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夢路の果てで  作者: 白桃
序章
4/4

友人Aという存在

 「……吾!慎吾!!」


 図太い野郎の声で目が覚める。霞んだ視界であたりを見渡すと、目の前の席に体格の良い坊主頭が座っていた。


 100人が見たら100人が野球部だと思うようなそいつは自他共に認める熱血サッカー野郎であり、お世辞にも勉強が出来なさそうな面構えのくせに定期テストでは毎回五本の指に入るほどの成績優秀者であるという。


 このギャップの塊のような男は西岡(にしおか)(しゅう)。中学からこの高校に一緒にあがってきた数少ない友人であり、人見知りの俺の高校での友人作りに少なからず協力してくれた恩人でもある。


 「その今日も眠そうな様子を見ると、お前もやっぱ高校生には一日24時間は短すぎると思うよな!せめて126時間は欲しいとこだ!」

 

 人の安眠を邪魔するほどの話題とは到底思えないが、まあいつものことだと思い直して調子を合わせてみる。


 「お前の場合その内の120時間はサッカーと勉強になりそうだな…」


 「おいおい、そんなにあったら世界初のハーバード大卒プロサッカー選手誕生だ馬鹿野郎!」


 修は何がおかしいのか、意味不明に俺を罵りながらあっはっは!と豪快に笑いながら何処かへ去っていった。


 どこへ行くのかと、少し目で追ってみるとクラスの中でもテストの成績の良い優等生のグループに入っていき、今のテストの答えあわせを始めたようだった。

 いかにも優等生といった面々に紛れて、いわゆるゴリマッチョな修がテストの答えが一致するたびにハイタッチを求めるその場面は、なんというかとてもシュールであった。


 古来から出る杭は打たれるというか、他と比べて明らかに才能やら性格やらが抜きん出ている、いわゆる「普通ではない」者は社会から弾かれる話は多々聞くが、「普通ではない」者チーム日本代表に選ばれそうな修が人から疎まれているという噂を聞くことなどは一切ない。

 それは多少暑苦しいながらも周りを和ませることの出来るその生来の性格のなせる技なのだろう。


 結果的に、修は毎年当然のようにクラスの中心的な存在になっていた。


 ここまで人間的に成功しているやつが友達だと、嫌でも色々考えてしまう。そのため、あまり修と関わりたくない時期もあったが、それはすでに昔の話だ。今思えば可愛らしい子供の反抗期のようでもあったと思う。


 再び視線を机の上に向けてまどろんでいると、HR(ホームルーム)をするために学級担任が教室へ入ってきた。


 「えー、これからHRを始めます。今日は特に何もありません、あー、テストが終わったからといって勉強は怠らないように。じゃあ終わりー、号令。」


 と、「腐った魚の目」という表現がこれほどまでに合いそうな人間はほかにいないくらいだるそうな態度の担任と、時間的には約二十秒ほどのHRを終えると、いっせいに教室の中がざわついた。


 部活、バイトへと向かう者やこれからの遊びのプランを練っているクラスメートを尻目に、慎吾は一人で帰宅の徒についた。 


 

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