、なのですか?」


ドリュアスは鋭い目つきでアルセイドへと問う。


「そう」


アルセイドがそう言うと荒々しい炎が吹き荒れ炎の壁が三人を囲んだ。


その頃、瀬名達は_


「凄い事になっておりますよぉおおおおおおお!!!!」


瀬名はキュベレーに手を引かれ引っ張られる形で移動しながら戦闘していた。


(ヤバイ、吐きそう、てか吐く。)


葉の化物と成り果てたヒュラースと高速的な戦闘を行うキュベレーに引きずられ何とか強化を流し込み高速戦闘での負担を抑える。


「ヴガアアアアアアア、ヘーラクレレレレレレエエエエエエスス」


先程から木々を大地から成長させ攻撃の連続を行ってくるヒュラースにキュベレーは瀬名の手を掴みながら何とか紙一重に避け大地の権能を使い防いでいた。


「ヘラクレレレレレレエエエエエエスス、ヘラクレレレレレレエエエエエエスス」


ヒュラースはヘラクレスとしか叫ばなくなった。既に姿は人のそれではなくまさに植人と言える姿に成り果てる。


(ヴオエッ..はあ....はあ.....植物版タイ○ント?)


「力が溢れてくるぇ!ジョンと共に駆けるだけで妾はぁ!」


(オレは...口からいろいろな物が...溢れうぇっ)


さっきから独り言が多く出るキュベレーは飛び切りの笑顔を見せながら攻撃を弾いたり避けたりしたりとアクティブな動きを見せていた。


(戦闘できないって、嘘だろ)


「そろそろオレもっげんがぁうえええぇ」


今度はメリーゴーランドが如く二人でスウィングしながらオレたちのいる大地が盛り上がっていく。ヒュラースは獣のように大地をかけ瀬名達の元へと上がっていく。瀬名はゲロを撒き散らしげっそりとする。


「うぇっ...」


(DMCみたいなスタイリッシュアクションしやがって、オレの身体はボロボロだよ......うぷ)


心の中で毒を吐く瀬名。


「そおかえ、楽しいかぇ、妾もじゃ//」ちゅ


唇と唇が触れ合う。ゲロを吐いたのにこの神様は気にしないのか。


(やめろ、吊り橋効果で惚れそうになる......)


未だに回転しながらの戦闘真っ只中なんですよ。しかも一言も楽しいなんて言ってねぇ!キスしながらもヒュラースの攻撃を鞭で流していく。


「むう、むちゅ、うぅ、ぷはぁ!」


数々の大地が柱の様に上がっていきヒュラースを襲い肉体を貫通するが身体に蠢く根が生物の様に蠢きすぐさま再生し回復する。


「ちょ、たんまうあああああああああ!!!!」


今度は地上へとバンジーをするように身を投げ出された。下には此方へと向かってくる葉の化物と成り果てたヒュラース。このまま行けば確実に衝突するだろう。すると瀬名は違和感に気付く。地上には大きな手の影が出来ていたのだ。何事かと思い後ろへと首を回すとキュベレーが叫んだ。


「これでトドメぇ!!!」


ヒュラースへと先程と同じ、いやそれ以上のゴーレムの手が蚊を叩く様に振り落とされる。瀬名は一瞬意識が飛ぶとゴーレムの手より上空へと身を浮かせそして先程まで立っていた場所へと着地する。


「ぐっああっ」


ヒュラースはその岩石で出来た手により地上へと振り落とされたのだ。何とか抜け出そうとも質量と圧力がヒュラースをそうさせない。そしてそのままヒュラースを巻き込みながら地上へと激突した。


「な!?」


地上には大きな手形が出来る。瀬名はキュベレーの方を見て指であれをしたのかと聞くと照れた様にうんと答えてくれた。


(どうしよう、逆らえないタイプの人じゃん......現代にいた頃の方が余裕があるし何とか撒けたけど.......これは......逆らったら死ぬんじゃぁ.....)


