Episode27 "不穏と姉蛇"
「街には未知な物が沢山揃っているな。」
この7日間、バルトロメウス達は休日を過ごすように町を探索していた。もちろん北の地の文献、地理も調べてはいる。ただ一つ引っかかるものは瀬名からの連絡が来ないという事だ。探しようにも見つける事は叶わずアタランテーでさえも場所は知らぬと言う。
瀬名の寝る部屋へと入ったがベッドだけが抜き取られているという不可解な事が起きていた。翌日バルトロメウス達はアタランテーへとキュベレー神との面会を頼むのだがアタランテーでさえ面会が出来ないと言う。
「阿呆らしい」
リディアはそう言うとすぐに単独行動に移った。レシとセレナも瀬名を探すのが阿呆らしくなったのか情報を集めるついでに街を探索するようだった。
それから数日が経ち、現在バルトロメウスは街全体を見渡せる高台へと足を運ばせていた。
「あいつの事だ、無事だろう。ガリッ、うむ、甘いな。」
二つに割れる空と街並みを交互に眺めながら屋台で買った林檎を貪る。
(それにしても、あの宙に浮く大地は何だ?一つだけではない、八、十、いや十二か。)
この街を囲むように宙には十を超える大地が浮かんでいた。そして一つ一つの大地には城や大きな家といった物が建てられており、何者か達が住まうのは確かだろう。
「まぁ、どうでもいい事か、数日が経てば去る場所なのだから。」
その場を去ろうと後ろを向いた瞬間大きな音が街へと響き渡った。
「!?」
辺りを見渡しても何もない、ならばと思い宙に浮かぶ大地を見ると。
「何だアレは!?」
浮かぶ大地の内の一つに建てられる城から大きな木が突き破り空高く伸びていた。バルトロメウスは直ぐさま眼に強化をかけ城の辺りを覗き込むとあの男の姿が映し出された。
「なっ!?ジョン!!?」
覗き込んだ先には瀬名が地上に向け落下している姿だった。
「馬鹿がっ、」
その場で助走をつけ強化を流した足で踏み出し跳躍する。高台から踏み出した事もあり地上からはかなりの距離がある。だがバルトロメウスは止まらない。
「風の精よ、汝我が身に宿り、その身を浮かせよ。」
重量が数倍近く軽くなりほぼゼロに近い状態まで軽減される。
「風よ!!」
詠唱破棄の魔術を身体全体を使い放出し建物群の屋根へと足をつかせる。そして再度足に強化を流し込み跳躍する。バルトロメウスの身体は羽が生えたように軽く突風の如き速さで建物群を駆けていく。
「間に合え、あの馬鹿が!」
その頃、瀬名は落下しながらも考えを張り巡らせていた。
(ここは王道的に拳に全精神力を注ぎ込んで地上にぶつかる瞬間放てばワンチャンあるんじゃないのか?)
「一か八かの勝負」
それ以外に方法が思い付かなかった瀬名は拳へと精神力を注ぎ込もうとするのだが重大な事に気がづいてしまった。
(..........精神力の残量がちょっとしかない)
強いて言うならば睡眠前の精神力と同等の精神力しかないという事だ。
「くっ、もう、間に、合わ」
眼をつぶりせめてもの気休めでと全身に残り全ての精神力を流しこもうとするが。
「ガティギーダァーーーーー!!!!!」フユウウウウウウンンンンンンンッ!!!!
「ぐわっ!?」
地面へとぶつかると思いきやクッションの様に身が空へと押し返された。
「肉体に強化をかけろ!!!」
一週間ぶりに聞くその声は出会いを思い出す。
「ば、バルトロメウス!!」
歓喜のあまり、ちょっと涙が出る。そして残り僅かな精神力を気絶しないギリギリまで使い何とか地面へ着地する。
「し、死ぬところだった.....」
薄い水面が空の景色を反射させる大地へと着地した事もあり自分の顔が反射して見えるが今にも死にそうな顔をしていた。そして流れる汗により薄い水面に波紋が生まれる。
「ジョン、貴様は身投げ希望でもあるのか?」
顔を上げれば久方ぶりの仲間の姿だ。だがそれよりも、
「直ぐに!此処を!出よう!」
すぐさまバルトロメウスに寄り両肩を掴んで訴える。
「落ち着け、どうした?」
バルトロメウスは何時もと同じ様に眉間にシワを寄せる。
「此処にいたら、ヤバい、」
「何がだ?」
「俺が、」
「俺が?」
「此処に.....」
「此処に?」
「あーもう、いちいち繰り返さんで良いわ!!」
「ならばとっとと要点を言え脳足りんめが。」
「脳足りんって.....ああもうツッこむのも面倒くせぇ!俺、此処にいたら監禁されて不死身にされる!」
バルトロメウスは眉間のシワを緩め、またこいつは、見たいな視線で見て来た。
「修行をつけて貰っていたのだろう?ならば良いではないか。」
こいつ、話真面目に聞いてないな?
「一応修行もしたけど、師匠の方も監禁される可能性が.....いや監禁される!!」
「?」
バルトロメウスは瀬名が何を言おうとしているのか理解が出来なかった。
「だから、あーもう、取り敢えず荷物纏めて今直ぐ街を去ろう!!」
「ジョン、すまないが.....あと3日程待ってくれないか?」
こいつ、一週間前にも同じ様な事言ってたよな。
「おい、何であの天宮から巨大木の群れが宙へと続いていると思う?アレはキュベレーと師匠、えっと名前は確かエウリュアレーだったかな?まあ、そこはいいだよ、二人が戦闘をしているんだよ!」
「エウリュアレーだと?」
(英雄ペルセウスに倒されたであろろメデューサの姉妹にして元女神......)
