猿飛
「くそったれ、同じ人間なのに、なんであんなに高く飛べんだよ」
ぼそっと吐き捨てるシュウ。
いくら闇に生きる忍と言え、同じ人間だ。あそこまで高く飛べる意味が分からない。
「これさえなきゃな」
シュウの視線が捉えるのは、体育館を隔てる蜘蛛の巣のように張り巡らされたロープ。
ゆらゆらと揺れて、シュウの眼前に立ちはだかっている。
「ん?」
それでハッとした。何故ゆらゆらと動いているのか。
シュウは触れていない。触れれば絡めとられるのは明白だから。
「成る程な」
それを察してシュウの表情に笑みが浮かぶ。
すかさず黒い影が襲ってきた。それをさっと避けるシュウ。
「今度こそ逃がすか!」
上空に飛び退く影を追って、ロープに足を掛ける。
それを足場にして、大きく飛んだ。
「えっ?」
声を挙げる黒い影。
その首筋をシュウが掴み取った。
「まんま蜘蛛の巣ってことか」
それを眼前にかざすシュウ。
あの蜘蛛の巣、放射状に延びた縦糸は粘着性があり、獲物を絡めとる機能を含んでいた。
だがそこにつなぐ横糸は別だ。そこに粘着性はない。
まんま蜘蛛の糸と同じ性質を持っていた。
猿飛はそれを利用して、上空に逃れていたという訳だ。
目の前にかざした猿飛、黒い子ザルは呆然とした様子だ。眼を丸くして、わなわなと震えている。
首筋に取り付けた、イチゴの絵柄の首輪が映えていた。
「怖がるな、小動物をいじめる趣味はねーから」
落下しながら、シュウがその首輪を引き千切る。
ストンと、床に着地すると同時に、後方から別の影が襲ってきた。
「食らいついたな」
シュウの瞳が光を帯びる。
「ようやく本体を白日の元にさらしたって訳か!」
ぐっと振り返る。
その手で、別のなにかを掴み取った。