快晴が熱く瀬名へと降り注ぐ。そして地上でもヒュラースとの戦闘が終わると同時に炎の壁が晴れる。中からはナーレイスが燃えた状態で姿を現しその場へと倒れる。ドリュアスは唖然と口を開きどうする事も出来なかった。


「あっちも終わったみたいだよ。」


アルセイドはつまらなそうにナーレイスを見下すと回復しつつあるナーレイスは口を動かした。


「それでも、私は、恋を、したの、です」


徐々に皮膚は再生していき涙を流していた。そして立ち上がり足を引きずりながらもヒュラースの元へと向かう。


「止めを刺さないあたり、情はまだある様ですわね。」


ドリュアスは苦笑いをしながら木で作り上げた椅子へと疲れたように座り込む。


(ああ、私達は三人になってしまい、ん?待ってください、ネーレーイスは何処に.....?)


ドリュアスは何かを思い出す様に腕を組んだ。


「ああっ、ヒュラース様、何と痛々しいお姿.....」


ヒュラースの身体は見るも無惨な姿になり、再生しようと根が張るが上手く張らず徐々に大気へと浄化しているのを確認できる。ゴーレムの手は既に砕け灰となり風に飛ばされていた。


「ヒュラース様、口に」


聖水を流そうとするがヒュラースはそれを制止し語り始める。


「僕はね.....君達が憎くて憎くてしょうがなかった.....ヘラクレス様と離され僕は生きる希望を失った.....でもね........君達と入られた時間は........もしかしたら..........だったのかも......ない」


最後の言葉は聞こえなかった。そしてヒュラースの眼から精気が失っていくのを感じたネーレイスは涙を流す。


「ああ、ヘラクレス様.......一緒に過ごした日々は...誠に...楽しゅう.....ござい...ま....」


話はそこで途切れ身体から力が抜けていくのを感じる。ネーレーイスは泣きながら彼の亡骸を強く抱きしめる。ヒュラースの体からはいくつもの芽が花を咲かせ直ぐに枯れていった。


(.......罪悪感が半端無いな......って言ってもこの人の所為で街がこんな目にあったのは確かだし。)


「ドリュアス、此方に来て下さい!」


大きな叫び声が響き渡る。


「何でしょうか?」


姿を現したドリュアスは尋ねる。


「私とヒュラース様を.....貴方の権能で....」


「.......本当に....それで良いのですね?」


「ええ」


ヒュラースの遺体を握りしめたままそう頷くナーレイス。


「そう....ですの。」


悲しそうな表情で二人の姿を見る。




「ジョン、すまぬがぁ少しぃ此処を離れるぇ....アタランテーの姿をぉ確認したいでのぉ.....」


キュベレーは遠い眼をしながら残骸の一部へと目線を向けていた。何処か寂しげにも見えたキュベレーに瀬名は察したのか眼を瞑る。


「何処にいくの、セナ?」


アルセイドが背中に乗ってきた。両腕は両肩に回され後ろから抱きつかれた状態だ。


「まぁたぁ、そなたかぇ。あの男共々消えりんすぅ!」ギュ


「お前が失せろ。」ギュ


二人は瀬名から離れ軽い戦闘が開始される。瀬名は逃げる様にその場を離れた。


(バルトロメウス達、大丈夫だと良いんだけど........)


取り敢えず二人から離れるチャンスと思いプリギュアへと足を動かせる。




ナーイアスとヒュラースの遺体を囲む様に大きな大樹が成長していく。


「私の権能は時の理から外れます。貴方は永遠にその中で眠りにつくでしょう。」


ドリュアスはナーイアスに一言言うとナーイアスは顔が見えなくなる前に感謝の言葉を告げた。


「ありがとうございます、ドリュアス.....ふふふ、貴方の大切な者にも災いがあらん事を、大地母神...」


最後の言葉はドリュアスの先にいるアルセイドと戦闘を繰り広げるキュベレーへと向けて言われた。


「また、貴方は一人で.....何時までも我儘な娘、ですわね。」


ドリュアスは完成された天にも届く大樹へ手で触れそう述べた。




「瓦礫多過ぎて進めねぇ。」


強化は戦闘中に全身にかけていた影響で今はほぼ使えない状態だった。そのため瓦礫の先へ進めないのだ。


「クソ、早くしないとあの二人に拘束って!?」


後ろへと何かに引っ張られる瀬名。そして後ろを確認すると空間が裂かれ黒い渦が瀬名を吸い込もうとしていたのだ。


「いい加減にしてくれよ!何だよ今度はっ!?」


瀬名は近くにある瓦礫へと手を伸ばし何とか吸込まれない様にしていたが、徐々に瓦礫が吸引力に負け動いている事に気づく。


「む、セナの気配が変。」


アルセイドは何かを感じたのかすぐに瀬名の元へとダイレクトテレポートをする。キュベレーは鞭を下ろし瀬名がいた周りを見渡すが見つからないので千里眼を使い探す。


「ふふ、やっと、み、皆さんが、い、いる場所を、み、見つけましたぁ!」


瓦礫を破壊して現れたネーレーイスはふらふらと渦とセナの中心へと現れた。


「やば、もう限界っ、ブチュ「「!?」」


瀬名はネーレーイスへとぶつかりそのまま亀裂の中へと迫っていく。そして何故か瀬名はネーレイスを抱きしめながら口付けをするという王道ラノベアクシデントな状況になった。


「ナニシテルノ?」


渦の中へと完全に入り込む前にアルセイドは瀬名の肩へと掴まり三人は内側へと引きずり込まれていく。そして最後に瀬名が眼にしたのは外へと繋がる箇所からキュベレーが手を伸ばそうとしていたことだが、完全に渦が閉じられたのだ。


「ぶはっ!ごめんっ、てか君誰?」


知らない女の子にキスをしたままだったことを思い出し冷静に聞く瀬名。渦の中は霧の様な物に囲まれ視界がままならなかった。


「あ、あの、えっと、わ、私は「ネーレーイス」.....」


ネーレーイスは顔を真っ赤にしながら名前を言おうとしたが先にアルセイドに言われてしまう。


「ナニシテルノ、ネーレーイス?」


アルセイドの瞳は霧の中で見えない筈なのにどす黒く深淵を吐き出しているような錯覚に見舞われる。


「は、初めてのせ、接吻、と、殿方と、それに、この魂は、ああ、あぁ」


瀬名は気付く、やってしまったと。


「私のお、夫、そう、夫にします!.......ふふふ、何て、極上な、ふふ、魂、そして何よりも、端整な顔立ち、い、いい、ふふふ、貴方は、わ、私の所有物に、な、なる、良いですね?」


(..........)


瀬名は絶句する。そして同時に理解した、この子はアルセイドやキュベレーと同族である。


「セナは、アルセイドの!」


アルセイドは頰を膨らませ瀬名を引っ張るがネーレイスも負けじと瀬名を引っ張る。


「いえ、私のも、物と、な、なりました。アンブロシアを与えるか、精霊にしてしまいましょう、ふふ。」


「......ん、それいい。」


(いや、良くねぇーよ!)


心の中でツッコミを入れる瀬名。そしてキュベレーも以前同じような事を言っていた事を思い出し溜息をつく。


(アンブロシアって確か神の食べ物で人間が食べれば不死に慣れるんだよな........)


そして同時に少し良いかもって思ってしまう瀬名でもあった。


「空間が揺れっ!!?」


先程から常に投げ出される感覚に陥っていだのだが今度は空間全体が揺れ体勢を崩そうとしたところ、何か柔らかい物に当たる感触が瀬名を襲った。


「アンッ//大胆.....です、ね?ふふふ」


どうやらネーレイスの胸元に顔を埋めてしまったようだ。


「ご、ごめん!?て何してんのアルセイド!!」


するとアルセイドが自分をネーレイスの胸元から引き剥がし自分の両手を握る。


「アルセイドの胸も触って」ギュ


そして両手はアルセイドの両果実へと吸い付く様に張り付いた。


「ん、気持ちぃ//」


そんな甘い声を出さないでくれと直ぐに手を離し前を向くと三人は雪地に顔からダイブした。


「雪?......何で....」


顔を上げると先程の霧に包まれた暗い空間ではなく、一面は雪に覆われ所々に剣が刺さった雪国だった。甲冑もいくつか落ちていたが全てが空だった。吹雪は強くこのままシャツ一枚での状態で過ごせばは死んでしまうと感じた。


「此処は......何処だ?」


次話から少しの間、番外編となります。

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