表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/99

Episode18 "忘却の都市"

北の大地を歩き始めてから早一週間。東国の森とは違い素人の瀬名でも感じられる程にこの森からは神秘を感じられた。


周りには巨大なキノコ群が立ち並び、蛍の輝きの様な物も合わさりまさしく幻想世界へ迷い混んだのではないかと錯覚する程森は美しく瀬名達の視界を埋め尽くしていた。


ちなみ食事は現地調達で睡眠は野宿でスリーピングバッグもどきを使用している。香辛料は幾分かは拝借して来たからしばらくはもつだろう。


「ファンタジーだなぁ。」


圧倒的なファンタジー感を今ようやく味わう事が出来た瀬名は嬉しさと同時に寂しさを感じる。


(戻れないんだろうなぁ)


瀬名は瀬名なりに異世界について考えていたのだが現状どうする事も出来ないのでただ行き当たりばったりで過ごして行こうかと考えていた。そもそも行くあても金もないのでバルトロメウス達への同行はある意味では天啓に等しい状態だ。


「あれは.....」


リディアが何かを見つけたようで驚いた表情を浮かべていた。瀬名も彼女に続き前方を見るのだが何もない。まだまだ巨大なキノコ群や草木が前方の道を囲み僅かな隙間達から光が差し込むだけだ。


「何か見えるのか?」


瀬名がリディアへと声をかけるとセレナが後ろから頭をワシャワシャしてきたのだが顔には先輩づらしたくてうずうずしていることが丸分かりだった。


「此処は修行の成果を試すところだぞ、ししし。」


ニッコリと変な笑い声をあげながらセレナは自分の眼を人指し指でさす。隣に歩くレシもセレナの行動を真似てかあっかんべーをしてきた。正確にはマネではなくバカにしてきただったが。


「あ〜はいはい、眼への強化ねぇ。」


(此奴ら常に強化してるのかな?まぁ、オレと違って精神量が凄いそうだし。)


ふて腐りながらも精神を集中させる。


「おい、ジョン、何をぼけっと突っ立っている?置いて行くぞ。」


先を歩くバルトロメウスが瀬名の停止に気づき声をかける。勿論他の団員はそれを知った上で置いて行こうとしたのだが。瀬名は精神力集中の為に一度動きを止めなければ強化が出来ないのだ。


「お前らと違って強化使うだけでも凄い集中が必要なのオレ。」


(水水水水水水水水水〜眼に少量〜)


ドドスコ節を入れながら少量の精神力を眼へと流して行く。すると少し視力が良くなり周りを見渡すと自分が置いて行かれている事に気づく。


「オレの扱い雑すぎませんかねぇ。」


取り敢えずバルトロメウス達の元へとダッシュをすると彼等の姿が突然消えた。


「は?」


素っ頓狂な声が出る。足の速度を上げると前方に森の抜け道らしき光が見える。


「置いてくとかマジであいつらっ!?」


瀬名は緊急停止をする。少しでも気づくのに遅れたら崖から落ちる所だった。


「あっぶねぇ!!」


瀬名は顔を上げ冷や汗を拭こうとすると目の前に広がる景色に絶句する。


「す、すげぇ」


目の前には異世界の王道景色が広がっていた。此処から数キロ先歩けば都市部らしき場所へたどり着くだろう。


挿絵(By みてみん)


都市までの道のりがどう見てもユクニ湖の様に水面上になっているようで空の景色を投射している。極めつけは周りの上空には巨大な大地が無数に浮遊しており、各浮遊大地には城の様な建築物が建てられていた。


(景色が凄すぎるんだけど、それよりも空が。)


空の色が二色に別れてる事に驚く瀬名。都市部の最上に当たる城部を中心として別れ右は夕立の空で淡いオレンジ色の空と眩しすぎない半球の太陽が照らし出しているのだが左側は晴天の空に白い雲をふかふかと浮いている。


「おーい!!ジョーンー、降りてこーい!!」


声が崖の下から聞こえて来るので顔を覗かせて見ると蟻の様に小さな影が四粒程あった。


(アレってバルトロメウス達か?)


此処からかなりの距離があるのだが、どの様にしてこの絶壁を下れば良いのか苦悩する。


「全身に強化をかけろー!!」


セレナの声が大きく聞こえて来る。


(簡単に言ってくれるなぁ、)


顔をパチンと両手で叩き覚悟を決める。


「よし、やってやるぜ!アメコミヒーロー見たいな着地方法をな!!」


全身に微力の精神力を流していく。コントロールが未だに完成しきっていない瀬名はこの微弱な強化をこまめに五回程連続で行い、そこそこの強度を誇る肉体を得る。


「飛べよぉぉぉおおおおお!」


身体を宙に浮かせ手を広げるながら地上へとその肉体を落下させる。


スウウウウウウウウウ ヴァン!!


その身を何処ぞのヒーロー(鉄男)の着地の様に片膝を地につけ巨大なクレーターとともに水しぶきを宙へと舞上げる。


バコン!


「馬鹿か、貴様は!!そんな大きな音を立てれば此方が敵対者だと疑われるかもしれんだろーが!!」


バルトロメウスが着地によりキメ顏を決めている自分にハードな一撃を頭部に入れる。


「「何事か!!」」


バルトロメウスは額に手を当て、声先へと視線を向けた。


「申し訳ない、ツレの不始末が原因で不穏な騒音を上げてしまった、謝罪する。」


謝罪の先には何人かの人達がリスポーン地点の様に現れる。


「名を申せ、外来者よ!」


矢を携えた黒髪美人が幾人かの中心から姿を現し此方へと疑問と殺意を乗せ問うてくる。


「我らは"西国騎士大隊第八師団"と名乗っている。」


「目的は何か!」


「我らは新西王ヘーラクレースの命により北の最果てを目指している。我らは現在、旅路の途中でありこの地の事もよくわからない。不躾な願いではあるのだが情報を譲歩して貰えないだろうかと訪れたのだが。」


何だかバルトロメウスの顔がほのかに赤い気がするが.....


