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おいら、シュウくん大好き

 もちろんその状況を受け入れられない者がいるのは確かだ。


「おい西園寺!」「ヤバいって失神してる!」「明日の新人戦、どうすんだよ?」

 それは生徒会の面々と教師たち。


 その面々としては、西園寺の敗北は納得いかないものだった。


「黒瀬修司、貴様なんてことしてくれたんだ!」

 吠えたのは生徒会副会長今川。


「西園寺は我が校にとって大切な生徒、それを壊すとは、やりすぎにもほどがあろうが!」


 そこにあるは学園としてのプライド、及びよこしまな思いだけ。


 それを聞き入り、シュウは耳の穴をかっぽじる。


「こんな下衆な野郎が、大切なのかよ。他にももっと、大切にしなきゃならん連中はいると思うぜ」


 その視線が捉えるのは、太助、及びそこに居並ぶ生徒たち。


 誰もがそれに呼応して、うんうんと頷いている。


 たかだかひとりの為にしいたげられるのは勘弁だ。学校というのは特定の生徒を持ち上げる場所じゃない。多くの生徒、不良だって落ちこぼれだって、立派な生徒だ。どんな生徒にだって主役は張れる。

 そんな秘めた思いが感じ取れる。



「貴様ら、退学だぞ」

 それを今川の鋭い視線が捉える。


「やりたきゃやれよ。退学に追いやる確たる根拠がありゃな。言っとくがこれは、四角いリングん中の正式な公開スパーリングだろ。部としては了承したし、なにより西園寺が納得した。それのどこが問題ってんだ?」


 確かにシュウの言ってることは事実だ。生徒会だろうと指摘など出来ないだろう。


「くそっ。クズ共め」

 それを痛感し、さすがの今川も反論するのを諦める。


 その場のほとんどは彼ら生徒会の敵。虚しげに踵を返し、その場から歩き始める。


「てめーらの生徒会長にもよろしく言っててくれよ」

 そのシュウの声を背中で聞いて、その場から消えていった。



 こうしてボクシング部室内はガヤガヤした生徒たちの会話だけが響き渡る。


「チッ、あいつらの言ってる通りじゃねーか」

 その様子を見つめ、ボソリと呟くシュウ。


 なんとなくこのオーク学園の力の均衡図は掴みつつあった。


 このオーク学園で起こりつつある様々な出来事。その背後には必ずといっていいほど生徒会執行部の姿が見え隠れしてる。


 全てはそれらの見えざる意思だ。その根本をどうにかしないと、現状は変えられないということ。



「シュウくん!」

 そう感じるシュウの背中に、誰かが張り付いてきた。


「てめー!」


 それは太助だ。喜びのあまりシュウに抱きついたのだ。


「離れろ、この野郎!」


「おいら、シュウくん、大好きだ」


「離れろって言ってんべ!」


 太助は満面の笑みだ。これでは当分離れそうにない。


 それでもシュウは無理に押し離そうとはしない。


 今まで太助は、さんざん地獄のような日々を送ってきたんだ。少しぐらい羽目を外しても仕方ないだろう。


 今日だけは許してやる。


 そんな風に漠然と思っていた。


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