「しかも理由ってのが......」
バルトロメウスはゴクリと唾を飲み込む 。
「オレの所有権について何だよ!」
「.....................は?」
バルトロメウスから素っ頓狂な声が出る。
「ダメだ意味がわかららない。」
頭に手を置き目頭が熱くなる。
「貴様何をした?」
「いやそれが「「どおおおおおおおおんんんんんん!!!!!」」
大きな爆音が空を駆ける。
「一体何が」
「どーせ、師匠とキュベレーさ......ま?」
唖然とするしかなかった。キュベレー様とエウリュアレー様だと思い空を見上げれば6つの天宮が各自に地上へ堕ちようとしていたのだから。
「どうなってんだ?」
(流石にキュベレー様達じゃないよな?)
瀬名は師匠であるエウリュアレーと過ごす7日の間、天宮についての様々な知識を与えられた。
「勇者よ、何故我らがこの宙へ浮かぶ地へ住まうと思う?」
師匠の膝(蛇)の上に座れされた瀬名は立ち上がろうと身体を動かすががっちりと両腕で抱き締められ逃げれなくなっていた。
「えぇ〜とわかんないっス。それよりも此処から「我らが神格を落としたからだ」さいですか」
師匠は台詞を言い切る前に口を挟んできた。
(この人、3日目くらいから自分を愛玩動物の様に扱ってくるようになったんだけど。)
「神の重み、圧ってやつ使ってませんでした?」
「神格を落とすと言うのは何も神の力を全て失うわけではない。劣化する、いや、退化と言った方がいいか。」
すげー核心に迫る話だなぁ。
「退化って言うのは?」
「姿が変えられたり制約を課せられると言う事だ。」
師匠は自虐的な目で自分の頭皮に蠢く蛇達へと触れる。
「まぁ、オレは結構師匠の姿好きですよー、カッコいいし。」
頭の蛇を優しく撫でるとシャーと嬉しく鳴くのが可愛いんだよなぁ。
「そ、そうか//は、初めてだな、こんな姿になってからそんな事を言われたのは//」
オレの頭の匂いを嗅ぎながら照れ隠しで髪に顔を埋めるのやめてください。
「スーハー///うむ///」
(何を持ってこの人はうむ//って言ったんだろう。)
「それじゃあ、天宮ってみんな元神様が住んでる居城って事になりますね。」
師匠が言う事が正しければ何かしらの形で堕落、失墜した神々が住んでいる事になるのだ。
「そおいう事だ、ハム、天宮は、ハムハム、すべてで、12はある、ぺろ」
思ってたよりもかなりあるなぁ。それよりも師匠が甘噛みをしだしたと思ったらつむじを舐め始めた事に驚きを感じる。完全なる逆セクハラだ。
「ちょっ、師匠、やめてくださいよ!!」
「暴れんなよぉ、暴れんなよぉ//」
何時もの口調が崩れる師匠。瀬名は如何する事も出来ずなすがままの状態に眼を瞑るのであった。
「......って話を師匠から聞いたんだけど、あの天宮が堕とされてるって事は.....」
過去に信仰された神々の身に何かが起きた以外に考えられないのだ。
「ジョン、一度プリギュアへと戻るぞ。」
バルトロメウスが堕ちる天宮を見ながらそう言い返す。
「そ、そうだな」
状況的に考えて兵がいるプリギュアへと戻った方が安全性は高いだろう。
「と、その前に飲め」
バルトロメウスは試験管の様な物を渡してきた。中には青い液体が入っていた。
「俺が調合した精神増強剤だ」
瀬名は受け渡された試験管の液体を眺めると蓋を外し口へと流し込んでいく。
ゴクリ「うげ、まずぅ」
苦い薬を水に溶かして飲んでいるみたいだ。
「よし、準備は良いな」
バルトロメウスは団長としてもそうだが仲間としてリディア達が心配なのだろう。いい奴だ。ちなみにオレの精神力は完全回復とは言わないまでもかなりの量が回復した。
「そうだ、バルトロメウス、言い忘れてたけどさっきはありがとう、助かった。」
助けてくれたお礼をまだ言っていなかった事に気付き改めて感謝の言葉を口にする。
「ふっ、遅れるなよ。」
鼻で笑い、足を強化して一足で数十メートル先へと進むバルトロメウス。
「照れやがって、ふっ、遅れるなよ、だって、ふふ」
自分もバルトロメウスへ着いていくため足へと強化を流し駆け始める。
ブンッ チャブンンンン ブンッ チャブンンンン
足が着くたびに水が物凄い勢いで跳ねる。
(はぁ、びしょ濡れだよ、かっこつかねぇなぁ)
ガサッ
「見つけたよ、彼等何だね?」
瀬名達が薄い水面がひかれた大地を駆けている姿を林から眺める青年。
「それにしても、僕を置いて先に行ったかと思えば、」
プリギュアへと行くには薄い湖を歩かなければならない。そして湖へと降りる為には崖を下らなければ行けないのだが、青年は宙を階段を使い歩くように崖を降りていく。
「面白い事をしているね、僕の花嫁さん達は。」
両目を隠す髪型をなびかせ瀬名達が向かってたであろうプリギュアへと歩を始めるのであった。




