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混沌の覇王  作者: haroeris
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第6話 迷子

 翌朝、トントンという扉を叩く音で目を覚ます。


「食事ができたけど、運んでいいかい?」


 透は頭を振り目を覚ますと「いいですよ」と返事をした。


 食事は相変わらずスープとパンにサラダだった。

 ただスープの内容がほぼ野菜になっていたことぐらいだ。


 目を覚ますにはちょうどいい。


「ありがとうございます」


「最近の冒険者にしては礼儀が正しいね。いつもなら難癖をつけてくるものなんだが」


「そうなんだ……」


「それに引き換えあんたはいいね。今日出て行くにしてもまた来ておくれね、サービスさせてもらうよ」


「ありがとうございます」


 食事を終えると、ラビリンスメイルとアスカロンを装備し、食器を階下へと持っていく。


「そんなことはしなくてもいいのに」


 苦笑を交えながら女将が答える。


「いえいえ、これぐらいはしないと。それでは出発します。また来るときにはもっと強くなってきますので」


 透は社交辞令にように答えた。


「冒険者は強くなることよりも生きることを大事にしな。それが何よりのお礼だよ。たまに来てくれるとお金に困ることがない上に安心できるからね」


「ええ、またここへは戻ってくると思いますのでよろしくお願いします」


「と、そうだったそうだった。もし私のように巨大な剣を持った人や見たことのない服装の人たら来たら私のことを話しておいてくれませんか?」


「ん? いいよそんなことなら」


「これはその為のお代です」


 そう言って金貨を数枚渡す。


「こんなに受け取れないよ」


「大事なことなんです」


 透は叫ぶように強調する。


「わかったよ、とりあえず預かっておくよ」


 透のその剣幕に女将は金貨を受け取った。


「それじゃ行ってきます」


「あいよ、気をつけてね、最近は街道にガルウルフが出現するみたいだから気をつけてなよ」


「ええ、わかりました」


 一撃で寸断したとは言えない透だった。


 こんどこそ十分に食料を整えてミールを目指して出発する。


 10日目に村らしきものが見えてきた。

 それまでにガルウルフが2回、ジャイアントマンティスと数回遭遇した。

 ガルウルフからは狼の皮、ジャイアントマンティスからはカマキリの目玉というアイテムを手に入れることができた。

 いわゆるドロップアイテムというやつだろう。

 ドロップアイテムを手に入れやすいように倒すときには細心の注意を払ってみたがドロップ率は変わらようだった。

 出るか出ないかは完全に運だった。


 それはともかく透は村を来るときには見た記憶がない。

 馬車で来ていたとしても途中でここに寄り休憩を挟むはずだ。

 それがなかったということは道を間違えたのではないかと透は考えた。

 しかし食料品、特に新鮮な野菜や果物の補充が欲しかったため今日はこの村で休むことにして村へと向かう。


 村は簡素ではあるが柵がめぐり回されており、入り口には門番が立っていた。

門番は透を見かけると声をかけてきた。


「見かけない顔だな。姿を見る限り冒険者か?」


「ええ、そうです」


 ドッグタグを胸から取り出す。

 門番の嫌な視線が胸元に行くのがわかる。


(そういえば女だった……気を付けないと)


 気を取りなおしたのか門番はドッグタグを確認した。


「ランク1か。よくここまでこれたな? ガルウルフはでなかったか?」


「大丈夫です。これでも結構強いんですよ」


「たしかに見かけだけは強そうだからな。それが見かけだけではないということか」


「ええ、もちろん」


「今日は此処で泊まるのだろうが、その後はどこへ行くんだ?」


「それって取り調べですか?」


「いや、単純に好奇心だ。こんな辺鄙なところに来るやつは珍しいからな」


「ロックウッドからミールへ向かうところです」


「ミール? 途中で道を間違えたんじゃないか?」


「やっぱり……来るときにこんな村を見た記憶がないな、と」


「こんな、とはひどいな。こんなところだからこそ開拓をする必要があるのさ」


 門番は苦笑する。


「すみません」


自分の失言に気がついた透は素直に謝る。


「いいって、気にするな。それに一日とはいえガルウルフを倒せる冒険者がいると心強いしな」


「ははは、それは期待してもらっていいですよ」


 透にとってはガルウルフ等余裕だ。

 森の最奥でも問題ない。

 さすがに最奥には森を作らないだろう。あそこには妖精が罠なども仕掛けてあって危険過ぎる場所だ。


「と、まずは宿屋だな。宿屋と言っても村長の家が兼任でやっている感じだがいいか?」


 人が少ないところなので良方がないのだろう。


「ええ、かまいません。野宿から開放されるのが嬉しいです」


 素直な言葉を透は返す。


「ははは、正直だな。いや女性にとっては重要なことか」


「そうですね」


「で、村長の家だがあそこに見えるひときわ大きい家だ。わかるか?」


 門番が指さす方向には他の家より一回り大きな家があった。

 特に立派というわけではなく一回り大きいというだけだった。


「はい、わかります」


「それじゃ、あとでな」


「はい……あとで?」


「あぁ、外から人が来た場合には歓迎会を開くことにしているんだ。まあ目的としてはこの村の宣伝だな」


「ほぉ」


「見ての通りこの村には人が少なくてな。人が増えると開拓がしやすくなるんだ。ロックウッド行きの馬車が立ち寄ってくれればありがたいんだが、まだそこまでも知られていないのが現状なんだ」


「たしかにそうですね。ここに乗合馬車が寄っていれば適当な休憩にいい場所ですからね」


「うんうん」


 門番は首肯する。


「早速、村長の家に向かいます。では後ほど」


 透は門番とわかれると村長の家へと向かう。

 村は10数軒程度しかないのですぐに村長の家に到着する。


「こんにちは」


 扉をたたきつつ透は声をかけた。


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