Episode19 "城塞都市の守護女神_壱"
東国南方に位置する城塞都市アテーナイにて_
城塞都市とはオリュンポスが一人アテーナが統治し守護をする下界の神殿の役割を果たす依り代だ。都市は東西南北関係なく複数に存在し、この地を穢す事は神に唾する事と同義と言う契約で各国に存在していた。
そして彼女は東国に位置する都市へとオリュンポス山からその身を降臨させた。
「ふざけやがって!操り人形風情が僕の忠告も聞かないで、何が成し遂げて見せますだ!第一、第六の試練だって僕とヘーパイストスがあの巨大な青銅製の鳴子を鍛造してあげたからこそ試練を乗り越えられたんだぞ!」
錯乱したようにテーブルに置いてある物資を床へと叩きつける。果物などの柔らかい物は形を失い置物などは割れ破片が床にぶちまけられる。
「アテーナ様、」
侍者達は心配した顔でアテーナの側へと寄る。
「僕は大丈夫だから.....ふぅ....君達、ペルセウス君に連絡は送ったかい?」
「は、はい!」
「そう、それなら良いんだ。」
気分が落ち着いたのか席へと座り侍者が気を利かせて置いておいてくれた水が入ったグラスへと手を伸ばす。
「僕は庭園に移るけど、彼が来たら僕の所に来るよう言って置いてくれ。」
パチンッと指鳴りを鳴らし庭園へと転移する。先程の城内とは違い花々に囲まれた美しい景色だ。
(僕を怒らせたんだヘーラクレース、メデューサやアラクネーと同じ結末にしてやる。)
頬を膨らませながら足をばたつかせるアテーナはペルセウスが早く来ないものかと庭園の入口へと視線を向けていた。
(妻や友人達は既に齢で息を絶え、今や子孫達が世界の英雄として名を広めている。)
「ペルセウス様、此方となります。」
「あぁ。」
城内をアテーナの侍女に案内されながらアテーナが待つと言う庭園へと案内される。
(何故、アテナ様は転移魔術で私の前に現れない?アテーナ様の神域である各城塞都市ならば彼女の思うがまま移動出来る筈。)
「此方から先へと進めば庭園となります。」
侍女は立ち止まり、此処から先は一人で行くようにと促してくる。
「ありがとう。」
古き英雄は感謝の気持ちを伝え、庭園へと足を踏み出す。花々が咲き誇り、柱やアテーナの銅像などを通りすぎた先には大きな噴水が現れる。
「ペルセウス君、こっちだよ!」
綺麗な装飾がされた噴水に眼を奪われていると右方から女性の声がかかる。
「アテーナ様!」
ペルセウスはアテーナを発見し、そちらへと向かう。アテーナは庭園に置かれた椅子に座りながら紅茶を嗜んでいた。
「来てくれたかい、身体の調子はどうだい?何せ星座から蘇らせたんだ、何処か不調があっても不思議ではないさ。おや、君、少し若返っただろう?昔のかっこ..ゴホン、凛々しい英雄に成り立ての頃の様だ。」
アテーナは心配した顔から顔を紅潮させコロコロと表情を変えていた。
「ありがとうございます。ですが、一つ宜しいでしょうか?」
「ああ、君の頼みならば何でも聞こう!」
でしたらとペルセウスは胸元に手を当てる。
「どうした、ペルセ」
ペルセウスの身体を中心にして一振りの剣が顕現する。剣は宙に浮きペルセウスがその剣の柄を握ると四方三厘に凄まじい風と光を放ちそれを腰に差してある柄へと戻す。
「何だい、それは?」
アテーナは鋭い視線をペルセウスにぶつけ向ける。
「私にも不明ですが、私が蘇える際に魂に深く繋がりを感じそれを引き抜こうとした時、この一振りの剣が顕現しました。」
「見せてくれないか?」
ペルセウスは瞳を一度閉じ再び開く。
「......アテーナ様、申し訳ありません。」
アテーナの殺気が膨らむ。この神力に当てらられば常人は直ちに浄化するだろう、しかしペルセウスは違う。彼は幾多もの冒険を乗り越え冒険譚を残した偉人。そして天空神ゼウスの血を流す半神なのだ。
「ヘーパイストス様にこの鞘を創って貰ったのです。が、その際この剣を握ったヘーパイストス様の左手が身体に向け徐々に浄化していったのです。もし仮に放すのが遅ければ左腕一本では済まなかった。」
殺気を緩和させていくことに安堵するペルセウス。
「僕達オリュンポスの神では触れる事が敵わない....ウラーノス様達が...いやそれはあり得ない、あの方達はクロノス様以外は僕達にも下界にも関わろうとしない、だが....」
(第一、私ですら姿を一度も目にした事がないのだぞ.....何故、神でもない半神に.....)
