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夢路の果てで  作者: 白桃
序章
1/4

 ……美しい夢を見た。何が美しいのかと問われると、全てのものが美しかったと答える他ない。


 建造物や出てくる女性、視覚で判断することの出来ない匂いまで美しいと思ってしまった。


 夢だと分かった瞬間、ふと頬を一筋の涙が伝った。もう一度行きたい。だが、きっと日本中を探してもあんな場所はないだろう。


 なんなんだ、この喪失感は。そういえば、最近似たような気持ちになったことがあった。3ヶ月間付き合っていた彼女にフラれた時だ。胸にぽっかり穴が開く、まさにそれだった。


 起きて五分ほど経ち、夢の内容は段々とうろ覚えになってきたが、この喪失感はいつまで経っても消える気配がなかった。


 …二度寝しようか。寝返りをうって壁にかけてある時計に目をやると針は6時50分を指していた。


 ―――まずい。


 7時30分に家を出なくては学校に遅刻してしまう。今の時間は朝食を食べて準備をしてゆったりと学校に行ける時間だが、二度寝するまでの時間はない。


 今日は期末テストの最終日だ。二度寝なんかで遅刻した日には両親や担任から何を言われるか分かったもんじゃない。元々自慢出来るような成績をとったことなんぞないが、だからといってテストをサボるほど落ちぶれてる訳でもない。


 仕方なしに布団を蹴り飛ばし、寝間着のジャージから半袖のYシャツと灰色のズボンに着替えて一階のリビングへと移動する。


 朝食を摂っている親父に軽く挨拶し、自分も席についた。母さんはいつも通り既に朝食を済ませて弁当におかずを詰めている。


 「慎吾、最近彼女とはどうなんだ?」

親父は朝の定番となった質問を今日も口にする。

最近も何も、俺に彼女が出来たと知ってから毎日飽きもせずに訊いてくる。だから、俺も毎日変わらず同じ言葉を返す。

 「別に、いつも通り普通だよ。」

別れたことは、なんとなく言わないことにした。

朝から空気を重たくする必要もないし。親父が別れたことを察するまで黙っておこうと思う。


 それから特に会話もせず、先に席を立った父に「いってらっしゃい」と声をかける。一人になったテーブルで、考えることはやはり今朝の夢のことだった。

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