冷たい希望
その日の朝はひんやりとしていました
昨日の寝る前は、蒸し暑い夜でした
ひんやりはわたしの肌にふれて
ほおにもふれました
その冷たさは目を覚ますのにちょうどよく、ハッとした感覚は心をとぎすまします
夏の通勤着も一枚はおれば秋に傾く
駅のながい階段をおり、いつもの乗車口へ歩きだす
時間をずらした構内はひともまばらで
いつもいる鳩の群れさえ見えませんでした
はねがおちている
大きないちまいが
一歩すすむと
また、はねが
こんどはふわふわの小さなはね
たしかこれは天使からのメッセージではなかったでしょうか
雨上がりに虹をみるのとおなじで、願いがかなう前兆
先へ先へと、散らばるはねを追っていくと
『幸運がたくさん舞い込むのかな
このはねの枚すうとおなじ数だけ』
そうよろんだしゅんかん、私の目にとびこんできたのは
呼吸をとめてしまった一羽の鳩のからだでした。