「貴方......」


リディアがボソッと漏らす。視線を向けると鬼の様な形相でバルトロメウスの方を見ていた。


「ヘーラクレースだと、それは大英雄殿の事か?」


「ああ、そうだ。」


「そうか、ついて来い!」


女が髪をファサっと搔き上げ背を向け此処から見える巨大な都へと足を進める。


「良いのですか?あの様な素性もしれぬ輩を.....」


「構わん、キュベレー様へと急ぎの連絡を送れ!」


自分達も彼等の後を追い歩いていく。


「おい、このままついて行って大丈夫なのか、バルトロメウス?」


何故か嫌な予感しかしないのだがこの男は先程から様子が少し可笑しい。


「貴様は彼女のチャームにかかっていないのか?彼女の眼前だと何もかもをさらけ出したくなる気持ちになる。アレは男にのみかかる呪いの様な物だ、気をつけろ。」


バルトロメウスはその言葉を残すとリディアへと一言告げてから一人でブツブツと呟き出した。


「そういう事.....ジョン、あの女を正面から見ない方が、いえ、なるべく耳を傾けないでちょうだい。」


状況が分かっていなければ彼女の嫉妬の様にも感じる台詞だが、あのバルトロメウスでさえこの有様だ。


「変態は.....変態らしく....私だけを...見て....」


レシが可愛いらしく制服の裾を掴みながらそう言って来たのだが、決して恋愛的な意味でなく後始末が面倒だからだろう。


「後始末.....面倒...」


(普通に言葉に出したよこの鬼畜娘。)


そう言えばセレナがさっきから話に入って来ないなぁと思い周りを見渡すと先程の女の横にいた。


「すげぇな、セレナ」


「セレナ....口調....堅苦しい....けど....アグレッシブ...」


喋り方といいこの子、本当に面白いな、と思う瀬名。


「そう言えば、レシって何歳なの?」


(十六七くらいだろうと予想。幼顏だし。胸は特盛クラスのグラマラスウーマンだけど)


「18......今年.....19....」


(嘘だろ!?オレと同い年!!見えねェ!)


「嘘だろ!?オレと同い年!!見えねェ!」


思った事が口から零れ落ちる。


「変態....失礼.....君.....生まれた....季節は?」


「春だけど.....」


「負けた.........レシとレア.....冬」


何を持って負けと言うのか理解が出来ないが、俺がレッシーより年上である事は確認出来た!!


「ふふ、レッシー殿、私の事は先輩と呼びなさい!」


レシを持ち上げぐるぐると回す。


「変態....キモい....降ろせ....」


顏を紅く染めながら言っても可愛いだけですよ〜。とまぁ置いて行かれたくないのでレシを下ろしてから二人で後を追った。因みリディアはなるべく話題を此方に振られぬようバルトロメウスの右側へと移動していた。


因みにリディアの齢は十七で想像よりも年下だと言われることにややコンプレックスを持っている為、なるべく話題を振られない様に存在感を極限に抑えていた。


「それにしても、まさか現実に貴方のような雄雄しき御婦人にお逢い出来るなど夢にも思わなかったです。」


「はは、そう(それがし)を称賛するな、照れるではないか。」


「いえ、貴方は世の女性の憧れの存在だったのですよ!私も幼き時、英雄譚を聞き実際に貴方の讃えられる姿を眼にし私は貴方の様な憧れの英雄になろうと夢見たものです。」


セレナは先程から黒髪の女性の事を褒めちぎっていた。それに気分を良くしたのか自慢げに自信の英雄譚を語り出したのだが、周りの取り巻き達は羨望の眼差しとまた始まったと呆れる戦士達で別れていた。


「.......という事があったのだが、凄かろう?」


それはもうはつらつとしていた。笑顔が眩しなこの人。


「ええ、さすが逃した獲物は逃さない女狩人_アタランテー殿ですね。」


セレナは眼を輝かせながらそう高らかに告げた。


挿絵(By みてみん)


「イアーソスの子、アタランテー。そう言う事か、」


バルトロメウスは自身に魔術の障壁を張り、チャームなる者を解除、いや切断した。


(この女傑は武勲にも優れ美貌も兼ね備えていると祖父からは聞いてはいたが、猛毒だ。その男をかどわかす魔性の色気、幾人の男達の人生を狂わせた事か。)


「解けたようね。」


リディアがバルトロメウスに声をかける。


「あの女狩人が言っていたキュベレーと言うのは予測だけどキュベレー神の事だわ。此処ら一帯は彼女の神域なのでしょう。」


「それは......だとしたら何故、彼女は獅子の姿ではない?」


「私が知っていると思うのかしら?」


挑発気味に言うリディアにバルトロメウスは鼻を鳴らしながら言う。


「聞いて見たらどうだ?」


「私に殺されろと?」


「いつになく弱気だな、リディア=ヴァンディ。何時もの強気はどうした?」


「彼女の英雄譚は何度も読んだ事がある、それにあの方が.....いえ、私では彼女に勝てないは。」


「そうか」


リディアは歩く地を見て映し出される水面の自身の姿を強く踏み込んだ。


「さて、着いたぞ!此処が忘れられし英獣神達が住まう神域都市プリギュアである!!」


両腕を上げ声を上げるアタランテーの姿に笑いそうになるがこらえる。取り巻き達が拍手をするなんて反則だぞ。


「しかとその偉大なる姿を視界に焼き付けよ!門よ開け!!」


アタランテーは巨大な都市の門を前にそう高らかに宣言した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