雨脚
「なんていう雨だよ」
その様子を明智は、保健室で見つめていた。
窓ガラスの向こうは暴風雨の世界。叩きつける雨が滝のように窓ガラスを流れていく。
激しい雨脚と、乱発する雷で、1メートル先も見えない状態。
学園の電源も、先ほどの落雷で全て飛んでいた。
これでは授業するにも支障をきたすだろう。
しかし当の明智には関係ないことだ。現在さぼりの真っ最中だから。
その手の連中はそこそこ多い。この時間だけでも十数人の生徒がここでさぼっている。
さらに言えば、その中の数人は常連だ。藤木というキョドった男と、新開アンディ。それらもここの常連だった。
不意にアンディに携帯着信があった。
「なんだ」
おそらく相手はリサだろう。
リサの腹は、気にしてみれば大きくなってるのが理解できるようになっていた。
このままいけば、学校側にもバレるだろう。
しかし幸いにもこのオーク、そういった生徒にも理解はある。妊娠出産を挟んでの復学も許されるのだ。
そろそろその手続きをしないと、そうアンディがいっていたのを思い出す。
とにかく楽しみだ。父親としてなにを贈ればいいだろう。もちろん大っぴらには出来ないことだが……
「なんだって?」
だがそのアンディの叫びが、明智を現実に引き戻す。
「ふざけんな。お前、なにをしてるか分かってんのか!」
どうやら予測不能な事態に陥ったらしい。
明智を始めとした面々が茫然と視線をくれる。
「どうしたんだよ、アンディ?」
やがて通話を終えたアンディに明智が訊ねた。
「どうしたもこうしたもあるか!」
声を荒げるアンディ。
「リサが勝手に子供を堕した」
最初明智は、なにを言われたのか理解ができなかった。
辺りに落雷が乱発し、ひどい耳鳴りに苛まれる。瞼の奥がちかちかしてる。
「リサの奴!」
アンディは既に動き出していた。保健室のドアを開けて外に飛び出していく。
ハッと我に返る明智。
「おい、どういうことだ!」
慌てて後を追った。
校舎の外は土砂降りの世界だった。
傘もささずにいると、すぐにびしゃびしゃになる。
その中をアンディが突き走る。
そして後を追う明智。
全てが雨脚と落雷で、真っ白に染まっていた。




