バラバラな面々
不穏な空気に包まれる志士の会。
本来はこの地点で、志士の会は有利な状態にあるはずだった。
正規軍は要である3年生を欠いて葛城派閥のみが孤立。
こうなれば東雲派閥だけ敵視すればいいから。
この勢いに乗れば、学園のてっぺんを狙うことは可能。
だがそんな空気を切り裂く存在がいた。
「悪いが俺はこの戦線。下ろさせてもらうぜ」
それは大瀬良拓未。突然の会からの脱退宣言だ。
この日この喫茶店で、志士の会主要メンバーによる定期総会が開かれていた。
「なんだって?」
それを怪訝そうに睨みつける湯田。
「つまんねーんだよ。陰でこそこそしてよ。ちまちましたケンカは、好きじゃねーのさ」
「どういう意味だ?」
「お前ら、全然本気になってねーよな。陰で策ばっかり練るだけで」
大瀬良の鋭い眼光が湯田を捉える。
そして流れる沈黙。誰もがそれぞれの思考を張り巡らせる。
「悪いがこのままじゃ志士の会は終わりだ。俺たちに明日はない。ここでやめさせて貰う」
立ち上がる拓未。
そのまま場を後にする。
「くそったれ!」
暫く後、湯田がテーブルを叩いた。
志士の会は他と同じく、行き止まり状態にあるのは確かだった。
朝倉は大怪我で長期の入院、仲間の数人は窃盗の容疑で家裁送り。
そしてさらに問題なのは……
「おいナンパ師、だいたいてめーがレイプなんかするから」
堪らず罵る。
現状、志士の会に新たな勢力が集まらないのは、その悪い噂があるからだ。
「大瀬良の奴だって、それが嫌で会を抜けたんじゃねーか?」
鳳仙が言った。
「馬鹿、そんな訳ーねーだろ」
堪らず言い放つ玉木。
あの拓未に限って、そんな根も葉もない噂で会を脱退したりしないだろう。
元々拓未はロード系チーム本牧レジェンドの一員。ロード系はロード系で、他のチームとの抗争が激化してる。
学園の覇権争いに関わっている余裕がないのだろう。
もちろん今の自分の立場上、反論するのは控えるが。
「その点に関して言えば、俺もそうは思わない」
言ったのは大野。
「拓未は拓未だ。レジェンドとしての役目もあるだろうし」
流石は志士の会リーダー。拓未の心理をうまく読んでいる。正義に溢れる男だ。
「だけど朝陽?」
「そうだ、どうするんだよ、俺ら?」
不安げに言い放つ湯田と鳳仙。
それを見つめる大野。
「俺たちは俺たち。奴らに堂々と接するだけだ」
確かに大野はリーダーとして適任な男だ。正義感いあふれ、カリスマ性もある。
だがその反面、他人を疑うことを知らない。
「それより湯田、おめーらは大丈夫なんだべな?」
玉木が言った。
それではっと視線をくれる湯田達3人。
「なんのことだよ?」
「大丈夫に決まってるだろ」
「志士の会は最強だからな」
この3人、やはり様子がおかしい。この戦線に本気でないようだ。どこか様子見してる感がある。
もちろんそれに関しては玉木自身もいえること。
内部だけじゃなく、外の様子も見てないと、思わぬところで落とし穴があるから。
「とにかくだ」
大野が言った。
それで場の視線が注がれる。
「俺たちは結束して、この戦線を乗り切っていくだけだ。結束こそが最大の武器。それが無きゃ、乗り切ることは出来ないから」
堂々たる台詞だ。
「もちろん異論があるなら受け入れる。俺たちは単なる共同戦線。俺らの意思にそぐわぬ奴は結構。ちゃんと言ってくれれば、会から離脱しても構わん」
こうして志士の会は一応の結束力を固めた。




