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ただ地球も悪いことばかりじゃない。
どこも垢抜けないセンスで田舎っぽいが、メシは美味いしギャンブルも色々ある。
地球の奴らは馬だの犬だのを走らせたり、鶏を闘わせたりしている。見ていて面白いものだった。
船やバイクのレースもあるが、地球だと平面しか走れないので心理的な駆け引きが多いのだろう。
そうやってギャンブルがあるなら金貸しもある。
見た感じ同業者じみた奴が何人かいたし、ここで仕事をするのも悪く無いかも知れないなと思った時、競艇場にいる女のことを思い出した。
あいつは今日もレースをやっているのだろう。なんの仕事をしているのかは知らないが、返せない額でもなさそうな借金の利子だけを毎月払っている。
仲間内では売女だとか金持ちの娘がグレたんだとか噂しているが本当のところは誰も知らない。
担当のおれも知らない。金を借りる理由も聞いた事が無かった。
もし地球にいたとしたら、あいつはどんな目でこの景色を眺めるんだろう。青い空の下であいつの目はどんな風に光るんだろう。
おれの隣で地球のボートレースを眺める姿を想像してみたが、くすぐったくなってやめた。
甘い夢をみたものだ。おれとあいつは単なる金貸しとその客でしかない。お互いに何も知らない。知っているのは名前と──ガタン、と音を立てて缶に入れられたコーヒーが取り出し口に現れた。
そう、知っているのはコーヒーと煙草が好きな事くらいだ。
船を降りてタラップを踏むと、ようやく帰ってきた実感が湧いた。乾燥した空気が懐かしい。
ボスに帰星メッセージを出すとすぐさま折り返しがあった。
「ご苦労。お前の書類は受け取った」
「確認ありがとうございます」
「長旅で疲れているところに悪いが、そのまま事務所に顔を出してくれ」
「承知しました」




