第6話:爆増する野次馬と「新参」の流入
「……待て。待て待て待て! 一旦止まれお前ら!!」
配信開始からわずか10分。俺はマイクの前で、文字通り頭を抱えていた。
画面右側のコメント欄。そこはもはや「文字の流れる板」ではなかった。
超高速でスクロールされる文字列が残像となり、色彩の奔流となって目に突き刺さる。
【コメント欄】
::新参1:ここが噂の配信?
::新参2:聖女ざまぁ期待!
::新参3:1話読んだ! アルベルト可哀想すぎw
::モブA:日間1位から来ました!
::モブB:缀さんイケメンすぎん?
::野次馬:はよ続き書けよ
::なれ専:設定細かいな。これ誰が考えてるの?
(※秒間数百件のペースでループ)
「……読めねえ!! コメント欄が早すぎて読めねーよ!! お前ら、一斉に喋るな! 聖徳太子でも過呼吸になるわ!!」
少し前まで同時視聴12人だった配信だ。
それが今や、同接(同時視聴者数)は1万人を軽く突破している。
日間総合1位の看板と、SNSでの「拡散工作」が完全に火を吹いた結果だった。
【コメント欄】
:[軍師]:綴、落ち着け。まずは低速モードを入れろ。
:[剣呑]:チッ、野次馬どもが……。俺たちの神聖な作戦会議を汚しやがって。
:[ござる]:「ぬおおお! 拙者の文字が濁流に飲み込まれていくでござる! 綴殿ー! 拙者の声が届いているかー!」
:[親衛隊]:皆様、お静かになさいな! 先生が困っていらっしゃるでしょう!?
「……軍師! ござる! どこだ!? お前らのコメントが見つからねえ!」
俺は必死にマウスを操作し、コメントのスクロールを止める。
だが、止めた瞬間に数百の新しい書き込みが上書きされ、円卓の騎士たちの「鋭い助言」が、新参たちの「初見ですw」という挨拶に埋もれて消えていく。
「……あー、もうダメだ。管理しきれねえ。
いいか、新参ども! 順番待ちしろ! 今は[軍師]たちの指示を仰いで、第3話のプロットを詰めてる最中なんだよ!!」
【コメント欄】
::新参A:軍師? 誰それw
::新参B:なんでリスナーが指示出してんの?
::新参C:綴、お前が考えてるんじゃないのかよw
::モブ読者:え、これリスナー参加型なの? 斬新じゃん、俺も案出していい?
「参加型っていうか……共犯型なんだよ!
お前ら、適当なこと言うな! この小説はな、俺の『怨念』と、こいつら12人の『異常な執着』が混ざり合って出来てんだ!!」
俺は叫びながら、頭の中を整理しようと必死だった。
登録者数は、昨夜の3桁から一気に5000人を超えようとしている。
もはやここは、小さな地下室の作戦会議室じゃない。
数万人の観衆が、今か今かと「残酷なショー」を待ち構えるコロシアムだ。
「……いいか、お前ら。
人が増えたからって、この物語の毒は薄めない。
むしろ、これだけ観客がいるんだ……もっと派手な『地獄』を見せてやるよ。
軍師! 剣呑! 聞こえてるか!?
新参リスナーから『もっと救いが欲しい』なんてヌルい意見が飛んできてる。……叩き潰すぞ。
第3話のメインテーマは、『裏切りの連鎖』だ!!」
【コメント欄】
:[軍師]:……フッ。それでこそ俺が見込んだ書き手だ。
:[剣呑]:救い? そんなもん、最終回の1ページ前まで取っておけ。
:[ござる]:「承知したでござる! 拙者も、新参たちの甘い考えを粉砕する『和の地獄』案を提示いたそう!」
::新参勢:うわ、ここのリスナーの熱量こわ……w
::なれ専読者:でも、このカオスな感じ……嫌いじゃない。
::モブ:綴、書け! 俺たちが拡散してやるから、最高にエグい奴を頼むぞ!!
「……よぉーし、お前ら!!
これだけの人数が共犯者になるってんなら、俺も遠慮しねえ。
キーボードが壊れるまで叩いてやる。
『せいまも』第3話――アルベルトの絶望、そして女王の冷酷な決断……。
会議開始だぁあああ!!」
画面上のコメント欄が、再び爆発的な速度で回転し始める。
新参の困惑、騎士たちの熱狂、そして俺の野心が一つに溶け合い、巨大な渦となっていく。
底辺VTuberの小さな部屋から始まった「悪巧み」は、
今、制御不能の「モンスター」へと成長しようとしていた。
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