表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハイスペ転生したのに攻略対象が全員攻略済でオワタ。







アラサー彼いない=年齢の私、子供をかばってトラックにはねられ死亡……オワタ。








「神様ありがとぉぉぉぉ!!!」


神は!私を!見捨てなかった!!


だってここ、『恋する令嬢と七人の王子様』の世界!!

めっちゃ好きな乙女ゲーム!!攻略対象がみんな尊すぎるんだけど!!


鏡を見ると、金髪ゆるふわの完璧美少女。

しかも――ヒロイン、セリーナ・メイスンだし!

ステータス開いたら全パラメータMAX。

教科書開いてもスラスラ頭に入るし、所作も自然と令嬢。と言うか、身体軽っ!肌すべすべ!若さ最高!!

ハイスペ転生とか最高すぎる。


「しかも……このゲーム、ライバルキャラいないストレスフリー仕様だし!」

「みんなごめんなさいねぇぇぇ!?私だけ逆ハーレム学園ライフ満喫させてもらうわ!!」


はぁ、はぁ……テンション上がりすぎて過呼吸になる。

だってリアルで“全員に好かれて困っちゃうヒロイン”できるなんて!


ウキウキで侍女たちに支度を任せ、馬車で学園へ。

門をくぐりながら宣言した。


「よし、初めは一番大好きなアルフレッド様に会いに行こー♡」


出会いイベント、ここが一番の萌えどころなんだよね。



「えっ……」


攻略対象その①、騎士団長アルフレッド。

令嬢と手をつないで歩いている、だと……!?


思わず通りすがりの男子生徒に声を掛ける。


「あの……、あの方は?」


「アルフレッド様の婚約者ですよ」


「!?」


嘘でしょ!?そんなキャラ、ゲームにいなかったんだけど!?


ふらついて壁にもたれると、その生徒が心配そうに声をかけてくれた。


「大丈夫ですか?」


「え、ええ……ありがとう……」


その後ベンチで呼吸を整え、必死に自分をなだめる。

――転生が奇跡なんだから、多少の相違くらいあるわよね。

そう言い聞かせ、次の攻略対象に会いに行った。



攻略対象その②:天才魔導師レオン。

→彼女と手つなぎ登校。


攻略対象その③:幼馴染リオ。

→リア充爆発中。


攻略対象……以下略。


……\(^o^)/


「逆ハーレムどころか恋愛ルート全滅してるし!!」


スチルイベントしたかったのにぃぃ!!


バグってる!?

神様これバグってますよ!?


詰ゲーですけどぉぉぉ!!


こんなのモブとか悪役令嬢転生より救いがないじゃん!?


お金あるから!!

攻略サイト課金で見せてください神様!!


賽銭箱どこよぉぉ!?


……はぁ、はぁ……


よし。


最後の望みをかけ、王子ルートに切り替える。

彼はこのゲームのメインヒーロー。

父王から「学園で最も完璧な令嬢を選べ」と言われてる。


学園一完璧美少女の私を選ばない理由がない。

そう確信して王子に会いに行った――



「私には、幼い頃から決まった婚約者がいるんだ」


……なんでやねん!!


思わずカップを落とし、紅茶が白いクロスに滲んだ。

まさかの全ルート全滅。


「……もしかして、私、ゲームで彼らを振って遊んでたから?」

「取り合いさせてニヤニヤしてたから……?」

いやこれくらいみんなしてるでしょ……?


そう言い聞かせつつも、自分の行いを思い出し、納得と後悔をくりかえす。


神様……私、何かしましたか……?

毎年初詣には行ってたし、実家の仏壇もたまに掃除してた。

なのに、この仕打ちはなに?


憧れのキャラを目の前にしてるのに、相手の目には映らないなんて。


そう思いながらベンチで項垂れていた。


「大丈夫か?」


顔を上げると、クラスメイトのハロルド。

そういえば、登校初日に初めて話したのは彼だっけ。


「よかったらこれを使って」


無意識に涙を流していた私に、彼はハンカチを差し出し、静かに去っていった。


――ちょっと、キュンとした。


……そうよ、ゲームじゃないんだから攻略対象と恋愛が必須じゃない。

こうなったら割り切って、学園生活を全力で楽しもう。

青春を、もう一度味わってやろうじゃないか。



結果。

めっちゃ楽しい。


授業はスラスラ理解できるし。

魔法理論では教授が黒板を書き終える前に答えを出し、錬金術の実習では誰より早く香草を調合した。


異世界の授業って、なんでこんなに面白いんだろう。

拍手が起こるたびテンションが上がる。


十代の身体で笑って、恋バナでキャーキャー言って、胸が弾む。

攻略対象の婚約者たちとも仲良くなって、恋の話で盛り上がる毎日。婚約者視点の攻略対象の話聞くの面白過ぎる。


――そもそも地味なアラサーが、こんな完璧美少女に生まれ変われただけで、

それだけでご褒美だと改めて気づいた。


学園生活の中で、ハロルドとはいつの間にか気が合うようになっていた。

研究発表ではペアを組み、最優秀賞を受賞した。


「セリーナって変わってるよな」

「え?」

「人気者のくせに、俺なんかとつるんでくれるし」

「ハロルドと話すの楽しいから」


そんなやり取りが、妙に心地よかった。



そして卒業の日。


告白イベントがないのは分かっていたから、さっさと帰ろうとした時――


「セリーナ、卒業おめでとう」


振り向くと、ハロルドが立っていた。


「君と過ごす日々が、一番楽しかった」

「俺の“永遠の相棒”になってくれない?」


……え、なにそのくさいセリフ。

こんなシチュエーション想像していなかった。


攻略対象でもない、ゲームの告白シーンと場所もタイミングも違うけど――胸の奥が温かくなった。


「はいっ!」


気づけば笑って答えていた。


推しじゃなくても、愛され人生で十分。

攻略対象じゃない彼が、神様のくれた隠しキャラだったのかもしれない。


――こんなところに、ときめきが、あっただなんて。


私を攻略してくれた彼に微笑み返しながら、

新しい物語の門を、二人でくぐった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブックマークや感想・評価などいただけると励みになります。

◆お知らせ

今後の新作予告や更新情報は、Twitter(X)でお知らせしています。

→ @serena_narou

ぜひフォローしてチェックしていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リア充爆発しろ的感想を他の方に抱かせたであろうはじけっぷり、楽しそうで何よりですわ。
むしろ高位貴族に婚約者いないとか訳アリでしかないからなあ。特に王族とかどんだけ教育に時間かかると思ってんだってなる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