「まぁいいか、ペルセウス君は今はオリュンポスのみんなが分け与えた神器はないのだろう?なら丁度良かったじゃないか。」
「は、はあ。それで此度、私くしを呼んだ用件とは如何なものなのでしょうか?」
すんなりと受け止められた事に動揺するペルセウス。悩んでも分からない事はしょうがないと割り切るアテーナ。そしてアテーナはにっと笑い口を開いた。
「僕が君を呼んだ理由は簡単だ!僕と旅をしよう!」
一時の静寂に包まれる。
「は?」
ペルセウスは素っ頓狂な声を上げ、ただ唖然とする事しか出来なかった。
「今、何と?」
「旅をしよう!」
「誰とですが?」
「僕と君」
「何時ですか?」
「現在、今からだよ。」
ペルセウスはアテーナが本気である事を感じ冷や汗を流しながらも理由を問う。
「いやいやいやいやいやいや!駄目ですよアテーナ様!使いなら私一人で行いますのでどうかその様なお考えを改めて下さい!」
アテーナの提案に慌てながらも不義を唱える。アテーナは表情をムスっとさせペルセウスの周りをぐるぐるぐると回る様に歩いた。
「僕はオリュンポス山に入るのも嫌なんだ。あいつらは全員頭がいかれている。ヘスティアくらいしかまともな奴がいないんだぜ。そもそもな話しボクの出生があんなヤりチン爺の脳の頭の中から産まれて来た事だって吐き気がする。この身がたまに汚らわしく感じるよ。」
(.....だから何時も東西南北のいずれかの城塞都市にいるんですね。)
「ですがアテーナ様が都からお出になれば城塞都市は如何するのですか。」
「正直〜僕飽きてきたんだよねぇ?それにヘーラクレースにちょっと意地悪したいし」ボソッ
「今、何とおっしゃたのですか?何か聞いてはいけないことが聞こえたのですが。」
ペルセウスが怪しげな眼でアテーナを見る。
「あああああああ、もう!!僕は!君と!二人で!旅がしたいの!!君は僕と旅をするオッケー?」
「オッケーとは如何いう意味で.....それが肯定を意味するのでしたら答えは否です。」
「何故だい!?こんな美少女と二人旅ですよ!三大処女を二大処女神に出来る旅何だよ!!君、本当に玉は付いているのかい?」
(この人は....)
「城塞都市に付いては大丈夫だよ!!僕がいなくてもちゃんと機能する筈だ.....多分」
「駄目ではないですか!!仮に民達が今の台詞を聞けば悲しみにくれるでしょう!!ですから神としての威厳と権威を中心に考えて「あのねペルセウス君、君のそれは民達を堕落させようとしている事に気付かないのかい?」
「....それは?」
「僕達オリュンポスは自由気ままな神々で気まぐれでしか人と言う種を助けない。何故だと思う?僕達が管理を続ければ人と言う種は家畜と同価となるからだ。人は堕落を覚え進歩や努力をしなくなる。時には鞭が必要なのはかつて王だった君にもわかる事だ。」
「で、ですが」
「もっとも何人かの神々はそう思っているようだけどね。僕は僕の育てた国民達をそんな豚共と一緒にしたくないのさ。」
(まぁ嘘だけどねぇ〜僕は君と二人っきりでいちゃいちゃ出来れば良いんだ。君が帰って来るのを待ってたらアンドロメダーとか言うエチオピア人に盗られるしポセイドンは使えないわで、滅茶苦茶だったんだよ!!君が死んだ時、悲しかったし、一人では寂しいと思って妻である彼女もしょうがなく宙にあげてあげたけど今は僕の時代だ!!)
「ああ、アテーナ様がそこまで我らの事を考えなさって頂いたなんて、感謝のあまり涙が...うぅ」
ペルセウスが感動して涙を瞳に溜める。因みにアンドロメダーはペルセウスが偶然通りかかったヘチオピアで海の怪物を倒した事が原因で出会った。
アンドロメダーは自身の美貌を神々にも勝ると言った事が原因で神々の怒りを買い、ポセイドンが海の怪物を海に面する都市エチオピアへと差し向けたのだが、ペルセウスが怪物にメデューサの首を見せた事で石化、そして彼の伝勇に新たな一ページが紡がれ終焉を迎えた訳だ。
(国民?知ったこっちゃない。ついでにヘーラクレースに嫌がらせしたら後は二人で子を産むのも良いな!そうだ、そうしよう!!)
人間より人間臭いピンクな思考を展開するアテーナ。
「分かりました! 未熟者ですが、旅の同伴うけたまわります。」
ペルセウスは手をアテーナへ向け差し出す。
サッ ダシ!!
アテーナは差し出された手を無視しペルセウスへと抱きつく。そして親指をペルセウスの見えない後頭部でグーを作りテヘペロな表情を見せていた。
(ペルセウス君、チョロ可愛いぜ!)
「あ、あのアテーナ様、わ、私達は冒険といっても何処へ行くのですか?」
アテーナに抱きつかれている事もありかなり緊張しているペルセウスはドモリながらもアテーナへと旅先を聞く。アテーナはペルセウスに背を向け噴水の近くへと行くと顔だけをペルセウスへと向け意地が悪そうな顔で答えた。
「北の最果て、ヒュドラがかつて住んでいた巣さ。」




