命預けられるパートナー
廃工場内では玉木と葛城の戦いが続いていた。
「くそっ、当たんねーな!」
ムカつき加減に拳を振り回す玉木。
だがそれは空を切る。
「そんな状態で当たる訳ねーだろ」
その拳を覚めたように見つめる葛城。
結果から言って玉木の惨敗状態だった。
最初の頃こそ互角とも思える戦いをしていたが、葛城はタフ過ぎて、どんなに攻撃を受けてもびくともしない。
逆に一撃一撃が大きいい葛城の攻撃で、玉木の体力は限界。
「くそっ、酒さえ飲まなきゃな」
悔し気に言い放つ玉木。
「なに言ってやがんだ。てめーで勝手に俺らのビール飲んだんだろうがよ」
葛城が呆れたように返した。
「ま、確かだな」
ハァハァと膝に腕を預けて項垂れる玉木。
それを見つめる葛城。
「へっ、だったら勝利は俺ってことでいいよな」
雷丸が持っていた缶ビールを受け取ると、プルタブを切って飲みだす。
「ほらよ」
そして一口飲み干すと、口を左腕で拭って、右手でビールを玉木に差し出す。
「サンキューよ」
それを受けとる玉木。ごくごくと半分ほど飲み干す。
「いいツラしてんじゃねーの」
そして葛城の表情をうかがい、残ったビールを渡す。
「なんだって?」
それを受け取り、全部飲み干す葛城。
「あん時のてめーは、捨てられたイヌころみてーだったから」
あの時というのは、山崎の葬儀の時のことだろう。
「そりゃー、尊敬する人だからな」
確かにあの時の葛城は、不幸のどん底にいた。
信頼する先輩を失ったのだ。それは当然の感情といえば当然だろう。
だが同時に理解もしてる。この世に不変なものなどない。世の中は変わる。時代は流れていく。それがこの世の摂理。
そしていずれ歴史を変えるのは自分たちだと。
それを次の世代に次ぐことこそ、自分たちの使命であると。
「正規軍はどうすんだよ?」
「あれは永瀬先輩にくれてやるよ」
「永瀬ね。確か奴なら、それなりの実力はあるだろ」
2年の永瀬晋作、その実力は彼らも理解している。
普通の学校ならてっぺん奪える超硬派であると。
そもそも葛城は、正規軍に名を連ねてはいない。単なる同盟、彼は彼で別派閥だから。
「それよりおめーの方は大丈夫なのか? 変な汚名、着せられてんだろ」
今度は葛城が訊いた。
「ホント勘弁なんだよ。俺は女は好きだぜ、だけどそんな暴力に訴える真似、しねーって」
「ほんとかよ?」
「なんだって、てめーも疑ってんのか?」
「疑ってねーよ、おめーがそんな手を使わんのは承知してるさ」
まるで2人、昔からそうだったようにさばさばと会話に興じる。
条理不条理、今までのもやもやまで吹き飛ぶ爽快感がそこにはあった。
ふーっと天井を見上げる玉木。
「すっかりご馳走になっちまったな」
言って立ち上がる。
「帰んのか?」
その背中に投げかける葛城。
「ああ」
振り向きもせず返す玉木。
「今度飲むときは、多めにビール買っとけよ」
大胆にも言い放つ。
それでムカつき加減に立ち上がろうとする雷丸だが、それを葛城が腕で制する。
「ついでだから、つまみの焼き鳥でも手配しとくさ」
堂々たる葛城の声が響いていた。
その後玉木仁は志士の会を脱退。
以降葛城誠の最強パートナとして君臨することになるのだ。




