断章:あなたに贈る、貴方の物語
唐突ですが・・・、
私はこの世界には、二種類の人間がいると思っています。
巻き込まれる人間と巻き込む人間です。
さて、ここに麻井祐介という少年がおります。
彼は、すでに全世界の命運を握る戦いに巻き込まれているのです。
しかし、ここにいる少年は今、何も知りません。
なぜなら、誰もそんなことに巻き込まれているなんて考えもしないからです。
考えてみてください。
突然、『あなたは世界の命運を握っています』なんて言われたらどうでしょうか?
誰だって、そんなことをいう人物は避けたいと思います。
彼だって、そうです。
例え、彼がその原因を作ってしまっていたのだとしても・・・。
彼自身は何も覚えていないのだから。
しかし、彼には戦ってもらわなくてはいけません。
だから、あなたを遣わします。
・・・え?
あぁ、安心してください。
あなたに直接戦えなどとは言いません。
彼に、助言しろとも言いません。
ただ、見守ってくれればいいのです。
見守り、見届ければいいのです。
すでに彼は、戦う術を持っています。
すでに彼は、助言者を得ています。
あと足りないのは見守り、見届ける役目の者です。
はい?
あぁ、私ですか?
ふふふ、私は・・・――ですよ。
聞こえなかった?
そうでしょうね。
聞こえる訳がありませんよ。
私とあなたではまるで違うものなんですから。
限りなく似ているが同一のものではない、といったところでしょうか。
人にしても、同じでしょう?
人種によってそれぞれ違う言語を使用しているでしょう?
今は、私があなたにわかるように話しているだけです。
しかし、私もまたあなたと同じく傍観するという役割を持つものです。
干渉はできません。
してはなりません。
それが、この物語を見るための制約です。
もし干渉をしてしまった場合、何が起ころうと私は何もできません。
何もしません。
それが私ですから。
・・・はい?
私も彼には何もしませんよ?
何もできませんし。
え?じゃあ、何のためにこんな事をするのかって?
いつか分かりますよ。
他ならぬ、あなたならね。
さぁ、行ってください。
彼のもとへ。
始まりの物語の終わりを見届けてください。
あなたなら、きっと変えられるはずです。
そして、思い出してください。
あなただけの、貴方のための呪文を。
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